軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第278話 呼吸を感じろ(後編)

「なんだってまた?」

「それはわからない。だけど崇拝するアイリス嬢がそう言うから、リディーが聖女になるべきってアイリス嬢の意見を尊重する人もいるし、リディーは聖女になるべきではないって信者もいるそうだ」

わたしはこめかみを押さえた。

「つまり、どっちにしてもわたし、アイリス嬢の信者から目の敵にされているのね?」

兄さまが重々しく頷いた。

勘は当たった。なんかアイリス嬢はイヤだったのよ。わたしの人生にこんな変な絡み方してくるなんて!

「マル・フォンがリーは聖女になるべきじゃないって思っていたのはわかるけど、それじゃあなんで扇動してリーに絡もうとしたの?」

兄さまは大きなため息をついた。

「それが、危機に陥ったら聖女なら何かが起こるはずだ。起こらなければ聖女ではない。証明してアイリス嬢に訴えるってところだったらしい」

「なんだそれ!」

「なんてことだ!」

ロビ兄とアラ兄が息ぴったりに声を上げた。

「それって今回だけじゃなく、同じように考える奴が出るかもしれないってことだよね?」

「その可能性を話し合っていて、昨日は遅くなったんだ」

一瞬、無言になる。

「ねぇ、リディー。確認で聞くんだけど、リディーは聖女になりたくないのは今も変わってない?」

「聖女になりたくない」

慌てて言い切ると、アオたちは残念そうな顔になった。兄さまが頷く。

「そうか。保健医のメリヤス先生がリディーは聖女にはなれないと断言したんだ」

「先生はなぜ断言できるの?」

アラ兄が尋ねる。

「神官だから、何かわかることがあるんだろう。だから先生はリディーがよければ、それと父さまの許可が取れたらアイリス嬢にそう伝えたほうがいいんじゃないかと言ったんだ」

聖女候補を探し出せるのは神官だから、何かわかるのだろう。

そう進言してもらえば、少しは違うかな?

それにしても、アイリス嬢はなぜわたしを聖女にしたがるのか……。

「私の方はそんな感じだ。リディーは? リディーはなぜ急にダンジョンに来たいと思ったの?」

「再戦には1年生の魔法戦の結果も入れようと思うから、戦うことに本腰を入れようと思っている意味もあった。それから体を動かしてモヤモヤしている気持ちを霧散させたくもあった。……それから、わたし頭にきてるの。楽しい学園生活を夢見ていたのに、楽しいことももちろんあったけど、いろいろ起こり過ぎて。極め付けはあの日、部屋へみんなを迎えにいったら、部屋に3人の人が入ったって言うの」

兄さまたちが固まる。

「なんでそんな重要なこと、すぐに言わないのかな?」

「……冷静になってから言おうと思って」

『ひとりは大人の女だった!』

『あと、女の子』

『机の上や、引き出しの中見てた』

『持ち出しはしなかったですよ』

「おいらたちリディアじゃないって気づいて、ぬいぐるみのふりしたでちよ。えらいでち」

みんなの頭を撫でる。

「どれもアベックス寮の差し金かと思ったんだけど、その聖女なんとかのもあるのかな……」

沈黙が降りる。

「部屋に入れないような何かをするか、わたしが留守にしている時の部屋の様子を記録する魔具をつけるか。どっちがいいかを相談しようとも思ってた」

「入れないと、リーに直接なんかしそうで怖い」

ロビ兄が恐ろしいことを言う。

『我が一緒にいるからリディアは安全だ』

そうだ、もふさまが一緒なんだから大丈夫だ。

父さまに伝達魔法で相談することもできるが、週の半ばにはシュタイン領につく。週末になれば直接顔を見て相談できるから、兄さまはそこで相談をしようと思っていたそうだ。けれど侵入者がいることで火急の案件と判断した。伝達魔法を使い父さまに聞いてくれることになった。

兄さまは入園したときに、伝達魔法を使うための魔具を持たされている。

手紙を書き終えると、兄さまは最後の仕上げにみんなで10匹魔物を倒して終わりにしようと言った。人数が多いので順番を決め、その順番で攻撃を繰り出すことにした。わたしは5番目、兄さまの次だ。

お腹がいっぱいだと動きが鈍くなることも身をもって体験した。

順番で攻撃していくのは難しくもあったけど、達成感がある。わたしが止めをさせた時もあるし、新しい魔物の1番最初に攻撃することもあった。一番攻撃は苦手だ。鑑定もできるが、頭で理解するのと実際戦いにそれを起用するのとでは頭の使う部分が違うみたいだ。けれど、誰かの攻撃を見た後なら多少鑑定結果をすり合わせるスピードが早くなるみたいだった。

わたしはへなちょこ攻撃だが、みんなは強い。次々と魔物を倒して10匹のノルマを終えた。

ちょうどよく父さまから返信がきて、兄さまが読みあげる。

それを聞いて頷き合った。

夜ベッドの中で、もふもふ軍団にくれぐれもお願いをする。父さまの判断で部屋には防犯カメラのような魔具をつけることになった。兄さまへの返信と同じくしてアルノルトやいくつかのところに手紙を送り、父さまが手筈を整えてくれた。もふもふ軍団を部屋に置いておくと、彼らに何かされたら嫌なので、ぬいぐるみになってもらってもふさまのリュックに入ってもらうことにした。何が起きてもぬいぐるみのふりをしてくれとお願いすれば、

「慣れてるでち、大丈夫でち」

『動かないよ』

『眠ってる』

『人族の学舎に入れるとは楽しみですねぇ』

『防御を解かないよ!』

となんとも軽い返事が返ってくる。

本当に大丈夫かな?

解かないといいつつ飛び跳ねている君、わたしは君が一番心配だ。