軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第959話 わたしたちの王さま⑱レアロサ

シュタイン一家はバイエルン家からイザークの家に行くと言うし、衛兵からバイエルン家で魔法の事故があったと連絡が来るしで。ロサはわたしたちに何かあったと思ったらしい。

何か起こったのならその旨伝えられるだろうけど、目で無事な姿を確認するまでは安心できなかったと。

これまでの調書のことを教えてくれると言うので、モットレイ侯爵さまはロサに軽食とみんなにお茶を用意して、使用人たちを下がらせた。

念のため盗聴防止の魔具を置き、もふさまにも誰も紛れ込んでないよねと確認をとる。

知った人たちだけになると、リュックの中からもふもふ軍団が出てきて伸びをした。そして、テーブルの上のお菓子に群がる。

調書を取られているふたりは、なかなか口を割らなかった。

ただ彼女たちの近親者に最近の様子などを聞いていて、共通点があったそうだ。彼女たちの生活態度は真面目だ。派手な遊びをするわけでもなく、日々のことをこなしていた。けれど頻繁にどこかに通っていた。

バルバラ・デルコーレは信仰が厚かったのか、祈りに行くと近頃ハイペースで出かけていた。教会、神殿に確めると、デルコーレ嬢は行っていなかった。その事実に、家族は教会に行ってるとばかり思っていたから驚いたそうだ。

パメラ・ロンゴも真面目だった。養子ということもあり、ロンゴ家を汚すことのないよう気を張っていた。彼女も仕事が休みの日は足繁くどこかに通っていた。

いい人ができたのか?と囃し立てても、そんなのではないと言っていたそうだ。男女の話で茶化されたらかわいそうと思った先輩が「教会にでも行ってるんだろ」とかばったところ、真面目な顔で「神なんていない。2度と祈らない」と言われ、その話題に触れなくなったそうだ。

それでロンゴ家の前のパメラの実家に行ってみたところ、そこも知り合いの知り合いから頼まれて引き取った子であることがわかった。

2年前の謀叛事件によりザクセン男爵から平民に落ちた、パーラ・ザクセン令嬢だったことがわかる。

そのことを持ち出すと、パメラは顔を歪めた。

そして、悪いのは全部リディア・シュタインだと言ったそうだ。

わたしはたくさんの人を平民落ちさせて、不幸にしたそうだ。

過去から現在はつながっているのはわかっているけれど、わたしの中で謀反事件は終わったことだ。けれど当事者には割り切れることではないのがわかる。

それも知っていることではあるけど。

でも、わたしを恨むのはお門違いだ。

だってわたしがいてもいなくても、悪いことを企て甘い汁を啜った事実は変わらない。わたしはそれを明るみに出す一端を担っただけ。それも意図してやったわけではない。自分に降りかかった死の火の粉を払っただけ。わたしの大切な人たちに及びそうになった濡れ衣をそうじゃないと証明しただけ。

本当に多くの人が関わっていた。実際何かをしていなくてもそうなったらいいなと連覇状の役目を果たす土地を買ったりしていて、粛清を受けた。

学園祭で利用されたデヴォンも、末端の家系が粛清され、その監督不行届で本家から退き爵位もひとつ下がった。親戚累々まで粛清は広がり、理不尽だと思った人も多くいることだろう。

そのうち、わたしのせいだと思う人が稀であってほしいと思うが。

さっきのダニエルの言葉が蘇る。

「前から思っていたんだ。でもそれも光属性の隔世遺伝を望んでか、両加護持ちだから、婚約者がいるのにもかかわらず、殿下と婚姻を結ぶのでは?と言う勘ぐりで目をつけられていたのだと。けれど、その……今回もだろ? ロサ殿下が公式発表をするのは周知の事実だった。それが腑に落ちない。長く執拗に何かの意思が働いているとしか思えない」

知らないところで、誰かから目をつけられてるんじゃない? わたし。

……それがあの弁護士とか?

パメラはそれ以上のことを答えなかったけれど、彼女はわたしを恨んでいて。

バルバラとパメラが共謀して考えたことではない気がするので、他にバックがいると思われているようだ。というのは、バルバラの即席パートナーの駆け落ちした婚約者。彼女もどこかはわからないけれど、足繁くどこかに通っていたというのだ。

ダニエルがさっき聞いたのだけどと、神殿離れのことをルシオから聞いたと伝えた。ロサは考える表情になる。

どこに通っていたか、それがわかるといいのだけど……。

わかったのはそこまでだそうだ。

わたしたちは何があったと聞かれて、バイエルン家であったことを話すことにした。

夜も結構いい時間になっていたので、モットレイ侯爵さまはロサをはじめ、みんなに泊まっていくことを勧め、各家に連絡するまでを受け持ってくれた。そして子供たちだけの方が話しやすいだろうと父さまを引き連れて出て行った。

わたしたちは時間を気にせずゆっくり話せることになったので、順を追って話した。

ロサは聞き上手で、なんか鼻高々になれたし、話すのも3回目になったので、少しはまとめて話せるようになってたと思う。

「課題はいっぱいあるが、力が湧いてくるな。早く試してみたい」

ロサが初めて笑顔を浮かべる。

「そうだね。でも誰彼にも伝えることができないのは辛いところだね」

わたしがそこらへんのさじ加減はロサに任せると丸投げすると、ロサは少し視線を落とす。

「近衛の騎士たちのことでも碌な調書も取れてない。全く情けない」

ロサはナーバスになっているみたいだ。

「ロサ。ロサは情けなくなんかない。間違いなく、わたしたちの王さまだよ」

ロサが顔を上げる。

「調書の部屋にロサが来てくれたとき安心したの。ああこの人が公平に導いてくれる、だから大丈夫だって」

ロサが固まる。動き出したと思ったら、ふわりと笑った。

「あ、ありがとう」

ロサが照れてる。レアだ。