軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

128 二紋の鳥真似2

カーティスの真意を確認しようと、彼の様子を確認すると、普段通りの表情で頷かれた。

彼が問題ないと答えるのであれば、実際にそうなのだろうと了解の印に頷く。

魔人は人の言葉を解する。

そのため、考えを読み取られないためにも、カーティスも私もこれ以上発言すべきではないと考えたからだ。

私は数歩後ろに下がると、震えている両手を見つめた。

―――私に何ができるかしら、と考えながら。

その間にカーティスは剣を構えると、全く躊躇いのない態度で魔人に向かって行った。

カーティスの両脇には、得物を構えたグリーンとブルーが位置し、同じように歩を進める。

魔人は好戦的な表情で中央に位置するカーティスを見つめると、にやりと口の端を持ち上げた。

同時に、魔人の長い髪の先が、まるで生き物であるかのようにぐんっと持ち上がる。

それから、魔人の髪はいくつもの束に分かれると、突き刺そうとでもするかのように、カーティス目掛けて伸びていった。

―――魔人は、体の一部を武器に変える。

それは髪だったり腕だったりと、魔人によって部位は異なるけれど、いずれにしても実際の剣や斧より強度がある。

そのため、防ごうと武器で受け止めても、通常であれば折れてしまうものだ。

けれど―――カーティスの剣はそれらを全て捌くと、魔人の髪を撥ね返した。

がきん、がきん、と重いものを弾き飛ばす時の重厚な音が響く。

その音を聞いた瞬間―――、カーティスが剣を持って魔人と戦う姿を見た瞬間―――、頭の中がすっと冷えたような感覚に襲われた。

私は一体何をしているのかしら。

喉元に剣を突き付けられたような、ひやりとした感覚とともにそう思う。

騎士に助力することなく、戦場の真ん中で突っ立っているなんて、……それでも私は聖女なのかしら。

私が立ちすくんでいる間に、カーティスは怪我を負うかもしれない。

その怪我が原因で魔人に恐怖を覚え、足が竦み始めるかもしれない。

騎士にそのような経験をさせることなど、聖女としてあってはならないことだというのに。

私はぐっと唇を噛み締めると、魔人と渡り合っているカーティスを見やった。

彼が魔人の髪を撥ね返したことからも分かる―――カーティスは自分自身で身体強化の術をかけているのだ。

あれほど立派な騎士に対し、私は聖女として助力をしないつもりかしら。

心の中で自分自身を叱責すると、私は真っすぐに「二紋の鳥真似」を見つめた。

背が低い女性型の、人間に似た表情を浮かべている魔人の姿を。

……ほら、「魔王の右腕」とは全く別の魔人だわ。

あの魔人はもっと大きかったし、その顔に感情が浮かぶことはなかったのだから。

そう考えた瞬間、ぴたりと体の震えが収まった。

視界がさあっと開けてくるとともに、体中に研ぎ澄まされたような感覚が戻ってくる。

そして、同じタイミングで、ふっと空気を吐き出すようなかすかな音が真後ろで聞こえた。

その音がザビリアの吐息だと理解した私は、ほわりと心が温かくなる。

「……心配してくれてありがとう、ザビリア。落ち着いたわ」

振り返ることなく、前をみつめたまま小声でお礼を言う。

私とつながっていることで得る能力なのか、ザビリアは私の混乱状態を把握したのだろう。

そして、私を守護するため、すぐ後ろに位置してくれていたのだ。

―――本当に素敵な仲間たちだ。

カーティスは私に負担をかけまいと、私の手を煩わせるまでもないと言い置いて、躊躇することなく1人で魔人に向かって行くし、グリーンとブルーは相手の力量が不明にもかかわらず、カーティスを補助しようと動く。

そして、ザビリアは私の気持ちを尊重して自由にさせながらも、黙って守護してくれているのだ。

私はふーっと、ゆっくりと息を吐き出した。

落ち着いてくると、自分がいかに動揺していて普段通りの行動ができていなかったかが分かる。

カーティスを目にした瞬間、敵との距離を測ることなく慌てて近付いていくなんて、その最たるものだ。

「大丈夫だよ、フィーア。何かあっても僕がいるし、主を守るのが僕の役目だからね。そして、もしも僕の出番がなかったとしたら、フィーアは僕の膨大な魔力を使い放題だよ」

「ありがとう、ザビリア」

……素敵な竜だわ。

自らの手で魔人を封じたいというカーティスの気持ちを尊重して、動くことなく様子を見ようとしてくれているのだ。

彼らの誠実さに、私は正しく応えないといけないわ。

……さあ、聖女の役割は?

私は真っすぐ魔人を見つめると、すっと片手を上げた。