軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

81 慰問式5

何と言っても諦めないカーティス団長を前に、私は困り果ててしまった。

そのため、論点をずらすことにする。

「でもね、現実問題として、あなたは騎士団長だからこの地を離れられないでしょう? そうして、私は一介の騎士だから、あなたに仕えられるのもおかしな話でしょう? あなたの推測通り、私は聖女であることを隠していて、……だから目立ったりすると注目されて、私が聖女であることがバレるかもしれないわ。それは、私が最も望まないことなの」

「………………………………………………………………」

私の言葉を聞いたカーティス団長は、苦悩の表情で黙り込んだ。

数十秒ほどそのまま微動だにしなかったけれど、くっと奥歯を噛みしめると同時に視線を合わせてきた。

「でしたら、……私は第一騎士団所属になります。団員でも、副団長でも、団長でも、何でもいい。あなた様の側にいられるのであれば」

「へ? い、いや、だから、あなたは既に第十三騎士団長でしょう! その地位を捨てるだけで、注目を集めることになるって言っているのよ!」

物わかりの悪い騎士団長に思わず荒げた声を上げると、カーティス団長は説得するかのように語り掛けてきた。

「必ずしもそうとは限りません。特に、王族警護の第一騎士団は特別です。国王陛下付きになれば覚えがめでたくなり、出世につながるかもしれないと、他団の役付きになるよりも第一騎士団所属であることを希望する者は多いと聞きます。何せ国王制というのは、国王陛下のご一存で全てが決定されるものですから」

「ええぇ?」

私は無理があるわよという気持ちを込めて、声を上げた。

出世レースとか、そういう話題に私は詳しくはないけれど、きっとカーティス団長はその方面にぎらぎらしてはいなかったと思う。

それが突然、宗旨替えをして、出世をしたいから第一騎士団所属になる?

というか、騎士団長から一介の団員になるとしたら、第一騎士団への所属であっても、やっぱりそれは降格だと思うけど。

私はむむうと唸ってみたのだけれど、どこか楽天的なカーティス団長は突然にこにこと笑い出すと、全てが解決したかのような表情をした。

「では、フィー様。私が皆の違和感なく第一騎士団に所属することができましたら、あなた様にお仕えすることをお許しいただける、ということでよろしいですね?」

「へ? い、いや、私は一介の騎士だから、仕えること自体がおかしなことで……」

慌てて言い募るけれど、カーティス団長はもうあまり、私の話を聞いている風には見えなかった。

……駄目だわ、これは。

悪い感じで、カーティス団長とカノープスが混じっている。

優し気で人の話を聞く、けれど不思議と自分の意見をするすると通してしまうカーティス団長と、生真面目で自分の信念を曲げようとしないカノープスが混じってしまっているわよ!

私ははぁっと大きなため息をつくと、ちらりと横目でカーティス団長を見つめた。

「……カーティス団長の夢は何なのかしら? やりたいことは? カノープスがカーティス団長を塗り替えてしまったということは、ないわよね?」

「カーティスであることは私の基礎ですから、もちろん残っておりますよ。ただ、あなた様を目の前にすると、どうしてもカノープスの部分が強く出るようでして。……カーティスである私はこの地の民が好きで、彼らと騎士が仲良くなることを望んでいました。今思えば、この地の民を好きなのも、この地の民から慕われていたのも、私の前世が離島の民だったからでしょうね」

言いながら静かに微笑んだカーティス団長は、カノープスであることを思い出す前の微笑みと同じに見えた。

その微笑みを見て、私はやっと安心できた。

―――ああ、よかった。カーティス団長はちゃんとここにいるのね。

カーティス団長もカノープスもここにいる。そう思うと、他のことはもうどうでもいい気持ちになってくる。

「了解よ。あなたがどうやって第一騎士団に戻ってくるつもりなのかは分からないけれど、その時はよろしくお願いするわね」

私はにこりと笑って片手を差し出した。

カーティス団長は一瞬、信じられないものを見る目つきで差し出された私の右手を見つめたけれど、すぐに両手で私の手を包んできた。

「―――今度こそ、誰からも、何からも、この世の全てから、あなた様をお守りいたします」

そう誓うように口にしたカーティス団長はとても真剣だった。

だから、冗談で返そうと思っていたにもかかわらず、私はただ「はい」としか答えることができなかった。