軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第379話 命令系

今日は魔物狩りだ。

参加者は56人。プラス、わたしたち兄妹6人と、冒険者ギルドと警備隊から8人。

げっ。ギルバートがなんで来てるの? 副ギルド長の役職がある偉い人は来る必要ないのに。

わたしは目ざとく護衛要員にギルバートをみつけて、心の中で声をあげた。

ひょろっとした体型で、目つきが悪く、態度は粗野。だが高ランク冒険者から運営側への転職組らしく、冒険者からもまた運営人からも評価の高い人気者だ。20代前半で副ギルド長に収まっている。あの粗野なところがまた魅力的と、女性からの支持も高い。なぜ?

わたしは話していると、イチャモンをつけられているように感じるので、彼が苦手だ。

「姉さま、姉さまのために今日はいっぱい魔物を狩るからね」

「誰も怪我をしないように、そこに気をつけてね」

ノエルの頭を撫でる。

「リディアお嬢さま、うちらの隊長はお嬢さまか?」

ビリーに声をかけられる。

「そうよ。今日はよろしく!」

ビリーとカール、そして大きい村の子のラド、ムックが同年代。そして狩りに何度か参加している大人たち。

班わけは兄さまとアラ兄の管轄だ。わたしの班が一番何も起こらなそうな人たちで集められている。下の双子はベテランの大人たちと組む。兄さまたち3人のところには子供や新人がもれなく入っている。

「姫さんはどうやってここまで来たんだ?」

ギルバートだ。わたしを見てニヤッと笑う。

「歩いて以外に方法があります?」

本当はもふさまに乗って、先に来たんだけどね。体力ないから山を登るのはアウトだ。だから危険がないかチェックする名目で、一足先に待ち合わせ場所に来ていた。

姫さん呼びが気に入らない。何度やめてと言っても面白がっているんだよね。

もふさまをスノーウルフの子供に見えるけれどと、正体を当てたのもギルバートが初めてだ。だからか、もふさまは彼を気に入っている。でも6年も姿が、あ、ギルバートが来た(冒険者ギルドが領地にできた)のは3年前だったから、3年そのままの姿だと聞くと、じゃあ魔物のスノーウルフではないのかと首を傾げた。

領地の人たちは、魔物を追い立てるのがうまいからか、もふさまを、ありゃ〝魔物犬〟だよと適当なことを言っていて、みんなからそう認識されていた。

兄さまから〝怪我をしないよう気をつけること〟と注意があって、魔物狩りが始まった。

といっても山の中腹の開けたところに班ごとで待ち構え、もふさまが追い立ててくれる魔物を狩るだけだ。わたしたちが山中を走りまわって魔物を捕らえにいくわけではない。

今日はもふもふ軍団も、魔物を追い立てたり狩ったりすると大張り切りだった。ああ、本当に頑張ってくれているみたい。かなりの量の魔物が、それぞれの班のところにやってくる。

わたしは班の人たちの様子を見守り、危ない時に手助けするつもりだ。ウチには収納袋があるからどんなに魔物を狩っても持ち帰ることができる。それもモチベーションが上がるようだ。班で獲った魔物はそのまま彼らの取り分になる。わたしたち主催者が狩ったものは素材などは売って、そこからギルドや警備の人たちのお手伝いをしてもらう報酬を追加で払い、肉は領地の人たちに分ける。みんなに分配するのでちょっぴりになってしまうけれど、意外に楽しみにしてくれているみたいなので、わたしたちも積極的に狩っている。

わたしの班はバランスがいい。特に小さな頃から参加しているビリーやカールは、そのまま冒険者になれるんじゃないのと思える腕前で、危なげなく狩っている。ビリーは気配り上手なので、班の人たちみんなを気にしているから、わたしの出番がない。恐らくそれを見込んで兄さまがこの班に、わたしを入れたんだと思うんだけど。

気の毒なのはエリンとノエルの班だ。あの子たちは手加減とか知らないから。めーいっぱい攻撃してめーいっぱい魔物を狩って。いつも本気勝負だ。その熱気にやられて、一番激しく動いている。バテるの早いだろうなー。

「姫さんらしく、高みの見物か?」

「ちゃんと見てますよ」

ったく失礼な。

「兄妹でよく山に来るのか?」

「……なぜですか?」

「ギルドによく卸しに来るだろう? それもこの山で見られないような魔物や素材もいっぱい」

何か怪しまれているのかな? 父さまに伝えておいた方がいいね。

「山も来ますし、辺境のダンジョンにも行っています。収納箱があるので、ダンジョンで得たものをこちらで卸すこともあります。何か問題があるようでしたら、ダンジョンのものは町のギルドへ卸さないようにしますが?」

ギルバートはニッと笑った。

「やっぱり、バカではないようだな?」

あん?

彼はわたしのイラッとした様子に、満足そうに口の端をさらにあげる。

「シュタイン領はいいところだが、領主を始め人がいい。そして姫さんが中心となっていて、守られている」

何が言いたいんだろう?

「おっと、睨むなって。忠告だよ。少しここで暮らせば、姫さんがただもんではないことは誰でもわかる。子供だからと何度も否定したけど、認めざるを得ない。シュタイン領は前っから目をつけられていた。そのうち狙いは姫さんに絞られるだろう。だから信用するな。冒険者ギルドには常に気を張っておけ。優しそうだなんて勝手に信用すんなよ。腹の中じゃ何考えてるか、分からねーんだから」

優しそうとはギルド長のこと? シュタイン領の冒険者ギルド長はハンソンさんという、年齢の高めの方だ。冒険者ギルドの長なの?と思うぐらい物腰の柔らかい人で、荒くれ冒険者をまとめていけるのかと不思議に思うほどの優しげな人だ。その分、副長であるギルバートが荒くれ者なので、うまくいってるんだと思っていた。

「やはり、勘はいいようだな」

とわたしに背を向けた。問いただそうとしたところに、ラドがてこずっていた魔物がムックに手を出そうとした。

「水人形!」

わたしは3体の1メートルぐらいの水人形で、魔物を羽交い締めにする。そこへラドが剣を立てて、緑色のワニのような魔物がひっくり返った。セーフ。

「お嬢さま、ありがとうございます」

わたしはにこりとする。

「リディアお嬢さま、今のはなんだ?」

「水人形よ」

「水人形? 水で人形? でも魔物と当たっても〝水〟に戻らなかったぞ」

ビリー君、いいところに気づいたね。わたしはこそっと言った。

「〝仕掛け〟を施しているの。それが破れない限り、わたしの手足となって働いてくれる」

水人形に狩った魔物たちを、収納袋に入れていくように指示する。

「やっぱり、命令系なんだな」

「ど、どういう意味?」

「お嬢さまは小さい頃から、周りを顎で使ってたからな」

た、確かにお願いをして動いてもらってたよ。だってしょうがないじゃん、自分じゃ小さくてできなかったんだから。

「ご、誤解を招くような言い方を」

「だって、そうだろ」

「わかった。わたしがちゃんと戦うところを見たいのね?」

「んなこと言ってねーってば。お嬢さまは無事でいてくれ。じゃないと、何が起こるかわかんねーから」