軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

236 筆頭聖女選定会 二次審査 4

「うーん、筆頭聖女選定会は途中で抜けるつもりだから、第一次審査に続いて第二次審査でも高ポイントを取ったらマズいわよね。でも、いくらポイントがほしくないといっても、選定会の間中、何もしないというわけにはいかないし」

私はすたすたと庭園を歩きながら、一体どうしたものかしらと考えを巡らせた。

選定会に残って聖女たちの活躍を近くで見たいものの、できるだけ目立ちたくないという希望を同時に叶えるには、どうしたらいいのかしら。

「不自然に見えない形で、ポイントにならないことに取り組むのが一番だけど、……アナの話では3人の騎士団長を相手にするのが、一番ポイントにつながらないという話だったわね。でも、あの3人に近寄るのはリスクが大きいし」

3人の騎士団長に近付いたりしたら、それこそ私は飛んで火にいる夏の虫ではないだろうか。

というか、そもそも団長たちは私に気付いているのかしら。

「……よく考えたら、騎士団長ってエリート中のエリートよね。だから、私に気付かないはずはないわよね。ということは、デズモンド団長とクラリッサ団長は私が選定会に参加していることに気付いていて、敢えて目が合わないようにしていたのかしら。一体どうして?」

うーん、と考え込んだところで、ぴんと答えが閃く。

「あっ、分かったわ! きっとシリル団長が手をまわしてくれたのね! 私はシリル団長に頼まれて選定会に参加しているのだもの。あれだけ面倒見がいいシリル団長が、そんな私を放置するはずなかったのだわ」

だから、シリル団長が他の騎士団長たちに、私がなんちゃって聖女として選定会に参加していることを説明してくれたんじゃないかしら。

けれど、もしもここで私が騎士団長たちと知り合いだと分かったら、他の聖女たちからズルをしていると疑われるかもしれない。

だから、団長たちは私のために敢えて知らない振りをしたのじゃないかしら。

「まあ、団長たちは気を遣ってくれたのね。ありがたいことだわ」

騎士団長たちの気遣いが身に染みて、じんとする。

そうだとしたら、私は団長たちの気持ちを無にしてはいけないわね。

つまり、知らない振りをして、団長たちを治療してみるのもいいかもしれない。

へんてこなヒアリングをして、聞き取りを間違ったふりをして、全然違うところを治癒してみるのだ。

「そうしたら、団長たちの気遣いが活きてくるし、団長たちは私がなんちゃって聖女だということを信じるだろうし、ポイントは入らないし、一石三鳥じゃないの」

何ていいことを思い付いたのかしらと嬉しくなったところで、お目当ての場所に到着した。

そのため、私は足を止めると、ぐるりと辺りを見回す。

すると、思ってもみない植物が目に入ったため、びっくりして動きを止めた。

「えっ、どうして王城にこれほど珍しい薬草が生えているの?」

目の前に生えていたのは、300年前でも珍しいと言われた薬草だった。

そのため、私は迷うことなく薬草を摘むと、持っていた袋に入れる。

「まあ、これまで足を延ばしたことがない場所に来たら、とってもいいものが採れちゃったわ。ただ、珍しい薬草だけあって、珍しい症状にしか使用しないのだけど……あっ、ここにも薬草があったわ」

これまで足を踏み入れていない場所だったからか、あちこちに薬草が生えている。

嬉しくなった私は、その後しばらくの間、その場所で薬草を採取していたけれど、思うところがあって顔を上げる。

「……やっぱり薬草を摘むのは楽しいわね。ああ、どうしよう。怖いけど、緑の回復薬の泉にも足を延ばしてみようかしら」

その場所は、以前、カーティス団長が外部から採ってきた薬草を植えていた場所だ。

もしも今回、カーティス団長が『星待の森』から珍しい薬草を採取してきたのだとしたら、きっと同じ場所に植えているはずだ。

「カーティスが薬草を植えるとしたら、それはきっと私のためよね。そうだとしたら、確認だけでもしておかないと失礼よね」

そう自分自身に言い聞かせると、私はお城の東側に向かったのだった。

しかし、途中で、大聖女の薔薇がある一角を通ったため、ついでに魔力を流していこうと立ち止まる。

それから、薔薇に魔力を流した私だったけれど、蕾に交じって、赤く花開いている薔薇があることに気が付いた。

はっとして近寄ってみたけれど、この薔薇は……と、思い出すことがあって顔をしかめる。

実のところ、花びらに付く効果の内容は、『大聖女の薔薇』に魔力を流している時に、私が何を考えているかによって変わってくるのだ。

そして、この薔薇に魔力を流した時には、……『悪い企みをしていたら、見て分かるような仕組みはないものかしら』と考えていた。

「だから、この薔薇は『悪いことを考えたら踊り出す花びら』になっちゃったのよね。つまり、この花びらを浮かべた紅茶を飲ませた相手が嘘をついたら、その場で踊り出してしまうわ。ああ、どうしよう。デズモンド団長の怪我の具合を聞き取ろうとしても、きっと素直に教えてくれないわよね。それはそれで構わないわと思っていたけれど、この花びらを使ったら一発だわ」

そんなズルをしてはいけないと思うものの、どうしてもデズモンド団長に使いたくてうずうずしてしまう。

「デズモンド団長が澄ました顔をしてとぼけた瞬間、自らの意思に反しておかしな踊りを踊り出すのよ。そんなデズモンド団長を見てみたいわね。団長は運動神経がいいけれど、なぜか踊りは下手な気がするわ。ああ、フィーア、こんなお楽しみを逃してしまってもいいものかしら」

いいえ、ダメだわ。この楽しさを逃したら、私はきっと後悔するわ。

そう考えた私は薔薇を摘むと、袋に入れる。

「実際に使うかどうかは置いておいて、念のために摘んでおきましょう。うんうん、この薔薇は意外と応用が利くかもしれないしね」

応用の仕方は分からなかったものの、私は自分にそう言い聞かせると、緑の回復薬の泉に向かったのだった。

そして、到着した場所で、私は顔をしかめた。

「ああー、悪い予感的中だわ!」

数日前まではなかった珍しい薬草がそこここと植わっている。

私はがくりと項垂れると、カーティス団長ったら一体何をやってくれているのかしら、と呆れた気持ちになった。

いえ、別に違反ではないのだろうけど。

そして、せっかくカーティス団長が植えてくれたのだから、ありがたく摘ませてもらうけど。

というか、面白そうな薬草がいっぱいあるわね。

さすがカーティス団長だわ。私のことが分かっているじゃないの。

楽しくなった私は、薬草摘みに熱中してしまったのだけど、手元が見えなくなったことで陽が落ちてしまったことに気付く。

「あ、しまった、真っ暗になっちゃったわ。何てことかしら。薬草を摘んでいたら、第二次審査の一日目が終わってしまったわ。ああ、聖女たちが薬を作製するところを見たかったのに!」

まあ、いいわ。私にはものすごい戦利品があるのだから。

私はにまりとすると、薬草でいっぱいになった袋を大きな木の下に置く。

それから、続きは明日ねと考えながら王城に戻ったのだった。