軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第792話 敵影⑥お前もな

「焦ってないようだね、想定済みか。その賢さ、それで君、目をつけられちゃうんだね」

お前もな。

ナムルは首を傾げた。

「痛むの?」

喉に手を置いていたからだろう。

領地に溢れる魔力で喉を治していたのだ。家族に跡を見られたら、とんでもないことになる気がするから。

「いいえ、気になってしまっただけ」

「小僧、調子にのるなよ。そこの女が謝らなかったら、この小屋ごとズドンだ」

「謝っても、最初から助ける気なんてサラサラないでしょう?」

「どうかな? 謝ってみればわかるんじゃないか? 店、従業員、客、周りに甚大な被害があっても、お前が死んでいれば家族もできそこないのお前が起こしたことだと周りも納得するさ」

「残念ね。フォルガードの店にも速配できたものを開けたりしないように言ってあるわ」

ヴェルナーはにやらぁと笑った。

「ガキだな。そんなわかりやすい方法を取るわけないだろう? 客だよ。客が運んでくる。ドナイ侯の孫娘だ。お前の店に興味を持っていたらしいからな。優待券を送ってやったんだ。代わりに店に渡すものを預けてな」

優待券……海外で店出すとそんなサービスあったな。それを配ってお客さまを迎えることができるのだ。そのための券。コネがあれば、お得意さまに配ったうちの1枚を手にすることぐらいできるだろう。

それもドナイ候の孫娘。彼女に魔石を持たせたのなら、箱を開けたとたん、そこにいる彼女も吹っ飛ぶ。ドナイ候への復讐も込めている。

そうして同時にシュタイン領内でオーナーであるわたしが死亡。

ミニーとアプリコットに顔を見られたおびき出した奴らを犯人に仕立て上げるつもりだったんだろうけど、今はナムルという指名手配犯もいる。

ナムルに全て罪を押しつければいい。

自分は素知らぬ顔をするだけ。

わたしは耳を押さえる。

「父さま、聞こえた?」

「ああ。連絡済みだ」

小屋の中にも父さまの声が聞こえて、ヴェルナーは怯んだ顔をした。

ハウスさんとの連携なめんなよ。

この小屋での会話はハウスさんを通して、父さま、アラ兄、ロビ兄には聞こえるようにしてもらっている。

小屋の側面がいきなりなくなる。

アラ兄とロビ兄だね。

もふさまが真っ先に飛び込んできた。

「ミニーたちは?」

『町外れの家にいる。夫人に任せた』

よかった。無事にウチに入って、母さまといるのね。

ミニーたちを脅したふたりも、ヴェルナーも、双子兄、そして衛兵たちにひっ捕らえられた。

「なるほど。舞台は整えられてたってわけか」

ナムルが言った。

「わからない点があって、こうするしかなかったの。巻き込んでごめんなさい。明日、話しましょう」

「そうだな。私はひとまず退散するよ」

「さっきはありがとう」

「……君が素直だと、なんだか怖いね」

「なぜ、私を捕らえる? 私は何もしていない!」

「フォルガードの騎士団がドナイ候の令嬢を保護した。同時に令嬢が店に渡すよう指示された魔石も魔法士が無効化をして確保したそうだ」

父さまが教えてくれて、はーと長い息が漏れる。

フォルガードの騎士団もやるね、素早い!

隣を見るとナムルはいなくなっていた。こっちも素早い。

「私はこの娘が私との婚約を諦められずに問題を起こしてくるから、ちょっと強めに抗議をしにきただけだ!」

「すべて、録画してありますから、証拠を提出しますわ」

ヴェルナーは大きく見開いた目を、ギョロっとこちらに向けた。

「そんなものはなー、証拠にもならねーよ。お前を恨んでいるのは私だけではない。私はその企みを知っていたから便乗して、問題を起こさないよう釘をさしにきただけだ」

グリットカーさんがした最初の言い訳にそっくり。

「あなたの敗因は、自分と違う人の気持ちを考えようとしなかったところですわ」

「何を言っている?」

「あなたの嫌らしさなんて、山崩れを起こしたことで身にしみました。

あなたがイケすかない人だってわかっていたんです。そんな人を野放しにしておくわけないでしょう? 〝ゴチスの酒をロックで〟」

わたしは闇ギルドの合言葉を呟いた。

ヴェルナーがやっと顔色を悪くした。

「あなたが入っていくときは荷物を持ってなかったのに、出てきた時は箱を持っていた証拠の映像がありますわ」

ヴェルナーは青い顔でニタリと笑う。

「箱の外側に、何が入っているとでも書かれていたのか?」

「ふふ。種明かししますと、もうギルドの方、つかまっているんですよ」

「ば、馬鹿馬鹿しい。私は関係ない」

「そうだと良かったですね。優待券は足がつきやすそうですし。だって枚数が決まってますから、調べれば誰がどうやって手に入れたかわかりますもの。

無効化されてはいますけれど、ドナイ侯令嬢に送られた魔石、確認が取れたみたいです。ギルドが作ったものだって」

「わかるわけないだろう? 名前が書いてあるわけじゃあるまいし」

「正解です。サインがあったそうですよ、製作者の」

「ば、馬鹿な!」

「あのギルド内で作らされていた人のサイン入り。ギルドの人もあなたからの依頼を受けて、渡したと供述しています。もっと前にね。そのギルドで依頼があり作らされ渡したサイン入りの魔石が、あなたの供述通り、ドナイ侯令嬢がお持ちでした。前も依頼したそうですね。山崩れの時と時期がぴったり」

「嘘だ! 嵌められたんだ!」

「あれ、制作していた人たちは、ギルドの人に無理やり作らされていたんですよ。サインを入れ、悪いことに使われたら、共犯として罰を受けることになるかもしれないのに、それを許諾したんです。自分の力を、悪いことには使いたくないからって覚悟を決めてね。

あなたも、覚悟なさい!」

『リディアかっこいいぞ』

『リー、いいぞ』

『粋ですねぇ』

『当たり前だ、リディアだからな!』

「リー、喉、大丈夫か?」

「ええ、大丈夫よ」

ロビ兄に答える。

「ハラハラしたよ」

「わたしも」

「みんな騙されるな。この娘は犯罪者を匿っているんだぞ」

おお、そうきたか。

ーーハウスさん、眠らせて。

ヴェルナーはコテっと眠った。