軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第878話 忍び寄る悪意①学祭の始まり

「リディア起きるでち」

もふもふに顔を舐められ、アオにペチペチされている。

『お祭りだよ』

『お祭りなんだろう?』

アリとクイの声。

ムクっと起き上がる。

そうだ、今日から学園祭だった。

大きく伸びをして、起こしてくれたみんなにお礼を言う。

これだけうるさくしているのにまだ眠っているレオを、火の魔具を使って起こした。顔を洗って制服に着替える。後で浴衣にも着替えるので、髪を整え、後ろにひとつで結ぶ。結んだ先が3センチも出ないけれど、その結び目にフランツのくれた髪飾りをつけてみた。

窓を開けて、ベッドを整え、簡単に掃除をする。

よし、準備オッケー。

ぬいになってもらって、そのリュックをもふもふが背負い、出陣だ。

いつもより早い時間だけど、食堂は開いている。学園祭の間だけ特別だ。

朝ごはんをいただき、学園に。

昨日の午後に会場の用意はしてある。

不備がないか見て回る。寮のクレープの出店もOKだし、クラブの部室も整っている。あとは当番の時間に来ればいい。

クラスでやるお祭り屋台は、楽しそうなことになっていた。

予備でもらった隣の部屋を半分に区切ってある。

浴衣をどれにするかみんなで決め、着付けをやってみせると、レニータがすぐに会得したので、そのあとの着付けの先生役はお任せした。だってわたしがやるより上手なんだもん。

会場も綿菓子機、お手製パチンコによる射撃、輪投げと充実。景品は得点により異なり、クッキー、ショートブレッド、パウンドケーキ、最高点ではチョコ菓子を進呈だ。焼きそばとたこ焼きは収納箱に入っていて、保温魔具で温めておくだけ。ここも準備OKだね。

そんなチェックをしていると開会式の時間が近づいてきたので、みんなでゾロゾロと講堂に向かう。

いつもより広くなっていて、部屋の伸び縮みもアリなのかと少しビビる。

だって天井も高くなってるの、気のせいじゃないよね?

わたしと同じ反応をしているのは1年生。誰かが全員入れる大きさになるんだ、この講堂はと教えてくれる。

なんじゃそりゃ、すごいな。

前方にプラカードが立っている。3年D組がある。あそこに並ぶのね。背の順だからわたしが一番前だ。

生徒会が入ってきた。マント姿のロサ殿下が入ってくると黄色い声が飛ぶ。

「ブレド殿下よ」

下級生たちが興奮している。

ロサと目があった。わたしに気づいて目が細まる。

その笑みにきゃーーーーっと叫び声が。

ロサ、大人気じゃん。

唐突に、シャランと幾重の鈴を震わせたような音がする。

「只今より、第315回学園祭、開始の儀を始めます」

3年A組のエリーの声だ。舞台横で緊張した面持ちで立っていた。

生徒会では司会進行がお仕事なんだね。

舞台の上から、何かがスルスルと降りてくる。

ユオブリアの旗だ。世界樹の葉と星と枝がモチーフとして使われている。

世界樹といえば、理事長が聖樹さまにコンタクトを取った。

犯罪に世界樹の葉が夥しい数で使われていた。心当たりは?と。世界樹の葉を多く手に入れられるのは、誰か、どのようにしてそれが可能なのか、まとめて聞いたそうだ。

長く答えはなく、やっと返ってきた返事に、「我は中立」とあったそうだ。

中立とはどういう意味だろう?

犯罪に加担はしていないのだろう。けれど心当たりはある?

ということは、犯罪者とわたしたちとの、中立の立場にあるってこと? 意味がわからない。理事長もどういうことか詳しく聞こうと手紙を送っているけれど、返事はこないらしい。

「一同、礼」

舞台前に勢揃いしている役員たちの真似をして、簡略化の礼をとる。女子も胸に手を当て、片足を下げるみたいだ。

「始まりの儀の一・清め」

白い装束に身を包んだ女生徒が舞台にあがる。5人がおでこを出し、髪を後ろにひとつに結び、同じ格好をしている。

5人は舞台中央で円になり、膝を折った。

再び立ち上がり、ひとりがシャランと鈴がいっぱいついた棒を鳴らすと、他の4人も鈴を鳴らし出した。鳴らしながら、円が大きくなり、棒を上に放り投げてそれを掴むを繰り返した。そしていつしか、自分の鈴を投げていたのが対角線上の人へと鈴を飛ばして交換を始めた。

そして「ハッ」と声を上げたと思ったら、みんなで鈴を上に掲げ集まる。

シャラシャラなっていたのがだんだんゆっくりとなり、シャランと最後に響かせ、5人が客席側に向いて跪いて身を縮めた。

たっぷり時間をとってから、楚々と立ち上がり、舞台から降りていく。

へー、新鮮。

「儀の二・宣誓」

アナウンスがあると、マント姿のロサが舞台にあがった。歓声とともに、ブレド殿下と名前を呼ばれている。

ロサは存在感たっぷりにマントを後ろに翻して、剣を掲げた。

剣? なぜ剣?

「宣誓。

我々は、ユオブリアを愛し、先輩たちが創りあげてきた学園を誇りとし、学びを糧とし、友と共に、精一杯自分の持てる力を出しきり、新しく礎を築いていくことを誓います。

未来に希望を持ち、崇高な精神で困難にも友と手を取り立ち向かい、頂点を目指す者たちよ、ここに第315回、学園祭を始める! 我に続け!」

より一層剣を掲げると

「おお!」

という声が上級生側から凄い音量と数であがる。

熱気が講堂を包んでいる。盛り上がってきたじゃん。ふふふ。楽しそう。

「儀の三・聖樹さまへの祈り」

舞台に居続けたロサが、聖樹さまのある方に体をむけて、ベレー帽ごと胸に置いて目を瞑った。

上級生たちが一斉に聖樹さまの方向へ向き直る。

わたしも真似をする。そして目を瞑って祈る。

それから学園祭の簡単な説明や、注意事項があり、9時には一般客にも門が開かれるとアナウンスがあった。

この2日間は学園の図書室が開放される。持ち出しは禁止だけど、中で読むことができるんだって。それが目当てで遠くから学園祭に来る人たちもいるそうだ。

へーっと思っていると、締めのアナウンスが流れた。

「これにて、開始の儀は終了です。解散!」

ええっ?? みんな急に走り出す。すごい勢いで。

すぐ後ろのダリアがわたしの腕をとる。

「リディア、行くよ!」

わたしはうんっと大きく頷いた。