軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第993話 夫人たち

父さまに慌てて水色の鳥を飛ばした。

アダムが教室に帰ってくる。

「お疲れさま」

労うとトホホという顔をする。

「? 君こそ疲れた顔をしているね。お茶会断ったんだろう?」

アダムにしてはお行儀悪くどかっと椅子に座る。

「それがさー、アダムが行ったあと、ジャクリーヌ・トリエ嬢に生徒会に入り浸るなと注意をされ、その時、第三王子殿下が庇ってくれたんだけど、爆弾発言をかましてきたのよ」

「バクダンハツゲン?」

「そう。わたしが姉になるって」

アダムが固まる。

「それって……」

「エリンに婚約を申し込んだそうよ。父さまから聞いてないから正式に話が通ってないんだと思うんだけど。けっこうな人が聞いてたわ。そんな噂が広まったら、エリンの婚姻が難しくなる」

「陛下は許してないはずだけど、第四夫人やってくれたなー」

陛下には6人のお妃さまがいらっしゃる。

王妃は廃妃となった。お子さまである第一王子アンドレさまもお亡くなりに。

わたしはお会いしたことはない。

第二夫人はリリアスさま。第二王子(16歳)であるロサことブレド・ロサ・ミューア・トセ・ユオブリアさまのお母さま。正統派お姫さまって感じだった。ロサの線が細くて華奢に見えがちなのは夫人譲りだろう。金髪に青い瞳だった。

第三夫人はキャスリンさま。第四王子(12歳)コリン・リンゼイ・フウ・ケ・ユオブリアさまと第一王女(9歳)アガサ・ポリー・オブ・ハン・ユオブリアさまの母君。コリン殿下は早々に王位継承権を手放している。王族は金髪に紫の瞳が多く不文律になっている。殿下は髪が少しだけ茶色よりの金髪。そこを考慮して早々に辞退したのではと言われている。

夫人は、少し神経質そうな茶色い髪に青い瞳の痩せた方。背が高い。

第四夫人がエステルさま。お会いしたことはない。第三王子(13歳)バンプー・トスカ・ニキ・ド・ユオブリアさまと第五王子(7歳)ハイド・リッチ・キム・フェイ・ユオブリアさまの母君。バンプーさまを王太子にしたいみたい。

第五夫人がアグネスさまで、第二王女(6歳)フローリア・ブルー・ロエ・トセ・ユオブリアさまのお母さま。おっとりした可愛らしいかたで、豊かな金髪は巻き毛だ。

第六夫人がレベッカさま。22、3歳の若い方でお子さまはいらっしゃらない。

すっきりした美人。あまり着飾ったりしない方のようで、お化粧や髪型、服に気を使ったら、どれだけの美女になるんだろうって思う。地味を装っている感じ。お子さまがいらっしゃらないから立場が弱く、目立たないよう気をつけているのかもしれない。

「紫電閃の件で、王太子の決定を早める話が出たから、婚約者をと焦ったのだろう」

「それにしてもなんでウチかなー。伯爵よ、ウチは」

「セローリア公爵家と張り合うには、僕だって君の家を選ぶよ」

アダムは優雅に肘をついて顎を手に乗せる。

「伯爵家でも後ろ盾がすごいしね。おまけに光属性が生まれるかもしれないし。何せ姉は神獣と聖獣からの加護もちだ。領地も栄えているし、君んちの食事やお菓子は本当においしい」

「ウチをかってくれるのは嬉しいけど、王族にエリンをあげたくないわ。エリンがどっかの王子殿下をどうしても好きでっていうなら話は別だけど」

なんて話しているうちに、父さまからの返信が飛んできた。

放課後フォンで話してくれるという。手紙にするには込み入っているか、文字として残すのはまずいのか。

「そういえば、生徒会にも出入りするなって? 生徒なんだから、逆だよな。用事があるなら迎え入れてくれるって言ってやればよかったのに」

「まぁ、そうでもあるんだけど。確かに好きな人がいたら、近づく者は誰だろうと威嚇したくなるものでしょう? 婚約者がいても異性に近づかれるは嫌なものだし。わたしも嫌なのに、それを自分がやっていると思ったら、そこは直すべきだと思ったのよ」

「なるほど」

「アダムに恋してる子にも何回か言われたよ。どういう関係?って。わたしには婚約者がいるんだから、アダムを解放するべきだってなことも言われたよ」

「……君が嫌だといっても、僕は離れる気はないよ。……もう後悔したくない。君に何かあって、あんな思いは二度としたくないから」

鐘が鳴った。バタバタとみんなが席に着く。

先生が入ってきて、わたしも椅子に座り直す。

アダムが悲壮な表情で真剣にいうから、雰囲気に飲まれて何も言えなかった。

わたしほんと、みんなに守ってもらってるよなー。

わたしもみんなを守れるといいんだけど。

学園で、みんなと秘密裏に話せるところ。誰にも見咎められないところ。

あるにはあるけど、やっぱ、私的に使うのは間違っている気がするし。

離れた場所でフォンで話すしかないのかな。

異性と親しくするものではないというのは、そうよねと思うんだけど、世界の終焉問題で話し合うべきなわけだから……。

「シュタイン、前に出てこの問題を解きなさい」

やべ、全然聞いてなかった。環境学の計算問題だ。

去年の潮の満ち引き、それから暑さ、寒さの最高温度と日数など、いくつかの情報が提示され、来年植えた方がいい麦と野菜の種類を答えるものだ。

計算を始めたがふと、気づく。

「先生」

「解けない、ですか?」