軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第645話 協力者と思惑⑥ガインの情報(後編)

「300年前、魔法が規制されたのをご存知ですね? その原因も」

「魔力の高い魔使いは、魔のある人族も魔で操ることができる、あの論文のことか?」

「そうです。すぐに論文は破棄され、箝口令が敷かれ、魔使いたちは魔力を測られ、魔力が高いものは捕らえられました。けれどその処遇に不満を持つ者も多く、細く長く論文の検証は行われてきたようです」

「それは魔法で人を操るという目的ということですね?」

アダムが確かめる。

「最初はどうだったのか知りませんが、テイマーが人をも操る、それに憧れた人が少なからずいたのは確かです」

……倫理的にはナシだけど、最初に聞いた時、もし自分がテイマーだったなら、試したくなる人はいるだろうなーって、わたしも思った。人を操ってみたいというより、本当にそんなことができるのかという好奇心で。自分の持つ能力の可能性を知りたくて。

やはりみんなが危惧して規制を引くようなことが、表面には出ずに受け継がれてきたんだ。呪術と同じように。

「それが、テイマーだけでなく、ある〝物〟を使うことで人を操る研究に移行していた」

え、テイマーだけではなく、そして魔法ではなく、〝物〟にその魔力を閉じ込めることができたってこと?

「その〝物〟というのが、どういう〝物〟なのかは、まだわかっていません。それから、操るからさらに発展し、身体を乗っ取ることができるような、話ぶりでした」

「にわかに信じがたい」

「そうでしょう。でもだからこそ、荒唐無稽なあの噂の意味がわかりましょう」

荒唐無稽な噂?

わたしのだよね。わたしがメロディー嬢をけしかけて、失脚させたってやつのことだよね?

「君は彼女が私の前に姿を現す時、全く違う彼女になっていると言った。その意味か?」

「理解が早くて助かります」

え、え、え、待って。

「ちゃんと言葉にして!」

わたしは訴えた。わたしもうっすらそうかなと思えた推測があるけど、怖くて理解が追いつかない。

アダムが解説してくれた。

「呪術師が君を消す。君がメロディー家令嬢を追い出したのだと噂が立つ。民衆が彼女を許す。私は幽閉の決まっている王子。それならせめて、その伴侶に戻してやれと世論が動く。メロディー家令嬢が私と婚約する。でも彼女の中身は、もう、彼女ではない」

「どのように、どれくらいのことでできることなのかもわかりませんが、国家転覆を狙うなら、婚姻したゴット殿下もいつの間にか入れ替わるでしょうね。そうやってじわじわと、いつの間にか全てを乗っ取られている……」

「私は幽閉される身だぞ?」

「中身が変わり、幽閉の道を取らないことも、できるじゃありませんか。どう乗っ取れるのかわかりませんが、身体に接近しないとできないことなのでしょう。もしあなたを乗っとることができれば、あなたが接近できる王族、それから議会のトップなど、いいように仲間を乗っ取らせていくでしょう」

嘘でしょ。ちょっと大事すぎる。

もし簡単に入れ替えられる〝物〟なら、もうこの国にどれだけ入れ替わった人がいるのだろう?

「簡単に信じていただけませんでしょうが、その知識がないと、リディア嬢を守りきれないと思いましてね」

「信じるよ」

「え?」

「符合するから」

アダムはキュッと口を結んでいた。

「それでガゴチとしては、どう参戦する気でいたんだい?」

「リディア嬢との婚約という名の保護ですね。そして〝物〟を利用して乗っとる考えの集団は仲間割れをさせ、自滅に向かわさせるつもりでした。ただ、リディア嬢を保護できなかったので、私はしばらく謹慎させられると思います」

アダムはちょっと考える仕草をした。

「なるほど」

「まさか手放しに信じてもらえるとは、思っていなかったです」

「いや、手放しには信じていない。ただ符合することがある。そこは信じる」

「それでこそ、任せられます」

ガインはほっとした表情を浮かべた。

「(ガイン、ありがとう)きゅ、きゅきゅっきゅ」

ガインはもふさまの通訳を聞くと、もふさまの方に向かい胸に手をやり、頭を下げた。

「リディア嬢、ウチの国は、いつでもあなたを歓迎します。あなたが何回婚約を破棄されていようとね」

「(一言多いのよ! 見直しかけていたのに)きゅっきゅ! ぴぴぴぴぴっぴ」

もふさまが、そのまま、伝えてくれた。

「ハハ、元気そうで何よりです。忘れないでくださいね。私はあなたを歓迎するということを」

そう言ってから、気持ちを切り替えるように、アダムに向き合う。

「リディア嬢に関連することは、今後もわかった時にお伝えします。信じるも信じないも自由ですが、今、彼女を守れるのは、現婚約者のあなただけだ。あなたがどんなふうに守るのか、しかと見せていただきますよ」

ガインたちが出て行ってからも、アダムはしばらく立ち上がらなかった。

手を組み、そこに顎を乗せ考え込んでいる。近寄りがたい雰囲気で、声をかけ辛い。おとなしくしていた。

なーご、にゃにゃにゃん

身を大きく震わせてから、前足を伸ばし、次は後ろ足を伸ばしてと体を伸ばしたソックス、大きな鳴き声をあげた。それでアダムが覚醒する。

「あ、ごめん。ソックス、大人しくしていてくれてありがとう。帰ろうか」

アダムはソックスを抱き上げ、もふさまを促した。