軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第309話 聖女候補誘拐事件⑨束の間の休息

「ごめん、話すのは後にして、安全確保して寝たい。いい?」

タボさんの言った通り。そこまで背の高くない木が何本か立っていて、水場があった。灯りをつけたとはいえ、暗いし、3人乗りだし、そこまでスピードは出せなかったから5時間以上かかっている。途中で休憩も入れたしね。

水を飲みにきた獣が去って行った。スクーターを降りて、収納する。代わりに万能テントを出して、木の横に設置した。周りに結界石を置き、中に入る。

中にふたりを呼び寄せる。広くて驚いている。ふふ、家族用だからね。

まずトイレスペース確保。使い方を説明しながら設置していく。カーテンで区切れば消音機能もついているから万事オッケー。手を洗うための水場セットも取り付ける。ダンジョンに泊まる時の快適さを目指して改良を重ねた甲斐があった。

簡易テーブルを出して、水と食糧を置いておく。そしてマットレスを敷いて、シーツをセットする。3人なら余裕で眠れる広さだ。軽い上掛けを3枚用意した。

スキル・路傍の石を発動。これでこのテントが人の目に入っても、嘘みたいに気にならなくなる。

あ、ここ砂漠だったっけ。

ギフト、プラス! 紫外線、熱カット。&発動!

わたしはこの時、わたし的にものすごいことをしたんだけど、あまりに眠くて朦朧としていたので、そのことに全く気づいてなかった。

「後で説明するけど、このテントの中、絶対安全。外には出ないで。とにかく、眠ろう。話は後で」

あ。心の中でタボさんに指示をする。危険が迫ったら起こしてというのと、8時間過ぎたら起こしてくれるように。

ふたりは何か言いたげな顔をしていたけれど、限界にきていたので聞いてあげるような余裕はなかった。マットレスに寝転んだ途端、わたしは眠っていた。

『マスター、8時間が経過しました』

タボさんの声で起こされる。目を開けて体をそっと起こすと、アイリス嬢は小さな寝息を立てていて、ユーハン嬢はピクッとして目を覚ました。

「あ、起こしちゃった? ごめんなさい」

謝るとユーハン嬢は首を横に振る。

わたしのお腹が切なく鳴ると、ユーハン嬢は吹き出した。アイリス嬢がまだ眠っていることを思い出したのかキュッと口を結ぶ。それから小さな声で言った。

「あなた、凄いわ」

「ふたりの協力がなければ、できなかったよ」

と言えば、薄く笑った。

探索でこっそり周りに誰もいないことを確かめ、テントの入り口を少しだけ開ける。日差しが強い。16時前、こんな時間なのにまだ日差しも強いし、絡みついてくるような熱気が入り込んできた。慌てて閉める。

これだけ暑ければ水浴びもできそうだね。

でもまずは腹ごしらえだ。

テーブルの上の食料をカゴに入れて移し、テーブルクロスをかける。わたしは米を食べたいけど、ふたりはパンの方が食べやすいだろう。いいや、両方あったって。

定番のポテサラとソーセージもどきを挟んだホットドック。酢で軽く炒めたキャベツとジューシーなソーセージ。ケチャップもどきをたっぷりかければ、大満足できる。唐揚げ、ポテトフライ。わたしは玄米おにぎりと卵焼きも食べちゃうもんね。

欲しいものは収納ポケットにほぼ入っているけれど、目を引かないように、用意されるもので凌いでいたから、いろいろと飢えているのだ。

食事の準備をしているとアイリス嬢が起きて、伸びをした。

「おはよう」

改めて3人で挨拶をしあう。

顔も洗わずテーブルについて、3人で無言で食事を取る。

最後にオレンジジュースを飲む頃には、ずいぶん気持ちも落ち着いてきた。

「すっごくおいしかったわ」

「ええ、本当に」

「それなら、よかった」

「「「あのー」」」

3人の言葉が重なって、わたしたちはなんだか笑ってしまった。

「信じてくれてありがとう。ロクに説明もしていないのに。余裕がなかったの、ごめんね」

「いいえ、リディアさまがいなかったら、あたしたち抜け出せてもまだ砦の近くで、すぐに捕まったと思うわ。ううん、あの近くで見た骨みたいな末路だったかも」

「本当にね。ねぇ、あの乗り物は何ですの?」

「魔石で動く魔具の乗り物だよ。兄たちと作ったの」

「シュタイン領は、本当に進んでいるのね」

「うーん、家族しか使ってないよ。あれがそこらじゅうにいたら事故が起こりそうでしょ? あれはダンジョン専用、移動するための魔具なの」

「……ダンジョン、移動用?」

「そう、このテントもね」

ふたりはなるほどという感じで頷いた。

思いつきで話している。後から家族みんなで示し合わさないとだけど、わたしがその数々を覚えていられるか自信がなかった。

「魔力遮断の腕輪、どうやって壊したの?」

「……ああ、これも魔具でね」

収納袋から適当に魔石を呼び出すと、それを使うフリをしてふたりの腕輪の機能を解除した。魔法を使えるか試してもらうと、ふたりとも魔法が使えた。腕輪を外そうとしたが、自分たちでは外すことができなかった。

でも、何が起こるかわからないし、万が一またあいつらに会ってしまった場合、魔力は封じられたままだと思われた方が都合がいいから、これは気にしないことにしようと結論を出した。

わたしは尋ねられないうちに、機能を壊す魔具があったんだけど、それは魔力を入れないと使えないものだし。機能によって壊せるものと壊せないものもあり、確証がなかったので話せなかったのだと告げた。

ふたりは頷く。

そして、わたしの魔力が解放されれば、絶対にお遣いさまがみつけて迎えにきてくれるはずだから、腕輪を壊したかったし、あの隠れ里自体が閉じられた空間で魔力が外に流れなかったらみつけてもらえないので、どうしても外に出たかったのだと話した。それからみつけてもらっても、離れた地にいるので、来てくれるまでに多少の時間がかかるから、その間わたしたちだけで凌がないとならないことも。

わたしは魔力が少ないけれど、ギフトを使用する分には魔力が少量で済むと辻褄を合わせるための〝嘘〟をついた。わたしのギフトは支援系、制約はあるけれど付け足すことができ、無事に帰り着くまで、支援の力でふたりをバックアップすることを約束した。

ふたりはわたしがギフトの話を出すと〝ギフトまで言わなくていい〟と慌てたけど、最後まで聞いてくれた。

さて、じゃあ、水浴びしようかと提案すると、一瞬顔を輝かせたあと我に返り、ど、どこで?と不安そうにする。

……確かに。

テントから出ると、日が落ちる一歩手前で全てがオレンジ色に染まっていた。

ムアっとした熱気は変わらない。

「外ってこんなに暑かったの?」

「このテントも凄いわね」

特別仕様の穴あき布に収納袋を入れ、それを木の枝に引っ掛ける。とば口を下にして。

「何しているの?」

「収納箱からお湯を出します。収納箱のとば口を下に向けてあって、穴を開けた布で包んであります。シャワーです」

見本を見せるために、わたしは袋の下にいく。

お湯を呼び寄せると、穴から分散されてお湯が落ちてくる。

ワンピースごと丸洗いだ。砂の入り込んだ髪の毛をお湯で流せるのも嬉しい。砦では濡らした手拭いで体や髪を拭くしかできなかったから。

石鹸やシャンプーは落とすのに時間がかかるし、排水がちゃんとしてないからやらない。それは街に行ってからだ。今はとりあえずお湯で砂を落とせるだけで嬉しい。

こんな暑い中でも服がびしょ濡れでそれに体温を持っていかれてあっという間に冷えた。焦り、風魔法を使って乾かした。

「次の方、どうぞ」

アイリス嬢、ユーハン嬢と続き、それぞれ風魔法で乾かす。

さっぱりできたのに、外にいると汗をかくので、袋を回収してテントに入る。

眠って、お腹も落ち着き、少しは身ぎれいになった。

移動する前に、これからのことを少しだけ話そう。