軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第970話 パンドラの希望⑩特異体質

「そういえば、リディア嬢。学園に通うことを許されてよかったね」

ルシオに微笑まれる。

ああ。

「なんとかね」

わたしに何かすれば徳となる宗教がでてるわけだからね。父さまは当然いい顔してない。けれど、どこにいてもそれは同じ。この間まではわたしにだけ目がむいていたみたいだからまだよかった。でもこれからはわからない。

領地全体を焼き払うとかもありじゃない? だから領地は警戒を強めてもらうよう言ってある。

母さまと下の双子には、リノさまを襲えと指示した人になりそうになっていた話はした。ただ、宗教のことは言ってなくて、謀反事件の時に身分落ちした親族に恨まれて起きたことだと説明してある。

「……リディア嬢、本当に君はオトメゲーの中で重要人物じゃないの?」

シナリオの説明の時に否定した、同じ質問をダニエルが繰り返す。

「うん、かろうじて名前の出てくる役どころだよ。兄さまは活躍するけどね」

「ダニエルはそこが気になるようだね?」

ロサが紅茶のカップに手を伸ばす。

「怖がらせたいわけではないけれど……介入が過去にあったことだとして。その介入者から執拗に執着されている、それは主役のアイリス嬢ではなく、リディア嬢だという気がするんだ」

ダニエルから爆弾発言が飛び出した。

「確かにリディア嬢は何かにつけて狙われている」

「王族並みに危険な目に遭ってるね」

「特異体質だし」

「テンジモノでもあり」

「よっぽど邪魔ってことか?」

最後に言ったブライの言葉にみんなハッとする。

「邪魔って?」

「え? だから。なんかしたいことがあるけど、リディア嬢の能力のなんかがひっかかるんだ。だから、邪魔!」

とわたしに指を突きつける。ヲイ!

「ブライは時々いいことを言うよな」

「時々かよ?」

プライが吠えた。

「リディア嬢の特別な出生だとか、光の使い手の血筋であるとか。そちらに気をとられていたけれど、そうか、能力が知られている可能性もあるのか!」

「そういえば、ゴット殿下に唯一倒せるって言わせたんだよな? やっぱり介入者は神さまで、そうするには神をも倒す力を持つリディア嬢は狙われたんじゃねーか?」

「か、神をも倒す力なんてないよ?」

わたしはすぐさま否定した。

「そーなのか? でも神力に対抗できるのは聖力なんだろ? 聖なる方は地上には降りて来ない。地上にいるのは聖獣さまたちと、聖力の使い手。今んとこ俺らが知ってるのはリディア嬢だけじゃん」

みんなハッとしてブライを見る。

そしてダニエルのため息。

「……ブライってそういうところあるよな」

「ダニエル、なんだよ、そういうところって?」

「話がわからないとか言っておきながら、一足飛びに真実に迫る。本能で鋭い」

「嗅覚がすごいな、お前」

イザークは本気で感心してると思うけど、言い方がぞんざい。

「なんだよ、当たりってことか?」

「それはわからないけど、当たらずとも遠からずかもしれない」

な、なによ。

「聖力って珍しいの?」

尋ねながら自分で答えを見つけている。わたしの世界は広くない。教えられたことと、聞いたことで成り立っている。それでもそれなりの年月は生きている。今まで聖力なんて聞いたことなかった。聖獣もふさまと一緒にいたにもかかわらずだ。もふさまだって聖力を使ったことはそのうち数回。

それに……あの理論があっていたとするなら、11人の聖女さまの中で聖力に触れた方はたったひとり。

光の使い手より、希少な気がする。

「聖なる方や聖獣に仕える職業はない。聖力は稀なはずだ」

そうだろうと思いながらも抵抗してみる。

「聖女さまが使うのは? 聖力じゃないの?」

「だから、聖女さまが使うのは女神さまの力、神力だ」

「じゃあなんで聖女って言うの? 神女じゃん!」

「本当なんで神女にしなかったんだろう?」

ルシオも首を傾げる。

神聖国のくくりも、神殿が聖水を持っているのも、なんか頭の中がこんがらがる!

「……あり得るかもな」

アダムまで。

「介入者は何かを変えたい。けれど、それにはリディア嬢、君の力があると困るんだ。君の特別な力。それは聖力かもしれないし、違うかもしれない。けれど、今まで君に執着してきた介入者には、どうしても排除したい力なんだ」

こ、怖いんですけど!

「そっちからも探れるかもな。君が邪魔な介入者って誰かと考えることで」

「でもさ、リディア嬢の聖力をどこの誰が知れるんだ?」

イザークの問いかけに、場が再びシーンとする。

「聖力を初めて使ったのは?」

「……ええと、蓮の葉の地下でホルクを再生した時?」

「いや、……ゴッド殿下が君の聖力に気づいていた」

あ。そういえば。

「どうやって使ったんだ?」

「違う。あの時は……」

思い出そうとする。

「もう魔力もなくて、体力も限界で。収納袋から殿下の上に聖水を降らせただけ」

あの時なんか言われたな。

「ええと、確か。収納袋の中はわたしと繋がっているから、思いが乗りやすいんだろうみたいなことを言われた」

「聖水を収納袋の中に入れておいて、君の力が移っていた。君があの時、殿下に止まって欲しいと思っていたから、その思いが聖水により力を与えたってところか?」

「ロサ殿下、隠れ家でリディア嬢の攻撃を受けた時、聖力ってわかったか?」

ダニエルに尋ねられ、ロサは少し考える。

「……あの時、聖力で攻撃してみるのが前提だったから、普通の攻撃との違いは少し感じたけど、だからそれが聖力だとは知らなかったら思わないだろうな。同じ攻撃に少し違和感があるだけだ。アダムはどうだった?」

「僕もそうだな。確かに普通の攻撃と何かが少し違ったけれど、それと聖力を結びつけられる下地がなかったらわからなかった。……でもゴット殿下は気づいた」

「どうして気づいたんだ? 下地もなかったはずなのに」

その時のことを思い出そうとする。最初に雪を落として簡単に突破された。やけっぱちになって海水をお見舞いした。嫌がらせにはなってると認めていた。

聖水をかけたら……水か?と言って乾かして、ガクッと膝を落とした。何をした?って怒鳴られて。何したっていうか聖水かけただけなのにと心の中で思ってはいたけれど口には出せず。王子は考えているようだった。

「……そういえば。聖獣と普段からいる、聖なる方属性かって言われたかも」

「ゴット殿下はお遣いさまのことも聖獣ってすぐに気づいたみたいだし。なぜわかったのか……」

みんな悩んでいる。

「そこはわからないけど、神属性が強い人には聖なる力は効くんだろう」

「本当に効いていたかはわからないけどね」

「え?」

「……その時の映像は見たよ。兄上には効いていたように見えたけど?」

「……そうかもしれない。もう本当のことがわかることはないけど。あの時、もうすでに第一王子殿下はボロボロだったんだと思う」

わたしのことを唯一の倒せる者だとかなんとか言ってたから、そう思い込まされていたけど。わたしだってあの時ボロボロだった。ただの嫌がらせで水を頭からかけたりしていただけ。

確かに聖水で少しの違和感はあったのかもしれないけど、第一王子は動くのがやっとで、そういうことにしたんじゃないかと今は思う。