軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第761話 〝待つ〟を使う①守秘

もふもふ軍団はお屋敷にうまく忍び込めたみたいだ。

わたしたちがテントの中でおしゃべりをしているときだった。家には今は誰もいないとケータイを鳴らしてくれた。

ケータイを持って移動しがなら話してもらうと、周りも見える。

広めの普通のお屋敷に見えた。

机の上にある道具類を見て、アラ兄が魔具を作っているみたいだと言った。

外から音がしたというので、ケータイを切って、隠れてと指示した。

フゥと息をつく。

『あやつらは素早いから見つかることはない』

もふさまが、わたしを安心させるためか言った。

偽名で屋敷を借りて魔具を作る、そこになんの意味があるのだろう。

魔具のことを尋ねようとして、アラ兄を見ると、顔色が青い。急にだ。

「アラ兄、具合悪いんじゃない? 顔色が……」

もふさまとロビ兄が、同時にアラ兄を見上げる。

「本当だ、大丈夫か?」

「オレ……。レオたち、録画の魔具持って行ったよね?」

「うん。……何か気になることが?」

「……そこで作ろうとしているのは、オレの持っている、水路マップを作る時に使う魔具かもしれない」

わたしとロビ兄には、そこでアラ兄が顔を青くする意味がわからなかった。

「……魔具って、見せかけだろ? マップを作るのは、リーのマップを書き写してるんだから」

「ああ、地形のマッピングはね。それにオレの魔具をどんなに調べても、そこからどういう術が組みこまえているかはわからないようにしている」

「じゃあ、何が心配なんだよ?」

ロビ兄がアラ兄に詰め寄った。

「……水路設計をするには、その事前段階でマップにもうひとつ組み込むことがある。それが土地の強度だ」

「土地の強度?」

わたしはそんなのわかるものなのかと不思議に思った。

「部屋の隅に何種類もの鉱石があった。土地の上の方は柔らかい茶色い土、粘土質の赤土それもいくつも種類がある。そしてその下が土だけなのか、石があるのか、それはどれくらいに広がっているのか、石だとしたらどれぐらいの強度のものなのか、水路を整えるにはそこも大事になってくるんだ」

あ、確かに、ここに水道管を通そうと掘ってみたら、とても管を通す穴を開けられないような鉱石があったら困るね。そういうのを事前に調べていくのか。それで何メートル下なら通せるとか不可能なところを避けたりして設計図を作ることが望まれるってわけか。

「土魔法とオレのギフトとスキルでそれは測ることができるんだけど、……オレ、それを測ることのできる魔具を作ったんだ」

アラ兄の告白に、わたしたちは一瞬言葉を忘れた。

「スッゲーじゃん!」

「すごいよ、アラ兄! ギフトやスキルを術に組み込めたってこと?」

とわたしたちは感心し喜び讃えた。

でもアラ兄の表情は暗いままだ。

「あ、ありがとう。オレのギフトでやっているってことにしているから、バレてないと思ってたんだ。魔具で強度を測ってるって。土魔法を使える人や、鉱石系のスキルがある人は今までも地道にやってきた作業だ。ただ魔具を使うとかなり広範囲を一瞬にして調べることができる。……マッピングと結果をくっつけたもの、それから設計図を書くにはたっぷり時間をもらうようにしているから、バレてないと思ってたのに……」

「いや、だからさ。たとえ、アランの魔具を魔具技師が手にしたって、中の回路がわかることはないんだろ?」

「ああ、スキルを埋め込んだようなものだから。偶然できたようなものだし。上級鑑定士だったら、中の回路はわからなくても魔具ってのはスキルを埋め込むこともできるってわかるかもしれない……」

「すごい、スキルを埋め込めたなんてとんでもないことじゃない?」

「……でも、実際、どうしてできたのか、はっきりしていないんだ」

ごくんとわたしの喉がなる。もし、オリジナリティーが強いギフトを閉じ込めた魔具が作れるとしたら、それはすごいことだ。似たような便利なことを模したものはもうあるだろうけれど。たとえば転移を魔具にできたら……。

もう転移門として、魔具よりずっと大きいもので、術式の場を作った場もすでにあるけれど、個人として転移の魔具を持てたら、それはもう、すっごいことだし、かなり欲しい魔具となるのではないだろうか。

ギフトやスキルを魔具に入れ込む、その技術が確立させられたら、それはもうそのやり方を知りたいだろうし、もしできたら、……悪いことに使われる魔具もでてきちゃうだろうし、アラ兄しかできないことなら、アラ兄の争奪戦が起こるのではないだろうか?

「ドナイ侯と技師たちは、スキルを埋め込んだことには気づいてないと思う」

「じゃあ、何に気づいたってんだよ?」

ロビ兄が首を傾げる。

「ユオブリアの地下にある鉱石の数は、果てしなく多いわけではない」

「そうなの?」

「だから術式をまとめるやり方を思いつけて、鉱石を導き出す式に思い当たれば、オレの持っている魔具と似たものを作れてしまうかもしれない」

「……そのアランの魔具は、今どこにあるんだ?」

アラ兄は収納袋を持ってきて、この中にあると魔石を出した。

「その魔具なら、誰が使っても土地の強度ってやつが丸わかりしちゃうってわけか?」

アラ兄は口を噛み締めて頷く。

「ちょっと待って。その魔具はここにある。ドナイ侯関係者がアラ兄の魔具の性能に気づいていたかもしれなくて、似せて作ろうとしているかもってことだよね? できちゃ困るのなら、アラ兄の魔具で登録しちゃえば? そしたら作れないよね?」

「リー、アランの気にしているところはそうじゃない。スキルを埋め込めるのもやばいことだろうけど、それよりも今アランがまずいと思っているのは……」

ロビ兄は、アラ兄に向き直る。

「強度がわかるのはヤバイことなのか?」

「……水路の設計に資格がいるのはそのためだ。守秘義務を徹底させるためってのが1番の理由だと思う」

守秘義務の徹底……。

「正確な地図はもちろんだけど、土地の強度、地下の具合を知られてしまったら、……どう他国に落とされるかわからない」

「強度がわかると、踏み込むのに有利となるの?」

いまいちピンとこない。

「攻め込もうと思ったところの土地の状態を調べられて、そこに弱点があったとしよう。水はけの悪い村、そこをまず落とそうとする。戦うとしたらある程度の人数が必要だけど、水はけが悪いことを利用して、土魔法で囲い水責めにする。少ない人と最低限の力で、落とすことも考えられる。

地図もだけど、土地の強度も秘することなんだ」