軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

263 筆頭聖女選定会 二次審査結果発表

昨夜はシリル団長と一緒に夕食を食べた。

2人きりの晩餐会は楽しく、美味しい料理に舌鼓を打ったけれど、なぜか途中からカーティス団長が闖入してきた。

そして、よくわからないことを言って、シリル団長を非難し始めた。

一体どういうことかしらと気になったものの、カーティス団長はすぐに私を引っ張っていったため、晩餐会は私が途中退席する形で終わってしまった。

カーティス団長の態度は彼らしからぬ強引なものだったため、退席させられたわけを尋ねたけれど、団長は謝罪の言葉を口にするだけで、理由を説明してはくれなかった。

そのため、もやっとしたままカーティス団長と別れる。

しかしながら、『300年前』と『杭』という単語が耳に残っていたので、この2つがキーワードね、『前世の杭の話』と言えば……と考えながら王城のふかふかベッドに横になったのだけれど、……すぐに眠ってしまったようで、気が付いたら朝だった。

それはそうよね。お腹がいっぱいになって横になったら、誰だって眠るわよねと思いながら朝ご飯を食べていると、アナがやってきて、第二次審査の結果を見にいこうと誘われる。

「昨日の結果がもう発表されたの?」

審査が終わったのは昨日の夕方だったのに、とびっくりしたけれど、アナは呆れたように私を見てきた。

「何を言っているの。むしろギリギリの時間だわ。第三次審査が始まる前に、第二次審査の結果を出さなきゃいけないことになっているのよ。あと少しで第三次審査が始まる時間じゃないの」

「あ、そうなのね」

ということは、事務官たちは一晩中、大変な思いをしたんじゃないかしら。

ご苦労様ねと思いながら、アナとともに城の外に出る。

前回同様、審査結果は王城の庭に張り出されていた。

聖女たちは既に集まっていて、皆でボードを見上げている。

私も同じようにボードを見上げたところで、顔が神妙なものになった。

「……うん?」

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◇筆頭聖女選定会 第二次審査 結果◇

1位 フィーア・ルード 625ポイント

2位 プリシラ・オルコット 311ポイント

3位 アナ 190ポイント

4位 ローズ 187ポイント

5位 ケイティ 174ポイント

6位 メロディ 171ポイント

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「はて、これはどういうことかしら?」

おかしいわね。どうして私が1位のままなのかしら。

というか、2位のプリシラとの差が、明らかに大きくなっているわよね。

一体どうして、こんなことになったのかしら。

審査2日目に作った魔力回復薬は効果の高いものができたけど、あれは自分が飲むものだから、審査対象から外されていた。

それから、デズモンド団長の味覚回復薬を作った時は事務官を呼ばなかったし、3日目、4日目に大量の薬を作った時も事務官を呼ばなかった。

最終日に皆で薬を作った時だけは、ずっと事務官がくっついていたけど、私は秤を使わずに薬を作って、作った通りにレポートを書いて提出したから、高いポイントが付与されることはないはずだ。

一体どんな計算をしたらこんな結果になるのかしら、と顔を強張らせていると、アナに誤解されたようで、とりなすような言葉をかけられた。

「フィーア、思ったほど点数が伸びなかったかもしれないけど、気にすることはないわ! だって、第二次審査では、作製した薬と調合方法を記したレポートの2つを提出したでしょう。フィーアは分量を量らないから、聖女の私から見ても、再現するのが難しい調合方法になっていたわ。多分、あのレポートで減点されたんじゃないかしら」

アナの言葉は見当はずれのものだったため、私はぶんぶんと首を横に振った。

「いえ、アナ、どういうわけか、ちっとも減点されていないわ。私の考えでは、第二次審査で私のポイントはほとんど入らないはずだったのよ。どうしてこんなにポイントが付加されているのか、ちっとも分からないわ」

アナは驚いたように目を見張った。

「点数が高いのは当然よね! フィーアは4種類もの新薬を作ったのよ! しかも、聴力回復薬に至っては、他の聖女たちの3倍の量を作ったわ。だから、もっと点数差が大きく開くべきなんだけど、きっと事務官たちがフィーアのレポートの内容を理解できなかったのね」

「……そうでしょうね」

だから、もっと点数を下げてくれると思っていたのに、何を遠慮したのかしら。

それに、作った薬はどれも新薬だから、事務官は有効性を検証できないと思ったのよね。

そのため、調合方法を記したレポートだけを参考にして点数を付け、私のポイントはすごく低くなると予想していたのに、当てが外れたわ。

がっくりしていると、アナが私を励ましてきた。

「凡人に天才を評価できるはずがないのよ! だから、元気を出して!!」

メロディとケイティも寄ってきて、私を元気付ける言葉をかけてくれる。

「アナの言う通りよ! 誰もが分かるような作り方を示せだなんて、今思えばすごく図々しい指示よね。天才には天才のやり方があるのだから、それを尊重して受け入れるべきじゃないかしら」

「世の中を切り開いていくのは天才なのだから、そのやり方に口を出すものではないわ!」

皆が言っている天才というのは、私のことじゃないわよね。

私は魔法や薬草が好きで、だからこそ、前世でそれらを学ぶことにたくさんの時間を費やし、詳しくなっただけだもの。

いえ、それよりも、私の点数がもっと高くてもよかった、と言われることが問題だわ。

「あの、私はこの点数が低いとは、これっぽっちも思わないわ。むしろ高過ぎるんじゃないかしら」

思ったことを正直に言うと、アナたちは顔を見合わせた。

それから、代表してアナが口を開く。

「ちっともそんなことはないのだけど……フィーアは『奇跡の聖女様』だからね! 他の聖女とは全てが違っていて、ものすごく謙虚なんでしょう」

「奇跡の聖女様?」

悪い予感しかしないわね、と思いながらアナに尋ねると、彼女は訳知り顔で声を潜めた。

「本来なら、審査結果は昨晩には張り出されていたはずよ。それが今朝になったのは、事務官たちが点数を付けられなかったからよ。それはそうよね。これまでこの世になかった薬ばかりが提出されたのよ。どうやって新薬の難易度を測ればいいのか分からないし、そもそも提出された薬が本物なのかも分からなかったでしょうから」

そうでしょうねと思いながら頷くと、アナはにやりと笑った。

「だからね、事務官たちは医師たちと連携して、患者に新薬を与えたみたいなの!」

「えっ! それはまた……思い切ったわね」

提出された薬が人体にどんな影響を与えるのか、事務官たちは分からなかったはずだ。

だから、患者に服薬させるとは思わなかったため、びっくりして目を丸くする。

すると、アナはちっちっと指を振った。

「ほら、薬を作製する際は、必ず事務官が立ち会うことってルールがあったじゃない。あれは確実に聖女が製薬していることを確認するのが主な目的だけど、体に悪い素材を使用していないかというのを確認する狙いもあったのよ」

「そうなのね」

確かに使用したのは水と葉っぱ、木の実や花の蜜で、体に悪いものはないわよね。

だから、それらを混ぜ合わせたものが安全だと判断した事務官は間違っていないわ、と思いながらアナを見つめると、彼女は説明を続ける。

「体に悪い素材は使用していないと確認できた後は、医師と事務官たちが集まって、使用された素材の効能を夜通し確認したらしいわ。ローズ聖女の本の写しも持っていったから、それも使ったみたいね。そして、最終的には、万が一の危険性をきちんと説明したうえで、希望する患者に服薬させたみたい」

「なるほどね」

さすが選定会を担当する事務官たちね。しごくまっとうな手順だわ。

薬の効能を検証されなければ、こんなに高ポイントにならなかったでしょうに、事務官たちったら頑張り過ぎちゃったのね。

がっくりしていると、アナがおかしそうに続ける。

「それで、当然ながら、新薬は全部、驚くほど患者に効いたんですって! だから、真夜中……いえ、明け方かしら、普段は静まり返っている時間帯に、病院は大騒ぎになったらしいわよ。誰もかれもが歓喜して、『奇跡の聖女様のおかげだ!!』と全員で叫んだそうよ」

なるほど。そこから『奇跡の聖女様』という呼び名が付いたのね。

「その話だと、『奇跡の聖女様』というのは、選定会に参加した聖女全員を指すんじゃないかしら」

至極当然の指摘をすると、アナは驚いたように目を丸くした。

「えっ」

あら、いやだ。自覚がなかったのかしら。

なぜかアナは『奇跡の聖女様』が、さも私であるかのように語ったけれど、どう考えても選定会に参加した聖女全員のことよね。

「私たち全員で作った薬を集めて、やっと患者1人分になったのよね。だから、聖女たち全員を合わせて、『奇跡の聖女様』になるのでしょう?」

当然のことを言ったのに、メロディとケイティは感心したように目を輝かせた。

「フィーアったら……本当に謙虚な聖女様だこと!」

「ふふふ、チーム『奇跡の聖女様』に入れてもらえて光栄だわ」

まあ、私の言葉が冗談みたいに扱われているわよ。

そう呆れながら、私は不満に思ったことを言葉にする。

「ところで、第三次審査は今日一日で終わるのよね。そして、その後に3回の審査結果を総合した最終結果が出されるのよね。だったら、慌てて第二次審査の結果を発表しなくてもよかったんじゃないかしら」

時間がない中で審査するのは大変だろうから、第二次審査と第三次審査の結果をまとめて公表してもよかったはずだ。

そうしたら、第三次審査の途中で抜ける私のことは、点数が付かずにうやむやになっただろうに。

事務官たちは頑張り過ぎだわと口をへの字にしていると、メロディが考えるように首を傾げた。

「それは……どうしても第二次審査の結果が必要だったんじゃないかしら。きっと、第二次審査までの順位を、第三次審査で使うのよ」

「何に使うの?」

不思議に思って尋ねると、メロディは肩をすくめた。

「……すぐに分かるわ」

そうなのねと頷きながら、私は気になっていたことを尋ねてみる。

「ところで、魔力回復薬の効き目はどう? 事務官がわざわざ第三次審査の前に魔力回復薬を使用するよう助言していたから、今日はたくさん魔力を使うはずよね」

アナたちは顔を見合わせてにこりと笑った。

「魔力回復薬の効き目はどうかですって? 完璧よ!」

「ええ、中3日空けた時と同じくらい、魔力がみなぎっているわ!」

「私も完全に回復したわ」

「それはよかったわ」

3人の言葉を聞いて笑顔になると、アナが悪戯っぽい表情を浮かべた。

「今回の選定会では、何から何までフィーアにお世話になりっぱなしだわ! そして、そのたびにフィーアのすごさを実感するわ。だから、フィーアは歴代最高得点でぶっちぎり優勝をするのはどうかしら!!」

「え」

アナったら一体何を言い出したのかしら。

いえ、私が選定会の途中で抜けるという話は前もってしているから、私の順位が付かないことを分かったうえでの冗談なのかしら。

判断が付かないでいると、いつの間にか隣にいたプリシラが同意してきた。

「それはいいわね! 次代の聖女たちのやる気を削ぐくらい、絶対に誰も覆せないほどの高ポイントを獲得してほしいものね」

プリシラの発言は思ってもみないものだったため、私は驚いてプリシラに尋ねる。

「プリシラは筆頭聖女になるんじゃなかったの?」

それなのに、どうして私に1位を勧めてきたのかしら。

首を傾げて見ると、プリシラは苦笑しながら答えた。

「筆頭聖女になりたかったけど、……なるつもりだったけど、諦めたわ。私じゃフィーアに敵わないもの」

「…………」

でも、私は選定会の途中で抜けるつもりだから、このままでいけばプリシラが筆頭聖女になるんじゃないかしら。

とはいえ、私が抜けるからプリシラが1位になるというのは、聞いて楽しい話じゃないわよね。

そう考え、話題を変える。

「……私は皆の魔法を見たいと思って、この選定会に参加したの。そして、実際に素晴らしい魔法をたくさん見せてもらったから、もう思い残すことはないわ」

さり気なくフェードアウトしようとしたけれど、聖女たちは力強く要望してきた。

「私はもう少しフィーアの魔法を見たいわ!」

「私もよ!!」

「私だって!!!」

「……そうなのね」

即時退却の作戦は失敗ね。

やっぱり第三次審査の途中までは、参加すべきみたいだわ。

そう考えたところで、「あ、でも」とプリシラが呟いた。

「第三次審査で聖女は別れて行動するんじゃなかったかしら。だから、……フィーアの魔法はもう見られないかもしれないわ」