軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第209話 見えない目的

探索をかける。赤い点はない。わたしの敵はいないってことだ。

シヴァだと思う。そう思うけれど、一応確認だ。

ええと、わたしとシヴァしか知らないこと。

「シヴァ、ドリー」

シヴァがうろたえる。

「な。だからあれはお嬢の誤解だと再三……」

シヴァだ。わたしは胸を撫で下ろす。

そうだ、それにもふさまがシヴァと認識していたもんね。

わたしは胸を張る。

「こちらは、次期辺境伯の、シヴァ・シュタイン・ランディラカです」

フライング気味だが、認めてもらいに来たところなのだから問題はないだろう。

「馬車から降りていただけますか?」

シヴァが抑えた声音で要求した。ブライドさんとアダムが馬車を降りる。

シヴァはふたりに剣を向けたままだ。

「私はハンソン伯、第一子のアダムです。この者はランパッド商会のブライド。私が保証します。その出張に行っている者が偽者ではないのですか?」

シヴァは首を横に振った。

「それは確認が取れています」

わたしたちの視線が、ブライドさんに向かう。

「……確認を取ったのでしたら、仕方ありませんね」

ブライドさんが後ろに飛んだ。シヴァがブライドさんに剣を定める。

「おっと、そんな危ない物を振り回さないでください。大事なお嬢さまに当たってしまいますよ?」

あれ? ブライドさんの顔のところがもやがかって見えて、目を擦る。

「私は依頼通りに、お嬢さまを無事に王都へお連れしただけですよ、ブライドに成り代わってね」

顔が変わった。今までそつのない商人っぽかったのに、貴族だ、そう思う。

イケメンの部類に入るだろう。何、魔法? 幻覚みたいなものだったの?

「誰の依頼だ?」

「シュタイン伯からの依頼です」

「抜け抜けと!」

シヴァはわたしを抱っこしていなかったら、とっくにブライドさんを捕獲していただろう。

「幻覚魔法で騙していたな? お前は誰だ?」

アダムが大きな声を出した。

「ブライドですよ。坊ちゃんがそう呼んだではないですか」

アダムが悔しそうな表情になった。

シヴァがわたしを地面に下ろす。そして素早くブライドさんの首に剣を当てた。

「さすが次期辺境伯ですねー」

ブライドさんは楽しそうに呟く。

「でも無駄ですよ。私はただ受けた依頼を、遂行したに過ぎない」

シヴァはブライドさんを縛り上げた。

後ろについていたランパッド商会の馬車と使用人は本物で商会の人だった。そして彼らにも今のいままでブライドさんに見えていたようだ。それに全く違和感がなかったという。

それも王都まで行ってからわかったことだ。王都に入るゲートでは犯罪歴がないか、訪れた目的などチェックする検問があり、馬車も人も列を作っていたが、わたしたちは取り調べ?があったので優先的に入ることができた。喜べないけど。

父さまたちとも合流できた。父さまはわたしの誘拐事件として詰所に訴えにきていた。

「リディー」

父さまに抱きしめられる。

「どこもなんともないか?」

うんとわたしは頷く。

「リディー」

兄さまにギュッとされる。ポケットから顔を出したレオがキュキュと鳴いた。双子ともギュッとする。

誘拐事件と発覚したのは3日前のことだそうだ。わたしが家を出て9日経った日。

父さまは例の〝作戦〟の全てが終わるまで、アルノルトからは父さまに連絡をとるのはなるべく控えるように言っていた。で、アルノルトは連絡を入れないようにしていた。前日の手紙で父さまがわたしが元気にしているかというようなことを書いてきたので若干おかしいと思って、ちゃんと迎えにきたランパッド商会の人と王都に向かっていますよと返して、なんだそれは?と発覚したらしい。

ランパッド商会に問い合わせたところ、確かにそういう依頼があり、シュタイン領から王都まで大事な荷物を預かるとしっかり記載されていたようだ。

ただ、その仕事の受け手がブライドという支部長であるが、彼は南の地に出張中だ。なんで彼の名前で受けていて、サインがあるんだと商会の方も大慌て。各地のランパッド商会の人たちが動きわたしたちを探したらしい。それでつかめた足取りでは、わたしたちはブライドと思われる商人とそれから貴族の子供と一緒に、堂々と真っ直ぐ王都に向かっているようにみえた。

それでシヴァが考えらえる道筋で向かってくれて、ブライドさんをお縄にした。

アダムは全く関係がないので、父さまが丁重にお礼を言って、王都の家に帰した。

役所では、さて、偽ブライドさんの事情聴取をと隔離していた部屋に行くと彼がいなくなっていた。

ランパッドの使用人さんたちは、偽ブライドさんのいう通りに商品を運んでいただけだし、わたしも何かをされたわけではない。アダムと一緒になってしまったために、別れてからわたしをどこかに連れて行くつもりだったのかもしれない。

姿形を魔法か何かで、なりきるだけでなく、性格や話し方、それから仕事先なども頭に入れていたのだろう。一緒に仕事をしたことのある使用人さんたちが違和感を覚えなかったわけだし。数多くいる取引先の子供の顔まで知っているとは芸が細かい。

結局、偽ブライドさんがいなくなったことで、捜査は行きづまってしまった。

わたしを領地から誘い出した人は、何をするわけでもなかった。ということは、目的はわたしを王都に連れてくることだったと考えられる。アダムがいたからできなかったのか?とも考えもしたが、アダムと会う前に3日もブライドさんとふたりだった。何かするつもりなら、とっくにどうにかなっているだろう。だから父さまは、その思惑から逃れるのに、わたしをすぐにでも領地へ返したかったみたいだ。でもひとりで帰らせるわけにもいかない。

王様への謁見は期限が設けられている。寄り道をしてきた関係でそれがギリギリになっていた。父さまとシヴァは明日にでも陛下へのご挨拶のため登城しないとなので、当初の予定通り兄さまたちを預けるところに、わたしも一緒にねじ込むことにしたみたいだ。

その預け先とは、おじいさまの生家だった。

おじいさまは男爵家の三男坊だった。若い頃に家を飛び出し、腕だけで成り上がって行った猛者。そこでランディラカ辺境伯まで上り詰めた。飛び出した経緯もあるし、その息子は父親と縁遠かったので、父さまも小さい頃に一度あったことがあるだけとか。知り合いが少ないので、わたしたちを預けられるところがここしかなかったようだ。

わたしたちはすぐに通された。

応接間には、50代ぐらいのフォンタナ男爵とその奥さま、おじいさま(ひい爺さま)の兄弟と思われる前フォンタナ男爵夫妻。

それから父さま世代の夫妻がいらした。

手紙のやり取りで、預けることは決まっていたみたいだ。

男爵にいままで交流がなかったのに、いきなり頼るようで申し訳ありませんと詫び、さらに、ひとり増えてすみませんと謝っている。

なんだか、とっても見られている気がする。