軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第640話 協力者と思惑①食事会

兄さまが押し黙ると、アダムは言った。

「味方同士の誤解で、すれ違っていくことが一番怖い。誤解を生まないために、全てを打ち明けることがいいと、私は思っている。少しわかったことがある。辛いことと受け取れるかもしれないが、言っておくよ。

例の土地活用の作文、コンクールの主催はフォークリング社だった」

あ。

そういえば、ヤーガンさまは本を出すオファーがあったことを知っていた。フォークリング社をヤーガン公爵が支援しているって言ってたっけ。

……パーティーを開くといったのはウチの親戚だったけど……、もうそこから兄さまに近づくために仕組まれてたんだ。

そりゃ、親戚の後ろ盾を狙って、わたしの物語を本にしてくれると言ってるんだと思った。でも、それさえも違ったんだ。

目的は恐らく兄さまに近づくため。兄さまをひとりにするため。

「(兄さま、ごめんなさい)きゅきゅ、きゅきゅきゅっ」

「お嬢さまは、何も悪くありませんよ」

もふさまが訳す前に、兄さまに言われる。

でもわたしが、兄さまを悪者にしようとしている人を近づけたんだ。

「泣かないで」

兄さまの親指が、わたしの目の下の滴を拭き取る。

干からびるんじゃないかと思えるぐらい、涙が止まらなかった。

ご一家との食事会。

トカゲでの参加となるので最後まで迷ったが、どんなことが話されて、どんな雰囲気だったのか知っておいたほうがいいと思ったので、ソックスに張りついていくことにした。

荘厳な雰囲気の中、食事会は始まった。

といっても、話すのは陛下と、第2夫人と、父さま。時々アダムへと話が振られる、それぐらい。胃が悪くなるような食事タイムだ。こんなのにひたすら耐えているんだから、王族って忍耐強くないとダメだね。

食事は全てその場で鑑定してからとなり、どんどん冷えていく。3人の鑑定士が控えていて、運ばれセッティングされたものをどんどん鑑るんだけどね。

猫舌のソックスにはちょうどよかったみたい。ウニャウニャ言いながら機嫌よく食べている。ソックスはなんと王族と同じテーブルにお皿を置いてもらっている。こんな扱いをしてもらうお猫さまはソックスぐらいだろう。

もふさまは床にお皿を置いてもらっている。てんこ盛りの肉のマウンテンだ。

わたしは帰ってからご飯だ。

第2夫人は父さまに、親戚となったのだからと盛んに枕詞を使うので、ちょっと怖い。

やっとデザートまでが終わり。

退出しようとしたときに、それは起こった。

「猫ちゃん!」

それまで恐る恐るもふさまを撫でていた一番下の王女さまが、床にトンと降りたソックスをむんずと抱き上げたのだ。

驚いたソックスはギャギャギャと騒ぎ、王女さまの手をすり抜けて、部屋を駆け回った。

「リディアさま、申し訳ありません!」

王女さまのお母さまである第5夫人が、頭を下げている。

「フローリア、猫ちゃんではありません、お義姉さまですよ」

夫人がフローリア王女を捕らえた。

「(ソックス、大丈夫よ、落ち着いて!)きゅきゅっきゅ」

小さい声で語りかける。

その時、ドアが外側から開いた。その隙間をソックスが駆け抜けた。

えええええええええっ。

「(もふさま!)きゅー」

『リディア!』

「リディア!」

「リディア嬢!」

「リディア嬢!」

「リディア嬢!」

いやーーー、ソックス止まって。

『リディア!』

「もふさま〜!」

もふさまが追ってきている。

『ソックスよ、止まるのだ』

ソックスはスピードを緩めず、廊下を右に曲がった。

うぉーい!

スカーフに捕まっていたけれど、遠心力に引っ張られて、わたしは飛んだ。

壁に当たることを覚悟したが、窓が開いていたので、そこから外へと放物線を描いて落ちた。

トカゲの姿だったから怪我はしなかったものの、花壇のようなところに落ちていた。

うう、どうしよう。

もふさまはそのまま、ソックスを追いかけて行っただろう。けど、追いついて、わたしがいないとわかれば、その間のどこかで落ちたのだと探してくれるはず。魔力が低下しているから見つけにくいだろうけど、必ず見つけてくれる。

廊下を走る音が聞こえる。鳴いてみたが、気づいてもらえなかった。

寒いし、心細い。

「この辺りですね、不可思議な気配が」

誰か、複数の人が近づいてくる?

わたしは隠れるように、葉っぱの裏側に張りついた。

「俺たちの気配は消してるな?」

なんか聞いたことがある声だ。

「声で気づかれたら姿が見えてしまいます。ユオブリアは、魔力を多く使えば引っかかりますから、そういった魔法を使うのは得策ではありません。気配を消すぐらいにしておかないと」

「何もないぞ」

「おかしいな。第1王子殿下についていたのと、同じ気配がするんですが」

「猫か? 猫は居そうもないが、もっと小さなものが潜むとしたら、葉の裏側か?」

声と一緒に草が左右に分かれ、手が入ってくる。多分膝を地面につき、覗き込んできたのは、銀の短髪のガインだった。

「トカゲだ。目の大きい」

手が伸びてきてつかまれる。

「(やめてーーー)きゅっ」

「お、鳴いた。抵抗してるぞ」

「若、見せてください。仲間に似た匂いが」

仲間?

ジタバタするわたしを持って、あ、お付きの青髪さんに突き出すようにされた。

青髪はわたしに鼻を近づけて匂いを嗅いだ。

トカゲの匂い嗅いでる。スッゴイ嫌なんだけど!

「(嫌、変態!)ぎゅぴっ、びー」

「若、やはり第1王子殿下といたものです」

ガインはわたしをつかんだまま、じっくりとみてくる。

「なるほど」

「何か、わかりましたか?」

「猫に変化したとは嘘だな」

「嘘? そんな誰の得にもならないような嘘をついて、何がしたいのでしょう?」

「君、リディア・シュタインだろ?」

え?

わたしは固まった。