軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第182話 塀づくり

今日から職人さんたちと塀づくりが始まる。

みんなで集まり〝やり方〟を習った。子供から聞いたらしく、土属性持ちが塀づくりを手伝いたいと集まってきたのは嬉しい誤算だった。塀は強度を持たせるために土に鉱石を混ぜたものを使うのが一般的で、ケルト鉱石もオッケーだった。ほとんどがそのあとに結界やら強度補強やら魔法に頼るので、領地を守るような囲いでも普通の塀と変わらない造りなんだとか。

魔法で鉱石を混ぜたり、土魔法で塀や建物を形づくり、出来上がったところをコーティングする、それができる職人さんたちらしい。魔力は無限にあるわけでないから、土魔法で塀を作る作業ができる人が、職人さん以外にいるだけで随分違うと言う。早さもお値段も。みんなで順番にやって親方からオッケーをもらうと、それぞれの職人さんと組み場所を移動する。

わたしは父さまと一緒に塀づくりに臨んだ。鉱石が混ざると土魔法で動かしにくくなるから不思議だ。父さまがやるフリをして時々やらせてもらった。職人さんがするコーティングが素晴らしい。わたしみたいにどこか厚くなったり薄くなったりせずに均一だ。

休憩の時に父さまからお茶会のことを聞かれた。アルノルトからキートン夫人のことを聞いたと。お茶会で何をするつもりだ?と。瞳の奥を覗き込まれる。

わたしは4人で考えたことを話した。

ロサが何をするつもりかはわからない。

ただわたしたちは一回会って話をしただけだけど、キートン夫人が大好きになった。キートン夫人が大切な思い出のある家での最後のイベントだから最高のものにしたいし、子供たちが帰ってから親に話すだろうから、キートン夫人に起こった出来事を知って欲しいと思っていることを伝えた。

「本当にそれだけか?」

探るように父さまに見られた。

「父さまだったら、何ができると思う? キートン夫人のためになること」

父さまに頭を撫でられる。

「リディーたちの考えが素晴らしいと思うぞ。素敵な思い出に残るように、みんなが楽しめるものにできるといいな」

わたしは頷いた。

「父さま、変な魔具をつけていったのは誰だろう?」

「そればかりは、つけた人しかわからないな。もう壊したんだろう?」

そうだよね、わからないよね。壊したから。

なぜ監視魔具を付けたのか。何か知りたいからだよね。様子を知りたい。十中八九、犯人だよね。キートン夫人を違法投資に巻き込んだ。

でも監視魔具は壊されて今こちらの様子を知ることができない。一度そうやって情報を手に入れていたのなら、余計に知りたくてたまらないだろうなー。後ろめたかったら倍増で。

ん?

犯人を確定するのは難しいだろうと思っていたけれど、もし情報に飛びついてきたら、その人は怪しい。犯人の可能性がある。コルヴィン夫人は絶対片棒担いでいると思うけど、確証はない。でも、もし情報に飛びついてきたら、探っていたのはどうして?と問い詰めることができるんじゃない? まぁ、そんなうまいことコトが運ぶわけないか。

でも、ふふふ。犯人が自ら踊りでれば、権力者の子供たちだ、きっとどうにかしてくれる。犯人が飛びつくような情報、何かないかな? うーーん。

しばらく考えたがいい案は浮かばなかった。でも、嫌がらせは思いついてしまった。情報を探っていたら、もうこっちは犯人がわかっていて、もうすぐお縄になるんだと思っているのが伝わったら、焦ったりするんじゃないだろうか。

いつ捕まるかと気が気じゃなくなるかもしれない。うん、立派な嫌がらせだ。

解決策や良い案ではなく品がない嫌がらせしか思いつかなくて申し訳ないが。とてもちっちゃい嫌がらせ。これはわたしが頭にきたから、わたしのためにすること。

「リ、リディー、何を考えついたんだ?」

わたしは恐らく、にんまりしていただろう顔を引き締めた。

「あのね、父さま。わたし楽器できないから、物語を朗読しようと思うの。その物語を思いついたの」

父さまは首を傾げる。

「主人さまやみんなと冒険する話じゃないのか?」

総出演の物語は長い冬ごもりの慰みに、少しずつ聞いてもらったから、父さまも知っている。

「それはお茶会用。思いついたのはイダボアの子供たちに聞いてもらう話」

「イダボアの子供たちに?」

うんとわたしは頷く。

「あのね、キートン夫人にお話の仕方を聞いてもらうの。こうするといいってきっと教えてもらうでしょ。それでね、イダボアの子供たちに練習で聞いてもらおうと思って」

惰性で父さまが頷く。

「お茶会の前に町の子に話したら招待客の方々に失礼かもしれないから、違う物語を用意するの」

そこまで言うと、父さまは安心したのか頷いた。

「そうか。できたら父さまにも聞かせてくれ」

わたしは頷く。心の中でお茶会の後でねと言葉を添えて。

塀づくりを再開して作業をし、わたしは午前中いっぱいで町の家に帰った。そしてご飯を食べて、お昼寝をして、思いついた物語を書き留めた。

メイドのクララが世話を焼いてくれたので快適だった。

『何を考えておる?』

「褒められたことじゃないけど、嫌がらせを思いついたの。イダボアで子供たちに読み聞かせをして」

「お嬢さま!?」

ドアがバンと開く。

「なあに?」

「話し声が。誰も部屋にいませんよね?」

「あ、これね? あるところに庭中にお花が咲き乱れる、素敵なお屋敷がありました」

「え?」

クララが小さな口を丸く開けて腑に落ちない顔。

「お茶会で物語を朗読する練習をしていたの。心配してくれたのね、ありがと」

「朗読……練習……そうでしたか。私の早とちりでした。物語はお嬢さまがお作りになったのですか?」

「うん」

「まぁ! お嬢さまはいろんなことがおできになるんですね!」

ニコッと笑っておく。

クララは出て行った。

『敵か?』

もふさまに鋭く突っ込まれた。

「うーうん、町の家も今のところ赤い点はないよ」

『そうなのか? リディアにしてはつっけんどんな態度じゃないか』

「うん、なんか気に触るんだよね。なぜかはわからないんだけど」

『リディアは魔力が高いし、心のままに従うのが一番いいだろう』

そう言ってもらえるとほっとする。

塀づくりで魔力を使いまくって疲れた父さまや双子が帰ってくる。兄さまは土魔法は使えないけれど双子の補佐にまわっている。すごいね今日だけで4分の1は進んだそうだ。土魔法の使い手が参加できるかどうかで進み具合が変わりそうだ。