軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

126 霊峰黒嶽14

「魔人といっても大した魔力はなさそうだね。紋なしかな?」

ザビリアは肩を竦めると、一転してリラックスした様子で体を伸ばした。

「あの3人なら、紋なしくらい何とかなるでしょ」

けれど、私はとてもリラックスするどころではなく、体を硬直させたまま腕の中のザビリアを見下ろした。

「ザ、ザビリア、だって魔人はこの300年間、1度も姿を見せないって……」

「うん、そうだね。物凄い偶然だよね。3人のうちの1人は、信じられないほど運が悪いんじゃないかな」

「や、そう、でも……」

あわあわと慌てふためく私の腕の中でゆったりと横になっていたザビリアだったけれど、不意にぴくりと耳を動かした。

「あれ?」

それから、寝そべっていた体を起こすと首を上げ、探るような様子で遠くを、……目では見えないほどの遠くを探っていたかと思うと、突然、自分の体にぴしりと尻尾を打ち付けた。

してやられた、とでもいうかのように小さくため息をついたザビリアは、感心した様子で言葉を続けた。

「凄いな、魔力量をコントロールしているなんて。訂正するよ、フィーア。相手は紋持ちのようだ。ふふ、これは相当だね」

魔物の本能なのか、その強さを感じ取ったザビリアが楽しそうに笑う。

けれど、私には状況を楽しむ余裕なんてなかった。

カーティス! グリーン! ブルー!

魔人に対峙しているであろう3人が心配で、瞬時にして心臓が早鐘を打つ。

ああ、どうしてよりにもよってあの3人は、300年間姿を現さなかった魔人と出遭うのかしら! しかも、紋持ちですって!?

ザビリアの言う通り、物凄く運が悪い人物が、1人は混じっているはずよ!

胸元をぎゅっと押さえてそう考えたけれど、でも、と300年前を思い出す。

そうだわ、カーティスは前世の護衛騎士時代、紋持ちの魔人と対峙したことがあるわ。

だから、魔人の強さも立ちまわり方も分かっていて、自分がどう対応すべきかを理解しているはずよ。

少しでも安心できる要素を探し出し、希望的観測を抱こうとしたけれど、そう簡単な話でないことは分かっていた。

紋持ちの魔人が相手であれば、一手間違えただけで取り返しのつかないことになるからだ。

だから、あの3人は一手も間違えてはいけないのだけれど、3人のうち2人は魔人と対峙したこと自体が初めてだ。

分が悪すぎる……

私は唇を噛み締めると、縋るようにザビリアを見つめた。

「ザビリア、……3人の元に、案内して」

魔人への恐怖で聞き取りにくいほど声がかすれたけれど、ザビリアには伝わったようだった。

けれど、私の顔色の悪さを見てとったザビリアは、諭すかのような声を出す。

「フィーア、あの3人ならば自力で上手く逃げ出すんじゃないかな。もしかしたら、腕の1本や2本は失うかもしれないけれど、命を落とすことはないだろう。だから、フィーアはここで3人を待つのが得策だと思うけど?」

そして、回復魔法で3人を治してやるといいよ、とザビリアは続けた。

ザビリアにとって、最優先するべきは私の安全だ。

私以外の者を気に掛けたとしても、私の安全と秤にかけた瞬間、優先順位が目に見えて下がる。

その上、私が魔人に対して恐怖を感じていて、普段通りの動作ができないことを理解しているため、ますます魔人に近寄らせたくないことは理解出来た。

けれど、魔人と対峙している3人を放置する、という選択肢を取れるわけがない。

「ザビリア、私は行くわ!」

「うん、分かっていた」

ザビリアは諦めた様子で 間髪(かんはつ) を入れずに頷くと、空を見上げた。

それから、一瞬にしてぐんと大きくなり、見上げるほどの元の大きさに戻る。

見惚れるほどに大きく美しい黒竜は身をかがめると、ばさりと翼を広げた。

「乗って、フィーア。あなたの気持ちを尊重して、できるだけ急ぐよ。空間を切り裂いて移動するから、落ちないように掴まっていてね」