軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第766話 〝待つ〟を使う⑥修正

大幅な計画修正をすることになった。それも縮小される。

他国の王子殿下に情報が渡されてしまったら、証拠を得るのは難しい。それがみんなの総意で、その可能性が高いとみている。

できることといえば、わたしたちが山崩れに巻き込まれても無事だったと姿を現すことだけだ。

処分できたと思っていただろうから、そうじゃなければヴェルナーが焦るだろう。

それと、アラ兄から仕事にあの魔具が必要なんて、なぜ嘘をついたんだと尋ねられるのを、ドナイ侯が嫌がる。それぐらいかな。

ただドナイ侯はかなりの狸だから、どんな切り札を掲げてくるかわからない。だから次の一手が見えるまでアラ兄、重症説でいくことにした。

なぜ無事だったことを連絡しなかったかと言われると思う。その理由はこうだ。

わたしたちは傷を負い、なんとかこの村に辿り着いた。

すぐに意識を飛ばしたので、村の人たちも看病しかできなかった。年老いた人ばかりで外との連絡を取らない閉鎖的な村なので、山崩れがあったことも知らなかった。

起きられるようになり、そして、グリットカー氏と失敗した時要員の人から話を聞いた。わたしは狙われていたのだ。山崩れを起こさせるような人だ、生きていると知られたら何をされるかわからない。怪我をしている時は尚更、と無事を知らせなかった。

わたしたちは少しずつ元気になったが、未だアラ兄だけ意識が戻らない。

道が復旧したので、秘密裏に家に連絡をし、クジャクのおじいさまの転移でみんなを安全なところまで運んだことにする。

そしてヴェルナーを糾弾だ。

ガインにカモミンの幼体を買ってユオブリアに送った証書を手に入れてもらった。ただこの送り先やお金を支払ったのは、グリットカー氏のダミー会社だった。グリットカー氏がヴェルナーからの指示だと言っても、奴が認めるとは思えない。

失敗した時にこれを使えと雇われたゴロツキも証言するとは言ってるけど、ヴェルナーが認めないだろうし、また脅されたり、お金をちらつかされたら、証言を覆すかもしれない。一応、証言は録画しておいたけど、脅迫してそう言わせたのだと逆に言われそうだ。

要するに追い詰めるには状況証拠が甘い。

これでドナイ侯のユオブリアの情報漏洩の証拠も出てこなければ、とんだやられ損になる。

パカラパカラと馬の蹄の音がした。

門のところに集まっていたフォンタナ家の人たちが一斉に膝をつく。

何事?と走っていけば、馬を降りたのはクジャクのおじいさまと父さまだ。

「おじいさま、父さま!」

わたしが駆け寄ると、父さまにガバッと抱きしめられた。

「無事、だな?」

散々フォンで話してはいたけど……。そうだよな。わたしも父さまが山崩れから難を逃れたと聞いて、そしてフォンで話していたとしても、会えるまでやっぱり安心できなかっただろう。

わたしもギュッとしがみつく。

「もふさまが、みんなを乗せて上に跳んでくれたの。だから怪我しなかった。みんなから守ってもらった」

「「父さま!」」

双子がかけてきた。父さまはわたしを離して、アラ兄とロビ兄を同じようにギュッとした。

「お前たちも、無事、だな?」

「大丈夫。もふさまが助けてくれたから」

わたしはクジャクのおじいさまに駆け寄った。

「無事でよかった。山崩れにあったと聞いて、胸が塞がれる思いだった」

わたしはおじいさまに抱きついた。心配してくれたことと、今こうして迎えに来てくれたことをありがとうと思いを込めて。

父さまたちはガーシやシモーネ、ジョインさん、フォンタナ家の人々、それからギルバートの無事を確かめ、子供たちを守ってくれてありがとうと頭を下げた。そして巻き込んで済まないと。

そんな父さまの背中をガーシやギルバートは叩いて応えた。

「やった奴が悪いんだ。領主さまが謝ることじゃねー」

「本当にヴェルナーってのはムカつく奴だ。どうにかしてやらねーと気が済まねーな」

フォンタナ家の人たちはそんな風に笑った。

村の人たちにも父さまはお礼を言って、そしてクジャクのおじいさまの転移で領地の外れの家に戻った。

フォンタナ家の面々はギルバートと一緒に町へと行く。

15人のゴロツキとグリットカー氏は、詰所に突き出す。

母さまに会えばやっぱり泣かれて、わたしたちは心配をかけてごめんなさいと謝った。

エリンとノエルともギュッとしてハンナも涙目で抱きしめてくれた。

わたしたちが護衛のみんなと一緒に町に行かないのは、アラ兄が目覚めていないアピールをするためだ。本来なら一緒に町に行き、報告やらをするべきだから、身内が重症で離れられないのだと思われることだろう。

フォンタナ家であと一人、まだ痛めた足が治らないことにして、あとの人はこの1週間で治ったとした。

ギルド長であるギルバートが戻ったことで、山崩れに巻き込まれたはずの商隊と、護衛たちは無事だったことと瞬く間に近隣へと広がり、兄さまもバイエルン領から馬を走らせてきてくれるそうだし、いろんな方からお見舞いが届き出した。アラ兄だけはまだ意識が戻らないので、手放しによかったとはできず、周りも複雑そうだし、わたしたちも複雑だ。

ミニーや幼なじみたちが、外れの家まで来てくれた。

心配したんだからと泣かれて、困りながら、わたしも泣いてしまった。

ヴェルナーのことは訴える手筈を整えた。あっちは認めないだろうけど。でも、今はこれしかできることがない。姿を現したタイミングで訴えなかったら、後からでっち上げてるって言われる要素になるからね。

王室からお見舞いが届き、ちょっとぶっ飛ぶ。

ロサからの手紙が入っていて、そこに不穏なことが書かれていた。