軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第732話 眠れる獅子①理不尽な謝罪要求

エリンからダンジョンに行こうと誘われ、わたしは断った。

父さまに話すことがあり、時間を取ってもらっているし、その後からダンジョンに行けないこともないけれど、連日のようにダンジョンに行って疲れていたからだ。

それが失敗だったーー。

アダムは情報屋を続けてくれている。ウチにも影響がありそうな情報を掴むと教えてくれるので、とても助かっている。

昨日ダンジョンに行った帰りに、アダムが教えてくれたこと。セイン国のある貴族がおかしな動きをしていると。

2年ぐらい前、セイン国とホッテリヤ国は同時に、世界議会からの監査が入った。それぞれの国でいろいろやらかしていて、国際法も侵していた。ワーウィッツを乗っ取る気でいて、それは神聖国を興したかったからだということもわかった。被害にあいそうになっていたワーウィッツにスポットが当たったが、乗っ取られそうだったワーウィッツはワーウィッツで、神聖国を興せるシュシュ族を絶滅させたこと&毛皮問題でも嫌悪され、結果、この3国は悪評を轟かせた。

元々監査が入ったのは、アダムがタレコミをしたらしい。もちろんいくつもの伝手を使い、ユオブリアからだとはわからないようにしたようだけど。

あちらさんは確証はないがユオブリアがやったのではないかと思ったみたいだ。アダムは 彼(か) の国によくない何かを感じ注視していた。半年ぐらい前からセインに怪しい動きがあった。最初はユオブリアの値崩れを狙っているような、輸入、輸出においての規制だった。セイン国とユオブリアは直接のやりとりはなかったが、ユオブリアの懇意にしている国への輸出物などを規制し始めた。

それだけだったら、わたしたちには話さなかっただろうけど、なぜかシュタイン家に含むところがあるようだというのがアダムの意見。

で、その話をしたら、父さまがウッドのおじいさまからきた手紙を見せてくれた。

今、ホリーさんと二人三脚でやっている商会部門は、ウッドのおじいさまにも様子を見てもらっている。わたしの経営する店が増えた。学生にはまだその数は荷が重いだろうと、総括をかってでてくれたのだ。

報告をあげ、ウッドのおじいさまに見てもらい、調整し、もし大問題が出てきたら、おじいさまが対処してくださる。今までは見てくださることになった発端の、ペネロペ裁判ぐらいしか問題らしい問題はなかったけれど、ウチの店に攻撃をしようとしているんじゃないかと感じる何かがあったらしい。

一瞬セイン国がもう仕掛けてきたのか?と思った。

そんな時にアルノルトからの伝達魔法が届いた。ドナイ侯爵とモーリッツ伯爵から王都の家へやってくる先触れがあったと。

内容はこの間の舞踏会で、恥をかかされたとしてモーリッツ伯爵が怒っている。それを宥めているのがドナイ侯爵で、本来なら謝りにきてもらうところだが、こちらが行ってやるから謝罪しろみたいなことが書かれていた。……しかも下の双子のことをチラつかせている。

「父さま……?」

無言になった、父さまの顔を見上げて、わたしは息をのむ。

父さまはハウスさんとドロシーに双子の居場所を尋ねた。

ドロシーから映像がきた。

双子は商人みたいな人たちについて、町から出ている。……領地から出たんだ。

双子はダンジョンでも魔物を狩れるぐらい強いし、魔力もたっぷりとある。それに知らない人についていくような馬鹿でもない。

……ということは、わざとついていったとしか考えられない。

父さまは念のため、エリンとノエルへ至急家に帰れと伝達魔法を送った。でもブロックされて手紙は戻ってきてしまった。

これは……領地を出るまでは無事だったから、その後に魔力封じの魔具をつけられたのかもしれない。

スーッと冷気のようなものが、父さまから流れてくる。

もふさまも、父さまを凝視している。

もふもふ軍団も口をつぐむ。

完全に怒っている。超、怖い。めちゃくちゃ怖い。

「アランをここに」

父さまが低い声を出した。

ハウスさんが請け負ってくれる。

2秒後、アラ兄がシュッと部屋の中に現れる。ハウスさん、すごい。父さまの本気度を受け取って、呼んでくるのではなく、移動させてきた。

「父さま、なんでしょう?」

アラ兄もピリッとしている。

「ドナイ侯爵はお前に何を望み、何を言った? なるべく正確に、思い出せるだけ、教えてくれ」

アラ兄は、時系列に沿ってドナイ侯から言われたことを、スラスラと口にした。

また聞きなのに、ムカっともいらっともしたし、とにかくしつこい。断っているのに、また言ったの?と思って頭にきた。

足を組み、一通り聞いた父さまは、アラ兄に確める。

「舞踏会の前日まで、リディーの縁談をほのめかしたことはないんだな?」

「はい、オレのだけです」

「モーリッツ伯のことを聞いたことはあるか?」

「いえ、ありません」

父さまは頷いた。

「ロビンもここに」

2秒後、ロビ兄も父さまの執務室に現れた。

「アラン、ロビン。お前たちの妹と弟が拐われた」

ふたりがハッとした顔で父さまを見る。

「……モーリッツ伯が誘拐したんですか?」

「モーリッツ伯が舞踏会で恥をかかされた、謝れと言っている。仲介にドナイ侯が入ってきた。ウチが謝りに行くのが筋だそうだが、ドナイ侯が間に入り収めると言っている。王都の家に向かっているそうだ」

ルームで移動が可能だけど、家族以外はそれを知らない。

ノエルがそちらの手にいるということは、転移できないことをわかっているということだ。そこもいやらしい。

彼らは、王都の家に行ける手段を持たないわたしたちを呼び出した。爵位の上の侯爵の仲介で。そこで王都の家に行けなければ、いくらあっちが勝手にふっかけてきているとしても、こちらの落ち度になる。

恥をかかされたとか、もうそこから訳わからないけれど!

「エリンとノエルが、ふたりの商人風の者たちと領地をでている。数時間しか経っていないから、近くにいるはずだ。アランとロビンはエリンとノエルを迎えに行って欲しい。……絶対に連れて帰れ」

双子の兄はピシッと胸に手をやって

「「はい」」

と声を揃えた。

「手紙にはリディーも一緒にと書いてあるから、リディーは父さまと王都の家に行くぞ」

「はい」

わたしは膝上のもふさまをギュッとした。