軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第186話 お茶会①start

お茶会当日。しっかりと晴れ、素敵なお庭でお茶会をできると思って気分が華やいだのに、朝もはよからテンションの下がる手紙と、従者が届く。

殿下が王位継承権を持つことを反対している人たちがいるのだけれど、その人たちの動きが不穏なんだと。このお茶会が成功すると殿下の株が上がると心配する人たちがいるらしい。お茶を飲んで成功とか、意味がわからない! そんなことに巻き込まないで欲しい。今日はキートン夫人の大切なお屋敷での最後のイベントなのだ。

シュタイン領を出てわりとすぐにウチの幌馬車は物盗りたちに狙われた。

ロサが寄越した従者のフリした強い人たちが簡単にのしてくれた。

わたしたちはロサから贈ってもらった服で身を固めているので、おしとやかにしていないとだしね。

今日はお屋敷まで馬車をつけてもらう。前は使っていたという馬小屋にケインを入れ、馬車も置かせてもらう。

兄さまたちはロサの寄越した大人たちを使って会場を整えていく。

3本の長い枝を松明スタンドみたいにしてたてたものの上に中華鍋のようなものを置いている。所々に配置したそれを不思議に思うみたいでみんな覗き込んでいく。まだちょっと薄寒いからね、その中に温石と風の魔具を入れた。温石はお日様の光をしっかりと当てたものだ。これでスライムの魔石に風の魔力を込めたものを一緒に置いておくと、温風まではいかないけれど、なんとなくあったかい何かにはなるんだよ。

もし寒ければ魔法であったかくする予定だ。器具があれば魔法を使ったって、そうとは思わず器具のおかげと思ってくれるだろう。

持ち帰られる方にすぐ渡せるよう、毛皮ベアを並べていく。

「これはまたかわいらしいですね」

手伝ってくれている人が思わずという感じでいう。

でしょう? わたしは満足だ。

一応探索かけちゃったけれど、赤い点はなし。今中にいる人たちはひとまず信用して良さそうだ。

ロサ殿下が手配してくれた大人たちのおかげで、準備はすぐに済んだ。時間があったので早めのお昼寝をする。しっかりと横になるとドレスにシワができてしまうので、ソファーに寄りかかって目を閉じた。

起きればロサが到着していた。

キートン夫人のメイドさんに服を整えてもらう。

薄い黄緑色の地のドレスに、所々黄色のアクセントが加えられている。フリルとレースがふんだんに使われているが、ゴテゴテしておらずあくまで上品だ。少しハイウエストからスカートが広がっており、そこがかわいらしい。折り返した袖口は花びらみたいになっている。髪はツインテールでそこからいくつかの細い三つ編みをしてその先を根元に巻きつけたダイアナ編みにしている。ダイアナとは、前世で有名な空想が得意な主人公の小説の親友の名前だ。その子のアニメバージョンの髪型をわたしはそう呼んでいた。アニメでは三つ編みは一本だけどね。根元は大きな黄色いリボンを結んでいる。

整えてもらったので、ロサ殿下に挨拶をしに行き、服などのお礼をいう。

半分前髪をあげて固めているのか、年齢が上に見える。

白いブラウスに白いズボン。ベストとブーツは深い紺で金色の刺繍がされていた。首元のボウタイにも紺と金色の刺繍があり、紺色の長めのコートジャケットの真っ白の襟を華やいだものにしていた。今更ながら、本当に王子さまなんだなと変な感心をしてしまう。なんかこう従わせるっていうか、上の者っていうか、板についているというか、全てがキマッていた。

ロサは今日はよろしくとだけ言った。

キートン夫人のことも何も言わない。

招待客が到着し始めたようなので、わたしも庭に出ることにした。

門ではすでにロビ兄とアラ兄がチェックに当たってくれている。もちろんロサがつけてくれた強い侍従の人たちが控えている。

メイドさんが兄さまを連れてきてくれた。

そうだった。わたしは今日一日、兄さまのエスコートで歩かなくちゃいけないんだっけ。

あれ? 贈られてきた服のタイは赤かったと思うけど、兄さまは緑色のタイをしていた。ブラウスにベストにジャケット、スカーフタイ。ツートンカラーでかわいらしい燕尾服のようにも見える装いだ。ちなみに双子は兄さまのカラーとメインとサブの二色が逆の割合になっていて、ズボンの丈が少し短い。派手なストライプの靴下を見せている。

あれ、もふさまのリボンも赤い物が送られてきたと思ったけど。もふさまは真っ白なだけに、緑色のリボンがいい具合に目立っていた。とってもかわいい。今日もわたしの足元に寄り添ってくれている。

ドアを開けて外に出れば、集まっていた子供たちがみんな振り返った。

服? 姿勢? 品なのか? ただ立っているだけなのに、身分の高い方々なんだろうなとわかる。色とりどりのドレスの花が咲き、一気にゴージャスな庭になっていた。

兄さまは足を止め、わたしの手を少し強く握る。

あ。

兄さまと揃って皆様に礼をする。

知っている顔が挨拶をしに歩み寄ってくれた。ホスト役なのでこちらから挨拶をしないといけないところだが、正直助かる。兄さまは会ったことがない人もおおよそで誰が誰だか見当がつくみたいだが、わたしにはそんな芸当は無理だ。だから挨拶に行くのが悩みの種だ。

「素敵な会場ですね」

「ダニエルさま、ありがとうございます」

兄さまが宰相の孫に挨拶をする。

縦巻きロールが特徴のアイボリー侯爵令嬢にも、お久しぶりですね、お元気でしたか?と声をかけてもらった。真紅のドレスは大人っぽく、それが令嬢にはとても似合っていた。

そうこうしているうちに、開始の時間になったようで門は閉められ、双子がやってくる。双子も赤いスカーフタイではなく緑のものだった。兄妹で緑を揃えたみたいだ。

招待客も誰一人遅れることなく、来てくださっているよう。

双子が王子殿下を呼びに行き、皆さまには席についてもらうよう促す。席は親の爵位で固め、仲のいい方悪い方の噂を考慮して決めた。アルノルトに見てもらって太鼓判を押してもらったから、変な席割にはなっていないと思う。

ドアが開きロサが出てくると、皆礼を尽くした。わたしも隣の兄さまを見て慌ててカーテシーをする。

殿下が席に着かれたところで、アラ兄がアナウンスをした。

「皆さま、本日は王都から遠い地までよくおいでくださいました。初めまして、私はシュタイン伯第一子、アラン・シュタインと申します。お見知り置きを。ブレド・ロサ・ミューア・トセ・ユオブリア殿下よりお声がけがあり、我が妹リディア・シュタインが本日のお茶会を主催することになりました。ですが、妹はまだ5歳、幼いため、兄である私たちとリディアの婚約者も協力するように仰せつかりました。初めてゆえ至らぬところもあると存じますが、楽しんでいただけるよう兄妹で尽力いたしますので、どうぞよろしくお願い致します」

拍手が起こる。アラ兄は続ける。

「まずは主催側であります私たちがご挨拶をさせていただき、その後に殿下よりお言葉を賜りたく思っております。のち、少々本日のお茶会の趣旨をお話しさせていただき、進行の説明をさせていただきます」

再び拍手が起きた。アラ兄、すっごく立派だったよ!

アラ兄はそこまでいうと、少しほっとした顔をした。

タイムテーブルを告げるのはわたしの要望だ。

トイレはどこで行くとか、すっごく重要だと思うんだよね。自分の中の予定を立てたい。だからそれをみんなに伝えて欲しいとお願いした。

隣に立つロビ兄がスゥーっと息を吸い込んだ。

「シュタイン伯第二子、ロビン・シュタインです。会場の保安を任されています。何か不安なことがありましたら、私に」

胸に手を置き、すっと礼をする。

ちょっとどうしたの? いつもより5割増しかっこいいよ! ため息と共に顔を赤らめた令嬢4人。ロビ兄やるね!

またまた拍手が起こる。皆とても品があり、良いお客さまだ。

わたしの番か。

「シュタイン伯、第三子、リディア・シュタインです。本日はようこそお越しくだちゃいました」

やべ、噛んだ。身分が上の方々は〝なってない〟を醸し出すこともない。ふわっと微笑まれる方もいるぐらいで。うん、つかみはオッケーと言うことで。

「心ばかりではありますが、わたしの大好きなお菓子を作りました。どうぞ召し上がってください。楽しい時間となりますよう努めます。よろしくお願いします」

カーテシーを決めると拍手が起こった。ほっとする。次は兄さまだ。

「フランツ・シュタイン・ランディラカです」

名前を言っただけなのに、お嬢さまたちの顔が赤くなる。

「リディア・シュタインと婚約をしております。婚約者ともども、よろしくお願いします」

ざわざわとして視線が突き刺さる。何人かには「えー、あれと婚約?」みたいに見られている気がするよ。

「殿下、開会の言葉をいただけますでしょうか?」

アラ兄がお願いをすると、ロサは立ち上がる。

皆殿下を控えめに見ている。

「今日は集まってくれてありがとう。去年の終わりに狩りに行ったんだ。その先でシュタイン領に挨拶をしに行き、もてなしを受け、料理や菓子のおいしさに驚いた。それも全部リディア嬢が考えたり作ったというからさらに驚いた」

ざわっとする。

「フランツ、アラン、ロビンは腕が立つし、話しているととても楽しくてね。みんなと仲良くできたらいいなと思ったんだ。4人が秀でていることは茶会を開いてもらうのが一番わかると思ってね、大変だとは思うが頼んだんだ」

絶対大変って思ってないよね?

「招待客を選んだ以外、私は口を出していない。すべてシュタイン家の子供たちが考えたことだ。それから、この場所を提供してくださったのは、キートン元侯爵夫人だ」

まぁとどこからか声が上がる。

「会の終わりにご挨拶をさせて頂こうと思う。感謝して、この茶会を楽しんで欲しい」

一層激しい拍手だ。