軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第926話 Get up⑰聖女と会談<前編>

小鳥のさえずりが聞こえる。

王都の家のわたしの部屋だ。

首回りにいるアオとレオを潰さないように体を起こす。

もふさまと目があう。

「おはよう、もふさま」

『……おはよう』

わたしは大きく伸びをする。

なんだか長いこと眠っていたような、長い夢を見ていた気がする。

どんな夢だったっけ?

……思い出せない。ま、夢だもの、そんなものよね。

足のあたりの布団の上で、ベアとアリとクイがくっついて丸まっている。

ふ、可愛い。

毎日見ているはずなのに、なんでこんなに懐かしく感じるんだろう?

『リディア、もしかして……』

「んー、なぁに?」

もふさまはわたしをじっと見てから、なんでもないと終わらせた。

変な、もふさま。

ベッドからそっと降りて、カーテンを開ける。

光がサッと差し込んだ。

窓を開けると、冷たい空気が入り込んでくる。

窓を開けたままベッドに戻って、もふもふ軍団はまだ眠っているから、簡単に布団を直す。

続きにある洗面所に行く。

鏡に短い髪のわたしが映る。

……わたしだ。ああ、そうだ。そうだった。

髪を簡単にひとつに結び顔を洗った。

うがいをして、髪をほどいて梳かす。

洗面所と床を軽くお掃除。

それから制服に着替えて部屋へと戻る。

みんなを起こした。声をかけると比較的すぐに起きるけど、レオだけは奥の手を使わないといけない。火魔法を使えば一瞬で起きる。

みんなにおはようの挨拶をして、バッグを持ってみんなと部屋を出る。

階段の下でアルノルトとすれ違った。挨拶をして食事部屋に入る。

もふもふ軍団は待ちきれないように、急いで部屋に入り、テーブルの上でスタンバイ。

もふさまの定位置にはお肉がてんこ盛り。さすがアルノルト、よくわかっている。

双子兄が入ってきて、挨拶をする。

二人ともなんとなく眠そう。

いただきますをして、朝ごはんをいただく。

和食だ。おにぎり。母さまが作ってくれたのかな。

卵焼きと焼き魚。お味噌汁。

ふー、体に染みる。

ごちそうさまをして、歯を磨く。

玄関から出ると、ガーシとシモーネ。学園まで護衛してくれるようだ。

デルが御者でその馬車にわたしたち兄妹が乗りこむ。

その前後に馬でガーシとシモーネがついてくれている。

眠れたかと尋ねられ、ゆっくり眠れたというと頭を撫でてくれた。

門のところでお礼を言って、ガーシ、シモーネ、デルとはお別れだ。

3人で学園に入っていく。

「おはよう」

「おはよう」

いつの間にか隣にアダムがいた。といっても、人がひとり入るくらい離れた不思議な距離。

人が吹き溜まっているなと思ったら、ロサだった。

「おはよう、リディア嬢」

「おはようございます、殿下」

カーテシーでご挨拶。

「急なことなんだが、聖女さまが今日は学園にいらしていて、どうしても君と話がしたいと」

わたしは頷く。

「光栄です」

アダムもロサもわたしに遠慮があるみたいだ。

わたしは双子たちと別れ、ロサに連れられ特別棟へと赴いた。

そして一室に招き入れられる。ぬいたちの入ったリュックを背負ったもふさまと一緒だ。

ロサもアダムも、中には入らないようだ。

「失礼します」

わたしが足を踏み入れると、上級生の制服姿の女生徒が駆け寄ってきた。

そしてわたしに抱きつく。

……泣いてる。声を押し殺して。

体重をかけないようにしながらギュッと抱きついてくる聖女さまの背中を、わたしはゆっくり叩いた。

鐘が鳴り、驚いたようにわたしから体を離す。

「あ、リディアさま、ごめんなさい。あ、あたしを覚えていませんよね? それなのにいきなりごめんなさい」

涙に濡れた頬。今度は一生懸命謝ってくる。

「聖女、アイリスさまにご挨拶申し上げます。聖女になられたこと、心よりお祝い申し上げます」

アイリス嬢は無理に微笑む。

「ありがとうございます。

リディアさまが大変な時にごめんなさい。

あの、あたし、よくリディアさまにご相談させていただいてましたの。

あたしは聖女と呼ばれるようになりましたけど、ふたりの時は、以前のように接して欲しいです。以前のようにとは……その友達みたいに。口調も普通に。考えていることも普通に話して欲しいです」

「……わかりました。では今ふたりだから、お友達のように話させていただきますね」

そう伝えれば、少し嬉しそうな顔になる。

「あまり眠れてないのですか?」

目の下にクマができている。

「皆さまに期待を込めてよくしていただいております。けれど、あたしいろいろうまくできなくて。よくしてもらう資格なんかなくて。終焉に備えて、早く力を使いこなせるようになりたいのに、全然うまくいかなくて」

追い詰められてるなー。

「アイリスさま、今日の朝ごはん、思い出せます?」

「え?」

「わたしはおにぎり。お魚をほぐしたものが具です。海藻と菜葉のミソンのスープ。卵焼きに焼き魚でした。アイリスさまは?」

「え、……えーと。パンとスープだったかしら?」

わたしはアイリス嬢の手を取り、片方の手で彼女の頬の涙を拭った。

「ご飯の時は、しっかりご飯のことを考えて食べないと。ちゃんと食べる、ちゃんと寝る。アイリスさまは決して手を抜く方ではありませんわ。それはみんな知っています。

女神さまから力を授かった方。わたしたちはその恩恵を受けるだけです。だからアイリスさまは無理に頑張らなくてもいいんです。

でもそう言われてもそうは思えないですよね?

でしたら、そうですね。昨日より何かが少し進んだらご自分を褒めて差し上げて。それを共有しましょう」

「昨日より、少し進んだら?」

「そうです」

「でも、終焉は近づいているのに!」

「アイリスさま。学園祭で殿下がおっしゃいました。一人ではできることはたかが知れている。それが人が集まると、大きなことができると。

本当にそうだと思います。わたしたちはとてもちっぽけです。でもみんなが力を出し合えば大きなこともできる。

未来に立ち向かうのはアイリスさまだけじゃありません。みんな一緒です。

みんなを頼ってください。やれることをやっていきましょう。

根を詰めていたら、倒れちゃいますよ」

「……リディアさま」

またわたしにしがみついて泣き出した。

「泣ききってください。大丈夫ですよ。よく頑張りました。アイリスさまは偉いです」

しばらく背中をトントンして。

ソファーにふたりで座る。

もふさまに誰にも聞かれてないかを確かめる。一応探索でもチェックしているけど。

大丈夫だというので、アイリス嬢と少し話をすることにした。