軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第567話 記念パーティー①華やかな宴

「兄さま、このテーブルクロスにしていい?」

「ああ、いいね。部屋が明るくなる」

兄さまの別荘の中を整える。兄さまは本棚を整理していた。

部屋に置けなくなった本を持ってきたようだ。

雪が降って家の中に閉じ込められるようになってから、わたしたちは各別荘を居心地よくすることに力を注いだ。外に出なければみんなで一緒に行動しなくてもよくなったから、各自張り切っている。

エリン、ノエルも支援団体の手伝いや、それから工場の経営などでお小遣いが増え、買い物もできるようになったので、別荘の中を充実させられると、はしゃぎまくりだ。

わたしは自分のところはとっくに終わり、今は兄さまの別荘に口出し中だ。

これで外に出られたら最高なのに!

外国だよ、外国!

共和国というのも興味深い。

西調べは、アラ兄とロビ兄の護衛付きで、ガスダフの町には行ったけれど、そんな人は見かけなかったし、覚えている人もいなかった。残念だ。

「そういえば……バイエルン家のことは、何か進展あった?」

聞きにくいことだが、思い切って聞いてみた。

兄さまは、遠くを見てため息を落とす。

「メラノ公のことを今調べている」

「メラノ公っていうと、エレブ共和国のグレーン農場を買い取ったっていう?」

兄さまが頷く。

「何かありそう?」

怪しいのは怪しいんだよね。キートン夫人たちを陥れようとしていたのは、あの農場にいる誰かだ。その人たちと、兄さまの生家であるバイエルン家と繋がりがあったかどうかはわかっていない。

「まだ、なんとも言えない」

そっかー。

兄さまは声の調子を変えた。

「あ、リディー、生徒会の方々は殿下をはじめ、みんな来てくださるそうだよ」

「ほんと? わたしは皆さまの家のパーティーに行かないって断ったのに……優しいなぁ。兄さまが招待客の手配してくれてたのね?」

兄さまはくすくすと笑う。

「ウッドのおじいさまに、これぐらいやるように言われてね」

わたしたちは顔を合わせて笑い合う。

兄さまはおじいさまたち(前ランディラカ辺境伯)に断ってからだけど、親戚の方々に自分の出生のことを告げた。他の皆さまは、兄さまを受け入れてくれたけれど、ウッドのおじいさまだけが反対した。

だからって告げたりなんだりすることはないが、やはりバレた時罰せられる存在なのが問題だと。それで身内とは自分は認めないと言われたんだけど、なんだかんだ兄さまに仕事を持ってくるのだ。ちょっとしたお使いから、立案なども。いろんな分野の様々なことを任せてみて、想像以上に兄さまがいい結果を出してくるので、面白くなっている感じだ。それじゃなくても、兄さまもすでに仕事を持っているので心配になってくる。

「オーバーワークなんじゃない?」

「オーバーワークって?」

「働きすぎってこと」

言葉を探して伝えると、兄さまはくすりと笑う。

「それはリディーだよ。また仕事を増やしたって聞いたよ」

「ホリーさんのご褒美だから。けど、案はできているから、大したことはしてないよ」

ホリーさんは、ほぼダブルワークだ。ランパッド商会の北支部長としてシュタイン領を拠点としている。

最初はランパッド商会のひとつの部署という扱いでRの店を展開させてもらっていたが、収入が高くなってきたことから、独立させた方が双方にとって良い結果になるだろうと、庇護下から降りた。けれど、いくつかの商品を今まで同様ランパッド商会からも流通させることを条件に、ホリーさんに相談役を続けてもらっている。これを許してもらっているのも、かなり特殊なことだという。だから食品やどうしてもという物以外は、ランパッド商会さんに扱ってもらっている。

「私のことでも、……気を使わせてしまったね。驚いたよ」

兄さまは、わたしに見せるように髪をかきあげた。

「何があるか、わからないから。でもピッタリのものができてよかった」

「リディー、ありがとう」

わたしは首を横に振る。

そんなふうに忙しくありながらも穏やかに時は過ぎた。

24日恒例の誕生日会も、エリンとノエル主体で難なくこなしている。

町の子と遊んだり、仕事の合間でカトレアやミニーとトークして。家族とは空っぽダンジョンに行って。充実した日々を過ごし、そして年が明けた。

記念パーティー当日。パーティーは午後からなんだけど朝から大変な騒ぎだった。

場所は2区のライラック公爵家だ。クジャクのおじいさまにライラック家へ連れて行ってもらう。楽隊の方たちがもういらしていて、音合わせをされていた。

会場も素晴らしい! だって、ホールの中なのに噴水と池がある! 会場の広さにも驚いたけれど、どこもかしこも磨き上げられていて、お客さまの到着を待っていた。

保安を担ってくれたのはフォンタナ家で、ウチはお料理を受け持った。

ピドリナが一緒に考えてくれて、指揮をとることになっている。ウッドのおじいさまが流通の止まる冬であるのに、最高の材料を取りそろえてくれた。

わたしが到着すると問答無用で一室に連れて行かれ、全身のクリーム塗りから始まり、ドレスに着替え、髪を整え、軽くお化粧をしてと、整えた。

ほんの少しだけひとりにしてもらい、リュックの中からもふもふ軍団を出した。

一見真っ白なだけに見えるドレスは、レースがふんだんに使われている。所々にあるドレープが美しい。レースの飾り編みの部分だけ、微かなグラデーションを狙い、ほんの少し色をのせた糸を使っているので、それが目の錯覚を誘うアクセントになっている。髪にも真っ白のレースのバックカチューシャをして、そこには黄色いレースの花が咲いている。そして胸のリボンは翠の宝石で留めた。

『きれいだ!』

『リー、かわいい』

『リー、よく似合ってる!』

『美しいですよ』

「きれいでち!」

もふさまはなぜかドヤ顔だ。

もふさまも、翠のリボンをしてお洒落をし、もふもふ軍団もみんなリボンを首に巻いている。みんな、お披露目をしてしまいたいぐらいかわいい!

セズが戻ってきて、口紅をもう一度ひいてくれた。

ノックがあり、セズが出る。

「お嬢さま、フランツさまです」

兄さまが迎えに来てくれたみたいだ。

わたしは立ち上がる。振り返ると、兄さまが少しだけ瞳を大きくした。

真っ白のタキシードのような装いだ。そこにプラチナブロンドの輝く髪が美しい。

同じ真っ白のタイに、わたしの瞳と同じ翠の宝石が輝いている。前髪を半分後ろにあげるようにして、かーなーりー、かっこいい!

「リディー、雪の精みたいだ。消えてしまわないか不安になるよ」

わたしの頬に兄さまが手を寄せる。

コホンとセズが咳払いした。

もふさまのリュックの中からも咳払いが聞こえる。みんなには兄さまが何をしたか、見えてないはずなのに。まあ、わたし以外聞こえてないだろうけど。

「兄さま、とってもかっこいいです!」

兄さまは微笑む。

「では、リディア嬢、私にエスコートすることをお許しください」

今度はわたしの手を取って、爪の先にキスをした。

まぁ!

いつも見下ろされているのに、そんな風に下からちょっと企むように悪い顔をされれば、ドギマギしてしまう。

「え、エスコート、お願いします」

兄さまはわたしの手を取って、自分の腕に乗せる。

もふさまがわたしたちより先に出て、トテトテと歩き出した。

螺旋状の階段を降りようとすれば、下には多くの人がもう集まっていた。

「さ、リディー、行こうか」

「はい」

わたしはドキドキする胸を押さえて、返事をした。