軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

11 合格発表

10日後、騎士団入団試験の結果が発表された。

おそるおそる合格板を覗き込み、自分の番号を見つけた時は、心の底から安堵のため息がもれた。

試験の翌日になって、三次試験は、勝敗ではなく戦い方を見て判定するって言っていたなぁと遅まきながら思い出したのだ。

私の戦い方は、見方によっては卑怯だと捉えられ、騎士道から外れていると不合格になるのではと心配していたのだ。

前世で実戦を多く経験した身としては、生き残ることが全てで、勝ち方を考えたこともなかったけど、今後は少し考慮しようと心に誓った。

そもそも、自分で剣や魔石に魔法を付与したので、剣の力も自分の力のように考えてしまっていたが、冷静に考えたら、三次試験は剣の効能だけで勝ち、私の腕は全く関係なかったような……

ははは、と乾いた笑いが口から出るのに任せ、団分け表の前で立ち止まる。

合格発表とともに、配属先も発表されたのだが、いかんせん、騎士希望者というのは皆背が高くて、立派な遮蔽物となっている。肝心の発表内容が全く見えない。

仕方がないので、人が少なくなるまで待っていようと、脇に避けると、声を掛けられた。

「こんにちは」

振り返ると、騎士団試験で同じF組だった銀のイケメンがいた。

「団分け表を見に来たってことは、君も合格したってことでよいのかな?」

そう言って、にっこりと微笑まれ、右手を差し出された。

うわ、なんかいちいちキラキラしていて、王子みたいだな。

「自己紹介をしてもいいかな。ワイナー侯爵家嫡男のファビアン、17歳だ」

「……は?」

……こ、侯爵家って言った?

この国に10人くらいしかいない上位貴族のことだよね?

しかも、嫡男って言ったよ。え、次期侯爵ってこと??

「……え? 侯爵って都市伝説じゃないの? ホントに存在するんだっけ??」

前世では王女だったが、城に引きこもるか魔物退治に出かけていたかのどちらかだったので、あまり貴族には会ったことがなかったし、今世では、身分的に開きがありすぎて出会う機会もない。

びっくりして思わず口に出した言葉に、彼は思わずといったように噴き出した。

「実際に侯爵なのは父だけど、おばけでも魔物の類でもないと保証するよ」

「え、あ、いや、そういうつもりではなくて。あの、ルード騎士家次女のフィーア、15歳です」

「うん、Fから始まる女性の合格者は一人だけだったから、君がフィーアかなって思っていた。フィーアって呼んでいいかな。私のことは、ファブと呼んでくれると嬉しい」

「へ?あの……」

「フィーアにはお礼を言いたくて、探していたんだ。三次試験では、剣を拾ってくれてありがとう。実は、試験の時に腕を痛めていたんだが、君に渡された剣を握ったら嘘のように痛みが引いたんだ」

「は……」

ファビアンは、硬直していた私の右手をゆっくりと両手で包み込むと、まじめな顔で覗き込んできた。

……うん、私が回復魔法をかけたことには気づいてないみたいね?

それは、そうよね。聖女って、そんなに簡単に出会える存在じゃないし。そもそも、騎士団になんているわけがないし。偶然、痛みが引いたって思っているのよね……?

私は、握られた彼の右腕を見つめ……驚いた。

ええ?!折れていた腕が、10日間で完全に治っている!

「あの……、ケガをしているって言っていたけど、もう、治ったのね?」

「うん、新人が腕を折ったまま入団なんて格好がつかないからね。じゃぶじゃぶと回復薬を飲んで、激痛にのたうち回り、最後の仕上げで聖女様に回復魔法をかけてもらったんだ」

騎士団以外の人間が聖女の力を借りるのは、大変だと聞いたことがある。

やっぱり侯爵家は力があるんだなーと思いながら、そもそも何で怪我をしたんだろうと気になった。

表情から私の疑問を読み取ったようで、ファビアンは苦笑しながら教えてくれた。

「うちの飼い猫が4階のベランダから木に飛び移って降りられなくなってね。助けようと木に登って猫を捕まえたまではいいけど、バランスを崩して木から落ちてしまって、腕を折ったというわけだ」

「はぁ……」

完璧系のキラキラ王子かと思ったら、結構間抜けだな……

「それが、騎士養成学校卒業枠の入団試験日の当日でね。さすがにその日の受験はあきらめて、一般枠で受験し直したってわけ。その時は、不運だなーと思ったけど、結果としてフィーアと会えたから幸運だったんだね」

「ひぃ……」

やばいやばい。彼は、貴族に多くいるという、女たらしだわ。

顔を引きつらせて、少しずつ後ずさりし出した私の腕をがしっとにぎると、ファビアンは笑顔で爆弾を落とした。

「フィーア、君の配属先は第一騎士団だったよ。私も同じだ」

「………………………は?」

第一騎士団??

そんなわけ、ないでしょう。

騎士団は全部で20あるけど、第一騎士団はスーパーエリート集団で、間違っても新人が配属されるような部署ではないのだ。

「王族警護の第一騎士団と王城警備の第二騎士団は、通常、10年以上務めた騎士しか配属されないらしいね。新人が配属されるなんて、記録に残っている限り初めてらしいよ。今回も私たち2人だけみたいだし」

ニッコリと笑顔で教えてくれるファビアンに固まる私。

「魔導士が配置される第三魔道騎士団と魔物使いが配置される第四魔物騎士団は特殊部隊だから例外として、王都警備の第五騎士団、魔物討伐の第六から第十騎士団、国境警備の第十一から第二十騎士団全てに私たち以外の新人が配置されたらしいよ」

「………」

もはや、相槌を打つ余裕もなくなってしまい、ぐるぐると頭の中で同じことを考える。

王族っていうことは、きっと、前世で私を見殺しにした3人の兄さんのいずれかの血筋だよね……

うああああ、それを、全力で守らないといけないのか……

できるかな。嫌になって見殺しとかしないかな。

「……フィーア?」

「いや、ええと、王族ってどなたがいらっしゃったかなぁと考えていて……」

ごまかすため適当なことを言った私に、ファビアンは丁寧に教えてくれた。

「王族は、現在、お2人しかいらっしゃらない。国王陛下と王弟殿下だ。これは陛下自らが公言されていることだから話すけど、国王陛下は女性を愛することができないらしい。だから、次の世継ぎは王弟殿下だと公言されておられる」

「ふ、ふえぇ……」

思ってもみない話が飛び出し、私は目を白黒させた。

「それで、知っているとは思うけど、王弟殿下は、20の騎士団を纏める騎士総長でいらっしゃる」

「総長!!」

「……知らなかったみたいだね」

いや、もちろん。全団の団長を一人で半殺しにしたとか、生ける伝説みたいになっている総長の噂はいっぱい聞いていたけど、王族とは知らなかった。

「生まれてこのかた15年、田舎の領地から一歩も出歩かなかったので、いつの間にか、立派な情報弱者になっていたのね……」

しょんぼりとつぶやいた私を見て、ファビアンは困ったように小さく首をかしげると、情報を追加した。

「明日の騎士入団式でご挨拶をされるはずだから、じっくりお目にかかるといいよ。百聞は一見に如かずの顕著な例だ。……さ、騎士団の制服をもらいに行こう。襟章が所属によって異なるから、間違えないようにしないと。そして、今日は早めに寝て、明日に備えた方がいい」

ずるずるとファビアンに引きずられるように制服配布所まで連れていかれ、所属予定の団を口にしながら、自分では配属先の団分け表を確認していないことに気が付いた。

……あ、あれ?私、本当に第一騎士団でいいのよね?

ファビアンが見間違えた可能性がものすごく高い気がしてきたんだけど。

ふあぁぁぁぁぁ。配属先に顔を出して、所属が違うと追い返されるなんて嫌なんだけど!