軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第937話 グレーンの王さま②グレーン酒

「暖房が壊れたのか?」

イザークが不思議顔。

ボイラー室と言ったから、暖房の調子が悪くて見に行ったと思ったようだ。

「ん? 配管があったっかくてさー。張りついて眠ると至福なんだよねー」

「配管に張りつく??」

ルシオがびっくりしている。

いきなりアダムが吹いた。ダニエルも笑いを堪えている。イザークの肩が震えた。

「配管に張りつくって火傷しないもんなの?」

ブライが真剣にいう。

「人型だと火傷するかもね。かなり熱いから」

そこまで言うと思い当たってなかったふたりもわかったみたいで、ふと目を逸らし笑いを堪えている。

そんな楽しいかね? トカゲが配管に張りついてるってのが?

まあ、いいけど。

「それにしても前々バイエルン侯が購入した農場が一旦手を離れ、またバイエルン侯となった息子の手に戻ったって凄いな。よかったな」

ブライの心からの祝福だ。

「ありがとう」

兄さまも素直に受けとめ、お礼を言った。

「でもフランツの父君はどうしてこの農場を買われたんだい? 共和国で土地を買って資産にするのはよくあることだけど……」

ダニエルは不思議に思っていたらしい。

「ああ。父上はいわゆるウワバミだったらしくて、自分でも酔えるようなキツイ酒を作りたいと思ったみたいだ」

「え、自分で飲む酒を作りたくて、グレーン農園作ったってこと? グレーン酒の製造も含めて?」

ルシオが尋ね、兄さまが頷く。

「それは筋金入りだ」

イザークが変な感心の仕方をした。

「それでそんなキツイ酒、できたのか?」

ダニエルが興味深そうだ。

「生前にはできなかったそうだ。今も強い酒はどんどん作っているみたいだけど試す人がいないって」

「そういえばフランツもお酒強いよね?」

ルシオが首を傾げる。

「そうなんだ、私も酔うことがないから、今回その強いのを飲んでみたいと思っている」

「じゃ、行こうぜ!」

善は急げとばかりに、ブライは兄さまの首に腕を入れて引っ張っていこうとする。

農場は広い。畑から戻って、建物スペースを通り越し、やっとグレーン酒の製造場にたどり着いた。

人が4、5人は入れそうな樽がいっぱいある。

筒やら樽を移動させる道具的なものやら、かき混ぜる用に見える何かもいっぱい。

奥に行くに従って、グレーンを成熟させた香が強くなっていった。

反対側にあった扉から出ると、酒蔵が見えた。

中に入るとひんやりしている。

手前にはグレーン酒の樽、奥には売り出すのを待っているような状態の瓶に詰められたお酒も並んでいた。

もふもふたちがサッともふさまのリュックに入り込む。

コツコツと足音をさせ奥から高齢のおじいさんが歩いてきて、わたしたちに丁寧に頭を下げる。

「グレーン酒のことを全て任されておりますバルドと申します。

ピオから本日いらっしゃることは聞いておりました。

アレクシスさまのご子息さまですね。目が特にそっくりだ。口元はローズさまに似ておいでですね」

バルドさんは兄さまをみて少し涙ぐんでいる。

「父と母をご存知ですか?」

アレクシス・バイエルンが兄さまのお父さまの名前で、ローズ・バイエルンがお母さまの名前だ。

「はい、存じております。おふたりが私の作る酒を気に入ってくださり、ここの責任者としてくださったのです」

「フランツ、部屋でゆっくり聞いたら?」

ダニエルがそう話をむけた。

バルドさんも差し迫った仕事はないようなので、部屋へと招く。

その前にと、お酒のことを聞かれ、兄さまは少し恥ずかしそうに自分もウワバミであることを伝えた。

バルドさんはとても嬉しそうにして、いくつかのお酒を持ち出していた。

もふさまが尻尾を振っている。

お昼ご飯にしてもいいね。

食べながらワイワイと。兄さまとバルドさんが飲みながらゆっくり話せればいいんだし。

わたし以外お酒オッケーのようなので、まず簡単なツマミを収納袋から出した。もちろんもふさまにも。簡易コンロの前のテーブルに、もふもふ軍団の入ったリュックを置き、その中にもおツマミを入れる。

コップを用意した。お酒好きのために作った厚みの薄いグラスを特別に用意する。お酒飲みに絶賛された薄さだ。

バルドさんはみんなに甘めのものとさっぱりしたものどちらが好きかを尋ねる。

ダニエルとイザークと兄さまはさっぱり目。

ブライ、ルシオ、アダムは甘め。

わたしがお酒は苦手だといえば、グレーンのジュースを注いでくれた。

それぞれにお酒が振る舞われる。

みんな香を楽しんでから一口、口に含む。表情が変わる。

「これはまた、豊潤な」

感心したように唸るダニエル。

「難しいことはわかんねーけど、うまいのはわかる!」

とブライ。

「おいしい!」

とルシオ。

「強い酒なのに、飲みやすい」

イザークはグラスを掲げて楽しそうにみている。

「一級品だな」

とアダム。

半分ぐらい飲むと、兄さま以外、頬を赤くしている。

わたしはテーブルの上にガツンとした味の料理を置いていった。

バルドさんにももちろん勧める。

みんな料理とグレーン酒を交互に味わい、満足気だ。

もふさまやもふもふ軍団も楽しんでいるみたい。

もふさまが飲みたいというので、バルドさんにことわり、お酒をいただく。

『いい酒だ』

もふさま、普段はお酒飲みたがらないのに。

何度も乾杯しながら、楽しい時間はすぎていった。

わたしもジュースがおいしくて、3杯もいただいてしまった。

酸味と甘味がちょうどいいの。甘いのに、飲んだ後すっきりしているの。

これはおいしい!

もふもふ軍団たちもお酒を飲みたがったけど、もし酔っ払ってバルドさんがいる時に動いちゃうと困るので、後でと言ってある。

お料理はほぼ食べ終わったのでお皿を下げる。

なにもないのも寂しいので、フルーツとチーズやおつまみ、甘いお菓子も添えてみた。

みんなグラスをたゆらせながら、思い思いに楽しんでいる。

「クラウスさま、アレクシスさまが飲みたいとおっしゃっていた酔える酒、召し上がっていただけますか?」

兄さまは微笑みを携えて頷いた。

みんなにもテイスティングの時の小皿に一口分ずつ入れていく。

わたしは匂いだけで酔いそうだ。

みんなひと舐めして驚いている。

「これは強い」

「焼けるようだ」

と兄さまを見ると、兄さまはジュースでも飲むように、コクっと味わっている。

「フランツ、きつくねーのか?」

「これは、強い。それはわかるよ」

そうブライに言ってバルドさんに向き合う。

「これは酔える気がします。とても強い酒です。そしてうまい」