軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第254話 文芸クラブ

やっとその部室にたどり着いてみれば、シーンとしている。思わずドアに耳を近づけた。部員は16人いるはずだし、今はクラブ見学の時期。人が集まっているのにこの静けさはありえるのだろうか? マップでも文芸部の部室と出ていて間違っていないと思うのだが。

「もふさま、中に人いる?」

もふさまは大きなあくびをした。

『人の気配はするぞ』

ドアをノックする。

「どうぞ」

固めの声がする。

ドアを開けると制服姿の少年少女の視線が突き刺さった。

「ここは文芸クラブの部室です」

「クラブ見学に来ました」

「Dクラスか。中へどうぞ」

うわっ、感じ悪っ。

もふさまと中に入ると……。

「リディア・シュタイン……」

と誰かが呟いた。白い獣を連れていることでわかったのかもしれない。

見学者、新入生はいないようだ。

見学人がきたという証を残す必要があるようで、ノートに名前を書かされた。

「あなた、今までにどれくらい、本を読まれているのかしら?」

「数えたことありません」

でも結構読んでいると思うと続けようとしたが目を細められた。

「冊子にも書いた通り、うちのクラブには在学中に賞をとった先輩もいるの」

わたしって天邪鬼なのかな? 受賞者がいるって凄いことだと思う。

でもこういう持ち出され方すると、素直に凄いですねって言えないのよね。

「1年生には難しくて分からないかしら?」

と言われた。わたし、今、侮辱されたの?

そんな凄いクラブだから、結果を出す必要があって、1週間に何かひとつ書き上げるのが絶対条件だそうだ。守られない場合には退部になることもあり、入る時にはそれを了承するサインを書かされるそうだ。書く場所は選ばないとのことだけれど……。

その時点で、ここに入ることはないなーと思ってしまった。でも、わたしはフィーリングで判断してしまうところがあり、そこはよくないから話を聞こうとした。けれど出てくるのは自慢話ばかり。賞ではないが先生から作文を褒められたなど。

無理。わたしこの集団の中にいるの無理だ。

わたしのクラブの選び方も褒められたものではないかもしれない。

まず消去法だ。運動系のものは除外。理由はわたしが運動を好きではないから。

魔具クラブは少し惹かれたが、アラ兄に話を聞いたところ、魔具を作るのに一般的な手順を踏む必要があり、もっとショートカットできる方法がわかっているだけにもどかしいそうだ。わたしも絶対もどかしくなるなと思い、魔具は自分でも作ることができるから、その方が楽しいだろうという結論に至った。

お菓子作りのクラブがあって、ガイダンスを楽しみにしていたのだけれど、そこはおいしさよりも見栄え重視であり、そして貴重な材料を手に入れられる財力をひけらかしているように感じて、ちょっと嫌だなと思った。クラブなどには予算が算出されるけれど、もちろん足が出た分は部費を集める。それが高額そうだなと思った。

うちの領地は潤っている。栄えていると思う。父さまからも十分にお小遣いをもらえるようになった。わたしにはその他にロイヤリティーもあるし、ダンジョンのドロップ品で恐ろしい額のお金が入ってくる。もちろんもふもふ軍団のダンジョン攻略で得たものは、もふもふ軍団の食費に投入している。

嫌らしい話だが、わたしはお金持ちの仲間入りしていると思う。が、長年培ってきた貧乏根性はパッと解除されるわけではなく、お金を使うことに躊躇がある。

クラブ活動ではわたしはなるべくお金をかけたくないと思っているのだ。

自分でできることの中で好きなこと。そして、お金のかからないこと。それがクラブを決める条件となった。

その条件に当てはまるのは妄想だと思った。書いた物語を読んでもらい喜んでもらったこともあるし、気ままに歌を作り好き勝手に歌ったりする。それならお金もかからないし。それにちょうど該当するのが文芸クラブだと思ったのだ。

でも、この空間は辛い。うまく説明できないけれど、いるのがツライ。

そのうちクラブ活動の終わりの時間になったのでほっとした。

「入部するの?」

と聞かれたので、

「いくつかの中から見学してから決めるつもりなので、わかりません」

と答えておいた。絶対ここには入りませんと言わなかったのは処世術が芽生えてきたのかなと思っている。

寮に帰れば、みんな帰っていて疲れた顔をしていた。部屋のドアを少し開けて、わたしの帰りを気にしていたみたいだ。

お金の使い道の開示の方法は分かったのか聞かれたので、わたしは驚くべき寄付のことを話した。みんな驚いている。

「誰が寄付を言い出したんだろう?」

「何でそんなことしてるの?」

「ポイントもらったってことは、今後も続けるの?」

「続いてるじゃん」

誰がしていることかわからない。だから寮長に聞くのが一番かということになった。

ゾロゾロと5人で寮長の部屋に向かう。もふさまも一緒だ。

1年生は最大4人のひと部屋だが、上の学年にあがっていくにつれて二人部屋や一人部屋になる。寮長も一人部屋だった。

ノックをすると部屋着のガネット寮長が出てきた。

5人で来たわたしたち、ひとりひとりをジロリと見る。

「何の用かしら?」

「寮のことでお尋ねしたいことがあります」

「何かしら?」

先輩は腕を組んだ。

「寮の食費はどなたが決定しているのでしょう?」

先輩の目が大きくなる。そしてぷっと吹き出した。

笑われた。

「あ、失礼。まさか、そこを聞かれるとは思わなくて」

ガネット寮長は小指で目の端の涙を拭いた。

「食費は寮母、ミス・スコッティーが決めるわ。それに生徒の要望を聞いて私が訂正を入れているの」

「あの切り詰めた食費は寮長が指示したものなのですか?」

ガネット寮長は首を傾げた。

「食費の額を誰に聞いたの? ミス・スコッティー?」

「生活部に行って確かめました」

ガネット寮長は頷いた。

「そう。決めたのは……寮生の総意よ。それで何が言いたいのかしら?」

「……それは新入生が入るまでの総意ですよね?」

寮長はにっこりと笑った。

「その通りね。15人以上の同意があれば、寮の総会を開く申請をすることができて、意見を覆す場を作れるかもしれないわ。でも意見を覆すには寮生の半数以上の賛成票が必要だけどね。もう、いいかしら?」

身を引きパタンとドアが閉じる。

えーーーーーーーーーーーー。

「どういうこと?」

ダリアが小声で言った。

「わたしの部屋で話そっか」

提案すれば、みんなが頷いた。