軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第478話 収穫祭⑧後ろ盾

「あの、失礼ですが、リディアさまではありませんか?」

わたしより少し下かなと思える男の子が、わたしを見上げる。

マップでは青い点だ。

「はい、そうですが」

答えると、隣のおじいさんは口の中でわたしの名前を唱え、聞いたことがあるとでもいうように首を傾げている。

男の子はわたしに正式な礼をとった。

「ワーウィッツ王国、ヒイロ公爵家のセイヤと申します。お見知り置きを」

ワーウィッツ王国ってどこだっけ?

大陸違いの国は、そこまで覚えていない。

わたしは一応カーテシーをして

「リディアです、ご機嫌よう」

と挨拶をした。

あとはお祭りを楽しんでくださいねと結んで離れようとしたのだが、伸びてきた手に腕を捕まれ、変な声が出た。

もふさまが唸ると、冒険者風の成人したてぐらいの、男の人が慌てて手を離す。

「ご令嬢に失礼でしょう?」

セイヤくんと言ったか、灰色の髪の貴族の男の子が冒険者に抗議する。

「ご令嬢? なるほど。かわいい子だから街を案内してもらおうと思ってさ」

ああ、もう全然父さまのスピーチ聞けなかった。

次はお酒を撒くようだ。

「あの、儀式中ですので、お静かに……」

冒険者がわたしの耳に口を寄せる。

「抜け出さない?」

ギラつくような目。わたしの肩に手を置く。

ヲイ。

わたしは手を払った。

マップで目の前の人が赤い点になる。

なるほどね。成人した人がわたしを誘うのは不自然だ。最初からわたしを狙っていたわけね。

「静かに話すのに、向こうに行かない?」

手の動きがおかしい。フォンタナ家の人に見せてもらったことがある。手首のとこに小刀を隠しているに違いない。

風魔法で冒険者の動きを封じる。風の見えないロープでぐるぐる巻きだ。

何か話そうとしたので、口の前にも小さな竜巻をプレゼント。

領地にはわたしの魔力が染み渡り、そして溢れている。

魔法を特に使おうとしなくても、指を動かすのと同じように、かなりなんでもできる。〝危険〟を感じた時は、領地で魔法を使っていいと、父さまから許されている。わたしの領域で、好き勝手はさせないよ。

さて、衛兵のおじいちゃんを呼んで、と、キョロキョロすると、フワッと抱き上げられた。

クジャクのおじいさまだ。おじいさまが合図すると、衛兵のおじいちゃんがやってきて、冒険者を捕らえた。風の戒めを解除する。捕まえられながら荒く息をしている。

「大丈夫か、リディア?」

「クジャクのおじいさま」

おじいさま、わたしを抱えられるなんて、なんて力持ち。

「何すんだぁ!? おい、お前、何した? お前、魔法を使っただろう?」

冒険者が暴れている。

「儀式中です、お静かに。わたし、そう申し上げましたよね?」

ちろっと冷たい目を向けると、冒険者の赤らんだ顔がスーッと冷えていく。息のできなかった苦しさを思い出したのだろう。

「なんだ、魔力の少ない出来損ないって聞いたのに、何しやがった!」

ったく、うるさいと言ったのに。

ほら、儀式が中断されてしまったじゃないか。

あ、父さまがこっちに来る。

「ウチの領地で、娘を出来損ない呼ばわりするとは! 娘に何をしようとした? お前を調べ尽くす。そしていいか、二度とシュタイン領に足を踏み入れるな!」

父さまが通る声で宣告した。

あーーーー。

バレると大ごとになると思ったから、穏便に済ませようと思ったのに。

「なっ!」

「領主さまはキチッとした方だけど、家族に害を及ぼすものには容赦ないからねー」

「あの人、知らなかったんだね」

こそこそ話しているのが聞こえる。

そう。父さまは話がわからない人じゃないけど、家族をたとえ言葉であろうとも傷つければ、理性がかなり吹っ飛ぶから。

「それから、クジャクの名が通っているところも行くではないぞ。お前の顔と名前は伝えおくから。ウチの大事なひ孫に害をなす者は許さない」

「グリフィスの名も避けるが良い。容赦しない」

「ライラック領からも締め出す」

短くひいじいさまが言った。

「ウッドの名を恐れろ。ウッドは至るところにいるからな」

ドスのきいた声に思わずビクッとしてしまった。

ウッドおじいさま、イカす。

本当はおじいさまだったり、ひいおじいさまだったり、ひいおじいさまでなかったりするんだけど、呼ぶときは皆さま全て、おじいさま、おばあさまと呼ばせていただいている。

一際大きな声でクジャクのおじいさまが言った。

「いい機会だ、伝えておこう。クジャク公である私が、シュタイン家の子供たちの後ろ盾になる。何やら貴族が多く来ているようだが、シュタイン領に我らがついていることを忘れるな」

睨みをきかせた。

クジャクおじいさまも、かっこいい!

さっきわたしに、エリンのことを聞いてきたおじいちゃんは、顔を青くしていた。

おじいさまはわたしをエリンの隣に運んだ。

「姉さま、大丈夫?」

「大丈夫よ」

おじいさまたちにもお礼を言う。

儀式は再開され……、視線を感じて見ると、ペリーが透き通ったような水色の瞳でわたしを見ていた。目が合うとニコッとしたけれど、それが取ってつけたものだってことはわかる。

祭壇にお酒を撒きまくり、祭壇の周りを踊りながら回る。

5歳から9歳までの子供たちが、それぞれに着飾られた服装で練り歩く。

そう、この豊穣を祝う踊りってダンスなんだけど、盆踊り系の練り歩くやつなんだよね。子供たちの演技が終わったら、コイタさまを撒きまくるのだ。これを手にすることができると、今年も豊穣を約束され、お金にも困らず豊かに暮らせると言われている。

一連の儀式が終わると、あとは踊ったり屋台を楽しむ。

「お嬢さま!」

「ミニー」

みんなそれぞれ友達と屋台を回ることにしているみたいだ。

わたしは兄さまとミニーとビリーとで回ることにした。

「ご一緒していいですか?」

首を傾げニコッと笑ったのはペリーだった。

ミニーが固まる。

わたしは収穫祭が終わったら学園に戻る。

これからもこの子ミニーに突進していきそうだな。

「わたしはいいけど、みんなもいい?」

わたしはにこっと笑ってみせる。

ミニーも顔を強張らせていたけれど

「あたしもいいよ」

と言った。

「女性陣がいいなら、私たちは逆らえません」

茶目っけたっぷりに言って、兄さまはビリーの脇を突いた。

「あ、ああ」

ビリーだけわかってないようで、不思議そうに、わたしたちの顔を交互に見た。