軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第862話 君の名前⑤会いたい

そのボードで確信する。

わたしがリディア・シュタインだというのは間違っていなさそうだ。

だって名前が書いてある。

「わたし、13歳なの?」

「ああ、10月の誕生日で14歳になる。夏には王宮でデビュタントを果たした」

王宮でデビュタントって……。

聞いてもひとごとみたいに、思いが滑っていく。

それより、このボードはゲームみたいだと最初に思った。

わたしはユオブリアの学園の3年生。フォルガードの王子さまとも顔見知りだそうだ。この間聖女となられた方とも。

「君の元に、神獣が舞い降りて、君と神獣が懇意であると知られてしまった。そんな君を利用しようと思う人が現れるかもしれないと、君には神獣と聖獣、両方の加護があるということにしたんだ。本当は神獣の祝福を持つだけだけどね。そして聖獣と共にあるから、大きく外れてはいないしね」

「もふもふは聖獣なの?」

お遣いさまってそういうこと?

尋ねると、もふもふは頷いた。

「名前は? もふもふの名前はなんていうの?」

『特にない。我はスノーウルフ。大地の護り手だ。リディアは我を〝もふさま〟と呼んでいた』

「もふさまって、もふもふのもふさま?」

『よくわからないが、記憶を失う前のリディアもそう言ってたぞ』

……思い出せないけど、記憶を失くす前のわたしと通じるものがある。

ボードを呼び出して確認する。

本当だ。神獣の祝福、神さまからの祝福がいっぱい。それから、ドラゴンからの加護がある。

「それが悪く作用した。加護の力を玉に込めようとしたんだと思う」

詳細はわからないけど、おそらく最初はわたしを眠らせて、その間に加護の力を取れないか画策していたんじゃないかと思える。そしてその、わたしを眠らせるのに瘴気が使われたのではないかと。

というのは、拐われた裁判所の廊下にほのかにだけど瘴気が残っていて、使ったと思われる〝玉〟の魔石が残っていたから。

それでわたしに瘴気が使われたとみんな思ったわけで。

わたしは元々瘴気が少ないから、心配したようだ。

その後わたしはフォルガードの〝蓮の葉〟に連れて行かれたのではないかと思われる。玉となる魔石を仕上げる施設に。

ドラゴンの言っていたことから推察するに、わたしは行き止まりとなる、地下のドラゴンが閉じ込められているプールの方に、逃げ込んでしまった。

ドラゴンを見つけ話し、そして恐らく拐った 本星(ほんぼし) である弁護人に化けていた人と口論をし、気を失い運ばれて行った。

何があったのかは不明だけど、そこらへんでわたしは記憶を失う。

わたしはお金を奪って逃げた親に捨てられた子供トスカだと囁かれ、そして〝アリの巣〟に入れられた。

ちなみに銀髪の人も学友だそうだ。

ガゴチという国の若君。問題の多い国ではあるけれど、その若君は自分の代でそのイメージを払拭させたいと思って努力中だそうだ。わたしと面識がある。

わたしが拐われたと聞き、問い合わせをしてきた。

バッカスのことは知らなかったようだけど、エレイブ大陸で羽振りのいい事業の人たちからアプローチがあり、実際の商品を見てみたいと言ったところ、〝アリの巣〟に招待された。そこでわたしを〝見た〟そうだ。

組織の大きさはわからないし、わたしをそこで助けた場合、組織は姿をくらますかもしれない。それに若君としての立場もある。そこでわたしに逃げるようけしかけて、巣を出てからすぐにみんなに伝達魔法を送った。

みんなわたしを助けようとすぐに動いてくれた。もふもふとぬいたちは身軽なので先にわたしの元へと来てくれたらしい。

「……そうだったんだ。わたし、まだ飲み込めてないこともあると思うんだけど、みんなのおかげで今、ここにいられる。あの、ありがとう。本当にありがとう」

「君の家族も本当に心配している。組織は得体が知れない。君を取り戻せたとしても、もし残党を残したら、また君に何かしてくるかも知れない。

君が戻った時に、領地も何もかも君が望むそのままであるように尽力している。みんな誰よりも駆けつけたかっただろうに、私たちに任せてくれたんだ」

「領地で君の無事を信じて待っている。ここにいつまでもいてもいい。選ぶのは君の自由。けれど、一度ご家族と会ってみないか?」

「どうした?」

「……本当にわたしを探してる?」

「え?」

「決まってるじゃないか!」

アダムは不思議そうな疑問の顔。

ロサが強く言って、イザークは茫然としている。

「会えば、今君の思っていること全部が杞憂だとすぐにわかる」

フランツはそういうけど。

フランツに手を取られる。

わたしの中指の背には歯形がくっきりとついていた。

わたしは自分の中で渦巻く不安を、痛みで紛らわせようとしていたみたいだ。

金を盗み、邪魔だからお前を置いて行った。

子供を残して行ったら、子供がどんな扱いを受けるかわかっていてそうしたんだ。お前、可哀想だな?

せせら笑う声。

お前がどうなってもいいと置いていかれたんだ。厄介払いできたと思ってるんじゃねーか?

組織がついた嘘ということはわかっている。

でも怖かった。

みんなは家族がわたしを探しているというけど、本当は厄介払いできたと思っていたらどうしよう。

体裁が悪いから心配しているポーズをとっているだけで、いなくてせいせいすると思われていたらどうしよう。

「私は3年前までリディー……トスカの家で暮らしてた」

え?

「事情があって、トスカの家族として暮らしていたんだ、息子として」

ええ?

「瘴気で何かしたのかはっきりするまで、君の負担になることは言わないよう言っておいたから名乗らなかったけど、フォンで君が〝父さま〟と呼んだのが、正真正銘、君の父上だよ」

胸の奥がざわざわする。

「転移でここまで運んでくださったクジャク公爵さま。トスカの親戚で、君はおじいさまと呼んで過ごしていた」

口がふるふると震える。目が熱くなる。

この気持ちは何だろう?

怖いから近づきたくない。でも目が離せないような。

あ、わたし……。

「わたし、会いたい。家族に会いたい……」

気持ちを言葉にすると、多分〝会いたい〟なんだと思う。

どう思われているかはわからないけれど、わたしが会いたい。会ってみたい。

フランツが頭を撫でてくれる。もふもふやぬいたちがわたしの目からでた滴を舐めとってくれる。

「それでは善は急げだ。クジャク公も待機してくださっている」

ロサが立ち上がる。

「そういえばここはどこなの? ぬいたちがお城って言ってたけど」

涙を拭いて尋ねれば、ロサはクスッと笑う。

「あってるよ、ここはユオブリアの城、王宮だ」

「えーーーーーー?」