軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第914話 Get up⑤神聖国設立記

『異界の者と出会うと何が凄いのだ?』

わたしの膝の上からもふもふがルシオに尋ねた。アオが通訳をかってでてくれる。

「この世界の者はここしか知らないゆえに、この世界の常識に囚われます。けれど、異界の記憶がある 方(かた) は違う。僕たちの閉ざされた考えに思いもよらなかった 閃(ひらめ) きをくれる。

今までの謀反 然(しか) り、グレナン然り、それから玉のことも、瘴気を分散させる考えも、いつも転機というぐらい変えているのはリディア嬢です」

『ふむ、確かにリディアは面白い。人族の中でも変わっていると思ったが、異界の記憶が含まれているところもあるということだな』

もふもふと目が合う。

「そういえば、そうだな」

とイザークが思い当たったように頷く。

みんなそれには異存がないようだ。

「おー、さすがテンジモノ。これからも頼むぜ!」

ブライが明るく言った。それ以上の思惑も何もないので、笑えてしまう。

「神殿の創世記の続きだったな、悪いな話の腰を折って」

おお、ブライが話を戻した。

「いえ、知っていることと思っても、理解が違っていたりすることもあるから、これで足並みを揃えられるからよかったよ」

ルシオはニコッとブライとロビンお兄さまに笑ってから、軽く喉を整える。

「後半は〝神聖国設立記〟です。

その前に混乱させると思うので、先に言っておくね。先ほどと重複するけど。

創造主はラテアスさまですけど、我々が神と呼ぶのは、この世界を構築させるためにある神さまたちです。

世界自体を創ることができるのがラテアスさま。他の神々はこの世界のためだけに存在する神さまです。

……神さまのトップがラテアスさまと思ってもらえれば間違いないです」

先ほどもそこで 痞(つか) え説明してもらい、箱庭の定義や初めから終わりというのはなんとなくそういうものと捉えられたものの、二通りの神さまくだりで、表情が抜け落ちていくブライとロビンお兄さま。彼らを見て、ルシオは簡単な言葉にまとめ直した。

一番偉いんだなとふたりは納得したみたい。

「昔はみんな同じ大地に暮らしていました。

神と聖霊、獣、人。

神さまと聖霊さまがこの世界を育まれました。手塩にかけて育んできた。だからいつも世界のことを気にかけていました。

ただ人族が、 殊(こと) の 外(ほか) 、思い通りに育たないことに嫌気がさし、神は怒りのあまり人族を消してしまおうと思いました」

は?

「それで聖霊のたちの王が、神の 長(おさ) である 神王(しんおう) を 嗜(たしな) めたんです。人族は寿命が短い。種族として育っていくのには時間がかかる。それに思った通りじゃないからと命あるものを消し去るのは堪えしょうがないと。それで神対精霊の大喧嘩になり、ひとつだった大地が6つに割れました」

喧嘩ダイナミック……。

「ラテアスさまは悲しまれました。

そして決めました。世界に対して過干渉すぎるからと、神と聖霊を大地から引き上げさせたのです。そして地上に降りてはいけないとお 達(たっ) しを出されました。人族に干渉することを禁ずると。

地上に降りることを禁止された神、聖霊はそれでも世界が心配でなりませんでした。そこで神王は神獣を、聖霊王は聖獣を地上に遣わして、今も大地を守っているのです」

もふもふはその聖獣、なんだね。

「……なぜその話は公開されないんでしょう? 言ってまずいことがあるようには思えなかったんですが」

アランお兄さまは不思議そうな顔。

「今の聞いたら、神さまじゃなくて、聖霊さまの方に信仰が傾くからじゃねーの? 人族を消そうとして止めてくれたのは聖霊王さまなんだろ?」

あ、そっか。

ルシオはちょっとトホホ笑い。

「その理由を教えてもらったことはないのですが、それも含んでいると思います。

一番損傷が激しかったのが、のちにツワイシプ大陸と呼ばれる第2大陸。まさに喧嘩の現場でした。でもだからこそ、神や聖霊が多くいて、傷ついた大地に祝印したことで、豊かな大陸になったと言われています。

その割れた時にいた大地に、聖霊たちは同化してしまったそうです。神と違い世界が損傷したため弱り大地に同化してしまった者が多かったから、聖霊たち全てを引き上げさせることができなかった。それが公平でないと、また喧嘩が始まりそうでした。

ラテアスさまは、そこで、枯れた土地《第3大陸》に聖域を拵えました。

仲違いしないための約束の地。この地にだけは、望まれたとき、神も聖霊王も降り立つことができるようにと。

仲違いしないでいれば人族とかかわることができる場所、ラテアスさまは仲違いしないよう条件をつけて、それだけを許されました。これが聖女の子孫が治めることになった神聖国です。

神も聖霊たちも、自分たちが作りあげてきた大地と、そこに息づくものが好きでした。だから神聖国に留まりたがった。

けれど、人というのは欲深い生き物。聖霊王と人族の娘が恋に落ちてから、余計にそれが顕著になった」

あれ、聖霊王と女神の子が精霊って言ってなかったっけ? 聖霊王と女神が結婚したんじゃないの?

「そしてとうとうひとりの神が、人族のひとりを死なせてしまいました。

神が怒りに任せて命を奪おうとした者を庇った娘を。

それが聖霊王と恋に落ちた人族の娘でした。

それが発端で、神と聖霊王が怒りに任せて戦い、再び大地は傷をおいました。

ラテアスさまは神と聖霊王に神聖国からも引き上げるよう命じられました」

ルシオが一息つく。

恋はしたけど、結ばれず、人族の娘は亡くなってしまったのか。

そうして地上に降りることを許されなくなった……。

神も聖霊も創造主から大地に降りることを禁じられたんだ。