軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第717話 デビュタント⑤社交界へようこそ

父さまたちは先に入っていると、会場に向かった。

わたしとパートナーの兄さまは、デビュタントの子たちの控え室に。

中には、ユリアさまとリノ(セローリア公爵令嬢)さまがいらした。

エリーは王宮からの招待状は来なかったそうだ。

ユリアさまはお兄さま、リノさまはお父さまのエスコートのようだ。

他、学園で見知った顔もあったけど、知らないお嬢さまもいた。

ウエイターさんに飲み物を聞かれたけど、断った。

「り、リディアさま、ですわよね? とってもお美しいですわ!」

「ええ、本当に!」

多分、わたしの鼻の穴は膨らんだ。気合を入れて宣伝する。

「今日はRの店の化粧品を使ってますの。どれもとてもいいんですのよ。身体に悪い材料は絶対に入っていませんし、簡単で使いやすいんです。そして自分のお顔をキャンパスにして、自由自在に描けますのよ?」

それには技術がいるが、相談してくれればセズが施す。それを覚えておけば、以降は自分でお化粧ができるようになる。そのサービスもやっていく予定でいる。

きゃいきゃい騒いでいると、横から声がかかる。

「お話が聞こえましたの。そのお化粧品はRの店で買えますの? そんな明るくて可愛らしい紅がありますの?」

「あ、はい。お色も豊富ですよ。そしてぜひ、お化粧の仕方はスタッフから習ってください。お化粧より大切なのはスキンケアです。負担をかければかけるだけ、肌の老化は激しくなるのです。スキンケアをしっかりやっていれば、お化粧を普段していても、健康な肌を保てます」

皆さまパートナーそっちのけで、化粧品に興味を持ってくれた!

話をしているうちに、いつの間にか入場の時が迫っていた。

皆さま、緊張することもなく有意義な話を聞けたと喜んでくださった。

パートナーと手を取り合い、入場する列に並ぶ。

白いドレスといっても、これだけいろいろできるものなんだね。ひとりも同じ仕様のドレスはない。

ユリアさまは袖をふっくらと膨らませたもので、ドレープで裾まで模様が浮き出るようなスタイルだった。

リノさまは少し短めの丈のふんわりドレスで。真っ白のストッキングを履き、真っ白のバレエシューズのような靴がまたいい味を出していた。

今年しかつけられないとあって、4分の3の 娘(こ) がティアラをつけている。

華奢で繊細な作りにしたシルバーの自分のやつが、一番好きだなと思えたので、またそれも嬉しかった。

前の人がパートナーと入場し、扉がまた閉まる。

わたしは目を瞑って、スーハーと息を整えた。

兄さまがギュッと手を握ってきた。わたしが見つめ返した時、名前を呼ばれた。

「リディア・シュタイン令嬢ご入場です」

兄さまの腕に手を添えて、一緒に眩しい光の中へ入っていく。

すっごい、会場キラッキラ! 広い。そして輝かしい衣装と装飾品を纏った人、人、人、人!

いったん足を止めて、拍手をくださっている皆さまに一礼する。そしてまた歩き出す。

父さまだ。アラ兄、ロビ兄。

おじいさま、おばあさまたちも勢揃い。

瞳で挨拶しながら、そのまま歩いていく。

今日、デビュタントで王宮に招かれたのは、27人のなり立て紳士淑女。

そのまま、舞台というか、少し高いところにあるスペースに呼ばれ、陛下から言葉をもらうらしい。陛下の隣りには第2夫人が座っている。

現在の陛下も威圧感があって十分怖いと思うけど、若い時はもっと怖かったそうだ。

というのも、先代の王が病んだのをいいことに、好き勝手する貴族の人たちがいて、陛下が王になった時、一番最初にしたのが、その一斉制裁だったらしい。容赦無く、加担したものは根こそぎ。そしてやると決めたら有言実行。

そのままいったら恐怖政治になってしまうと、とにかくひとりで決めるのではなく相談するようにと、周りが説いた。その甲斐あってか、議会の話を聞いてくれるようになったのに、約2年前の謀反騒ぎで、恐怖政治に戻ってしまったと言われている。議会に話を通すことは通しているみたいだけどね。

わたしの番になった。

陛下が幾分、表情を和らげて言った。

「リディア・シュタイン嬢。社交界デビューおめでとう」

「ありがとう存じます」

わたしはカーテシーをする。

「リディア嬢、妾のお茶会に来ておくれ。その化粧品なるものの話が聞きたい」

周りがザワっとする。第2夫人からも声をかけられるのは、珍しいからかもしれない。わたしの前の人たちには誰も声をかけてなかったから。

「商品のことでしたら、お茶会でなくてもいつでも説明にあがります」

ちょっと苦しいかと思ったけど、ビジネスよーと周りに間違えられないように声高に言っておく。そんな目論見が伝わったかのように、夫人は扇で口元を隠しながら笑った。

「ほんに賢い 娘(こ) だこと。王子の伴侶になってくれればいいのに。けれど、デビュタントとなるこの催しのパートナーを選んできたのだから、 そ(・) う(・) い(・) う(・) ことなのかしら?」

わたしと兄さまは顔を合わせる。

「わたしはいずれ、そうなって欲しいと思っています」

夫人に伝えれば、「そう」と軽く目を閉じられた。

「何はともあれ、おめでとう。ようこそ、社交界へ」

とお言葉をもらった。心を込めてカーテシーをして、下がる。

兄さまがわたしの手を強く握った。

「嬉しかった」

と顔を赤らめるから、わたしも強く握り返した。

壇上から降りていくと、5年生の生徒会メンバーに囲まれる。

「リディア嬢、見違えるほどだ」

「本物のリディア嬢か?」

ダニエルと違って失礼なブライ。

「本当にきれいだよ」

イザークは社交辞令を言う人ではないので、ちょっと嬉しい。

「美しいです。神からの祝福でもあるかのように、ドレスからも神気が見えるようです」

ルシオ、当たってる! そう言えないのでわたしはありがとうとお礼を返した。

兄さまへの挨拶もそこそこに、驚きの声をあげられ、わたしはちょっと注目されていた。

兄さまもみんなと会うのは久しぶり。会話に花が咲く。なんとはなしに聞いていると、後ろから声をかけられた。

「今日はおめでとう、シュタイン嬢」

A組のアルバート・ニヴァ。ニヴァ公爵子息だ。

「ニヴァさま、ありがとうございます。ニヴァさまもおめでとうございます」

男の子の方も婚約者がいれば婚約者と参加する。ただ婚約者は年下のことが多いので、男の子はひとり参加が多い。ニヴァさまもエスコートしている女の子はいないみたいだ。

「とてもきれいだ。美しい!」

普段だとイケメンに褒められても、社交辞令と素直に喜べないけれど、今日は努力したし、自信を持っているので、嬉しく感じる。

「ありがとうございます。化粧品の広告塔なので、今日はがんばりました!」

ニヴァさまはクスッと笑う。

「君の明るくて前向きなところは、こっちまで楽しい気分になるよ」

と嬉しいことを言ってくれた。

「君には幾度か婚姻をと申し込んだけど、相手にされないし。それなのに君のお兄さんたちや親戚や元婚約者から牽制があったけど、今日の君を見てなんか納得できたよ」

え? どういう納得?

っていうか、牽制って何?

ニヴァさまからわたしの婚姻話が来たなんて聞いてないけど……。

「ああ、気づかれた。あ、また学園で。といってもすぐ休みに入るけど」

と、もうわたしから離れようとしていたので、わたしも短く挨拶した。

「ええ、また学園で」