軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第508話 攻撃④ユニコーンの角

ゲストハウスというから、もっとこじんまりしたのを想像していたけれど、城まではいかないものの、驚くべきかなりの広さだった。その庭園全部をお茶会の場にしているらしい。

馬車から降りて、すぐにお茶会のゲートへ案内される。招待状を渡すと、入るときには名前を読み上げられた。

兄さまのエスコートで、顔に笑みを張りつかせて歩いていく。

生徒会3年生メンバーが集まっていた。

といってもマーヤさまとイザークはいない。

「リディアさま、ご機嫌よう」

アイボリーさまは真っ赤なドレス。マーメイド型でウエストの細さが際立っていてその上エレガント! 真紅が似合う方だ。

「アイボリーさま、ご機嫌よう」

ダニエル、ブライ、ルシオに挨拶する。

「イザークは?」

わたしはこそっとブライに尋ねた。

例の魔石の件で港に詰めているそうだ。まだ学生、しかも3年生であり幼いものの、彼は魔力がオーラという形で見ることができる。だからこういった大きな犯罪を見極めるときに、協力を要請されることがあるらしい。

それでこの間もいなかったんだ、納得。

アイリス嬢の名前が呼ばれた。

わたしが入ってきたところとは違う門から現れた。

みんながホワッっと、愛らしい彼女を見ている。

ドレスは淡いピンク色で、彼女をよりいっそう引き立てていて、とてもかわいく美しかった。

子息たちの視線を一気に集めている。

アイリス嬢がわたしに気づいた。

こちらに歩いてくる。

「リディアさま、ご機嫌よう」

「アイリスさま、ご機嫌よう」

少し表情が陰ったのを見て、恐らくわたしに相談することなく話を進めたことがあって、それに気が咎めているんだろうなと思った。

「先日は寮に来てくださったそうなのに、すみませんでした」

水を向けると、彼女は首を横に振った。わたしに何か話したそうだけど、この場で相応しくない話と思ったのか飲み込んだ。

わたしは、皆さまにお見舞いのお礼を言ってなかったことを思い出して、遅ればせながらお礼を伝えた。

「いいや。寒くなってきたし、リディア嬢こそ、身体に気をつけて」

そう言ってからルシオは尋ねてくる。

「君の親戚は女の子が少ないんだよね? 妹さん以外、女の子はいなかったよね?」

「うん。わたしと妹だけよ」

そう言えば、首を傾げている。

「なぜ?」

「君に感じが似ている子に会ったんだ。背丈もちょうど君ぐらいで」

あら。

「へー、教会に来た子?」

ルシオは曖昧な笑みを浮かべる。

兄さまはブライと話している。怪しまれてない。

「リディア嬢が参加なんて意外だな」

ダニエルに言われる。さすが宰相子息。

「ロサ殿下に招待状をいただいたから」

今まで平気で蹴ってきていたので、今更ってバレバレではあるんだけど。

「あ、いらしたみたいだ、失礼するよ」

ダニエルもブライもルシオも入り口の方へと歩き出す。

「ロサ殿下かしら?」

不思議に思うと兄さまが教えてくれた。

「外国の王族だと思うよ。殿下は今日は令嬢たちをおもてなししないとだから、みんなが任されているんだ」

「兄さまも?」

「私はリディー優先でいいと言われているよ」

なるほど。

「まだ始まっていないし、わたしは大丈夫だよ。行ってきた方がいいんじゃない?」

兄さまは少し考えて、じゃあ、とみんなの背中を追った。

もふさまはわたしの隣にピタリと寄り添ってくれている。なので、とても心強い。

あ、ヤーガンさま。

アイリス嬢も取り巻きさんたちに囲まれて話しているし、わたしはヤーガンさまにご挨拶をすることにした。

わたしに気づくと氷の微笑を浮かべた。

「シュタイン嬢もいらしてたのね」

ふと入り口の方を見れば、ご令嬢が入ってくるところだったが、彼女もわたしが入ってきたゲートとは場所が違った。アイリス嬢と同じだ。

「どうかして?」

「いえ。大したことではないんですけど、わたしはこちらから入ってきたんです。ご令嬢たちはそちらの門から入ってきたので、どうしてかと思って……」

「ああ、あなたは婚約者がいらっしゃって候補ではないから、あの門ではなかったのよ」

「……婚約者候補専用の門なんですか?」

「ユニコーンの角と申し上げれば、お分かりになる?」

え?

マジか。候補だってみんな12歳から17歳ぐらいでしょ。

ユニコーンの角で調べたんだ。なんか憂鬱になる。

王族の婚約者候補だもん、条件なんだろう。仕方ないといえば仕方ないけど。

ユニコーンの角の検査といっても痛いこともなんともない。

ユニコーンの角だったものを手にするだけ。

ユニコーンは清らかな乙女が好きだそうで、それ以外には懐かないという。

で、その角にもその記憶が残っているのか、清らかな乙女かそうではないのか判別することができる。つまり、純潔な乙女以外が手にすると、赤黒く光るのだ。

わたしたちが聖女候補として誘拐され、戻ってこれたとき、体調を調べるのと同時にこの検査をする許可を求められた。わたしたち3人はあらぬ憶測で何か言われるのは嫌だったので、証拠として文書に残すその検査を受けた。

大っぴらには言わないけど、何かあった際にはこういったことは調べ、文書で残されるもの。それなので砂漠でわたしが何かされただろうなんて話が出る方がおかしい。調べればすぐにわかることだからね。でもそうやって悪意をばらまく人ってのは、一定数いるものなのだ。

婚約者がいて、本当によかった。もし検査されて、しかもその結果を……故郷にだか帰ったはずだけど、狐なんかに知られた日には面倒なことになってしまう。まさかいないよね、と目が狐を探す。

それにしてもヤーガンさまも候補なんだ。爵位の高い、殿下と年齢が近いご令嬢はもれなくって感じだね。

セローリア令嬢がやってきた。丈の短めのドレスで足を見せている。最先端をいっていて、それがまたおしゃまなセローリア令嬢に似合っている。

「マリーさま、リディアさま、ご機嫌よう」

わたしたちも挨拶を返す。

セローリア令嬢も公爵令嬢だものね。

なんて話していたら。

うわっ、目が合っちゃった。

あー、くる、くる、くる!

『そんなに嫌なのか? 吠えてやろうか?』

お遣いさまモードの大きなもふさまの背中に手をやる。大丈夫という合図だ。

「ご機嫌よう」

わたしたち3人は揃って、恐らくこの会場で一番身分の高い女性である、メロディー公爵令嬢にカーテシーをした。