軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第261話 賛同者

新入生16人とトラサイズのもふさまが集まると、わたしの部屋は少々手狭に感じられたが、ラグを2枚広げてその上に座ってもらった。

去年何があったかを話すのに、寮の食事の後にわたしの部屋まで来てもらうことにした。わたしは清掃班の子たちと、昨日フレンチトーストの約束をしたメランたちにまず話そうと思っていた。ただみんな、同じ新入生がお腹を空かせていることに罪悪感があり、人が増えるということは行き渡るフレンチトーストの量は少なくなるけれど、それでもみんなで食べないかと提案があったのだ。わたしも異存はなく、ご飯の後にわたしの部屋に来てもらった。

「話って何よ」

この部屋に来ることになったのが不本意だと思っているのを丸出しで、座った途端口を開いたのはアイデラだ。

「おやつを食べながら、去年寮にあったことがわかったから伝えようと思って」

昨日のお好み焼きメンバーに手伝ってもらってフレンチトーストを配っていく。

「これ何、どうしたの?」

「昨日他のものを食べてパンが食べられなかったからとっておいて、それに手を加えたの」

「え、それを私たちも食べていいの?」

「あれ、リディア、これ寮のパンでないのも入ってるよ」

「うん、ついでに硬くなっていたパンを一緒に漬け込んでおいたんだ」

「……リディア」

ちょっとずつになったけれどホットミルクと一緒に配った。

甘いほのかな匂いと、黄金色に輝く蜂蜜のきらめきにみんな目が離せないでいる。

「まず、食べよっか」

声をかけてから、切り分けたパンをひとつ口に運ぶ。

バターの香ばしさの中に甘い卵液が染み込んでいて、ジュワーっと口の中に広がる。パンとバターのほのかな塩っけに蜂蜜がまたいい仕事をする。

「おいしー」

「これがお菓子ってもの?」

「あまーい」

「幸せーー」

アイデラも食べてくれてるね。

みんな幸せそうな顔をしている。

お皿が空になったところで、わたしはアイボリー令嬢たちから聞いた話をした。

アベックス寮の寮長が公爵令嬢であること。

ドーン寮長のガネット先輩が槍玉に上がっていたこと。

突っかかるのはやめてくれと言ったら、冬の試験の総合点で勝負することになったこと。アベックス寮が負けたら、もう口は出さないし今までのことは謝るといい、ドーン寮が負けた時は願い事をひとつきくことになったこと。

そしてドーン寮は負けてしまったので、アベックス寮の願い事を聞くことになった。その願いとは全員退園しろというものだった。

みんなが固まる。

わたしは続けた。

「ガネット先輩は、それ以外の願いにしてほしいと訴えた。ヤーガン令嬢は学園に平民がいるのが嫌だった。平民だとしても社会的貢献をするのなら平民であっても学園にいてもいいと言ったそうよ」

「あ、それで食費とかを削って、寄付にあてたのね?」

ピンときたようだ。ジョセフィンにわたしは頷いた。

「結局、貴族は貴族ね。学園では身分は関係ないって言っておきながら」

青い髪のウォレスが口を尖らせた。

「公爵令嬢さまが卒業するまでこのままってこと? いいえ、その後もずっと?」

首を傾げたラエリンに、わたしは正直にわからないと告げた。

「このまま、何もしなければね」

「何かするの?」

おっかなびっくりという感じで尋ねてきたのは、茶色いくるくる髪のチェルシーだ。

「わたしはしたいと思っている。でもそれは一人ではできないの。寮のみんなの協力がないと」

「それでこのおやつを?」

「え、これは別物だよ」

「したいことって何?」

「アベックス寮との再戦」

「再戦?」

これにはレニータたちからも悲鳴のような声が上がった。

「リディア、それはさ、何度やってもドーン寮が負けるんじゃない?」

確かにアベックス寮は秀才の集まりだからね。

「もちろん総点数だけじゃ難しいかもしれない。でも1つだけみんな同じスタートのものがあるじゃない?」

「みんな同じスタート?」

習い事はお金を積めば早くから習えるけれど、学園に入ってからしか学べないことがある。

「魔法戦、これはスタートラインが同じだわ。年末にクラス対抗で魔法戦があるの」

兄さまが1年生の時、普段滅多に熱くならない兄さまが熱くなっていて驚いたのだ。

「1年生の魔法戦の結果、これも勝負の対象にしてもらうの」

一瞬言葉をなくしたが、みんな隣の子と目を合わせたりしている。

「再戦。それから寄付金を集めるのに、食費は削らずに他のことで賄う、それを提案したいから総会を開きたいの。15人集まれば総会の申請ができる。だから、みんな総会を開く賛同をしてくれない?」

「総会を開いたとして、あなた、先輩たちに再戦する説得をできるの?」

アイデラに指を突きつけられる。

「説得しなくちゃと思ってる」

「貴族に言いがかりをつけて、もしそれでもっと扱いが酷くなったり、勝負に負けてもっと悲惨な生活になったらどうするの? あなた責任取れるの?」

「生活がひどくならないように、話を持っていくつもりよ」

みんながザワっとする。

「そんなこと言えるのも、結局あなたが貴族だからだわ。何かを起こしてもっと悪くなるぐらいなら、私はこのままがいいと思う」

「マリン!」

すくっと立ち上がって部屋を出ようとしたマリンをアンナが追いかける。

「私は賛同するわ。再戦はちょっと怖いから今頷けないけど、その寄付金を他のことで集めるっていうのに興味がある」

ラリエンはそう自分の意見を言ってから、ごちそうさまと部屋を出て行った。

途中で出て行ったマリンとアンナ、それからアイデラの賛同は得られなかった。

困った。あとふたり分の賛同がないと総会の申請ができない……。