軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1337話 創ったものと創られたもの④問いかけ

『精霊に問おう。お前が特別目をかけている集落の者たちは育っているか? 変わっていっているか?』

もふさまの話を聞いて、少し冷静になったようだ。

もふさまの言葉を噛み締め、そしてフクロウがブルブルと震え出した。

『幻影だと? そんなはずはない!』

『だとしたら確めると良い。我らも違うのであればそれにこしたことはないと思う』

『確かめる? どうやって?』

そっか。無自覚でやっているとなると……。

『話をしてみろ』

レオが大きな声で言った。

『話?』

『一人としか話さなかったのだろう? みんなと話してみるがいい。

今困っていることはないか、好きなことは何か、楽しいことは何か。毎日どんなふうに過ごしているのか。集落を出て気になったことはないか。直近で他国と取引をしたのはいつか』

『……あい、わかった』

それくらいならと思ったのか、使い魔の口を借りている悠はうなずいた。そして羽ばたく。

フクロウは甲高い鳴き声を上げながら集落を旋回した。

その鳴き声に、家の中から人々が出てきてご神木に集まってきた。

フクロウはもう枝に止まっている。

いつもの繋ぎ役の人が、フクロウに頭を下げる。

「ジョギさま、集落の者を集めました」

子供たちも揃っていて、フクロウを見上げている。

『うむ。我は今、皆と話してみたいと思っている』

そう切り出したジョギさまに、人々は一瞬ざわついたけれど、すぐに静かになった。そして嬉しそうにしていた。

フクロウはレオが言ったことを忠実に皆にきいた。

直近で他国と取引をしたのはいつか、これが要だと思った。

少なくてもベクリーヌの今の王になってから取引はしていないはずだ。

それを集落の人たちはどう答えるのか。

その答えで少し変だと思うかなーと思ったけれど……。フクロウの口を借りている悠は最初の人の最初の質問の答えで、もう何か感じたのがわかった。

声のトーンが。声の揺らぎが。混乱を必死に押さえ込んでいるように思えた。

人々からは特に変わった話はなかったと思うけど。

取引の回答は実にバラエティーにとんでいた。

昨日という人もいれば、そういえば長いこといっていないという人もいる。

子供も合わせて全員と話し終え、ジョギさまはみんなに夜に悪かった、もう寝てくれと返した。みんな一様にジョギさまと直接話せたことを嬉しいといい、そして感謝していると述べた。

ご神木の周りから皆が去る。

悠が心を落ち着けるまで、何も言わずに待った。

実を言うと、聞いた限りでは記憶があやふやなものもいるようだけど、幻影と決定づけることは何もないと思ったから。

『同じだった』

同じ?

ん、フクロウからまた黒いモヤが……。

『あれは初めて人が住み着いて……その時、話したことと……』

『リディア!』

もふさまが大きくなって、わたしを抱き込む。

もふさまに守られているけど、すっごい瘴気。

あっという間に、辺りが真っ暗になった。

誰かが咳してる。瘴気に弱いわたしだけではなく、生き物レベルでマズい状態!?

暴走? 小箱を使う時?

いや、まだだ! あきらめない。わたしは悠を哀しいままにしたくないし、この集落のそんな終わらせ方も嫌だ。

最初に父さまに教えてもらった。終わらせること。そうして乗り越えること。

だからみんな次への一歩を歩み出せること。

「悠ーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」

わたしの声が響き、あ。

モヤがかき消されてる。ひょっとしてわたし、瘴気を浄化してる!?

息が少ししやすくなった。

ぎゅっとしてくれてたもふさまを撫でると、少し緩む。

「暴走するにしても、ちゃんと終わらせて。それが創ったものの役目!」

視界が開けてくる。

「後で悲しむなり、絶望するなりすればいい。まずはこの集落と魔物たちをあなたが看取りなさい!」

『看取る?』

小さな男の子のようなそんな声。同じくフクロウから出ているけど。これが本来の悠の声なのかな?

「そうよ。漠然と生まれ、ずっと繰り返してきた。自我があるのかないのかはわからない。けれど、せめて優しく終わらせてあげて」

黒いモヤは少しずつ、少しずつおさまっていった。ダニエルは四つん這いになり荒い息をしていた。ルシオがみんなに聖水をかける。兄さまはノエルの様子を確めた後、わたしの両頬を手で挟み込む。

「大丈夫?」

「うん。もふさまが守ってくれた」

『ジョギ、1日起きていられる?』

幼い声が響き、フクロウはその言葉にうなずく。

『……絶望するのは後にする。集落を終わらせる』

〝ジョギさま〟の声だ。

悠は1日集落の人たちと過ごすと言った。集落の人々はジョギさまと触れ合うのを夢見ていたのが話してわかったので、それをしようと思ったらしい。明日になるまでは森に行って魔物たちをみてくると言った。

わたしたちもついて行く。推測通り、悠が深く眠っていなければ夜の魔物も昼間と同じ人懐っこい魔物だった。

どこか歪な魔物を見て、フクロウの目から涙がこぼれたのが印象的だった。

後から聞いたんだけど、いろいろ違ってきているものの、昔強い瘴気の中で生まれた強い魔物たちの片鱗が見えたそうだ。悠にはデフォルメされる前の本来の姿がわかったみたい。

集落の繋ぎ役以外の人々と話したとき、悠は気づいた。

悠は人々が住み着いた時とても嬉しかった。使い魔を通じて、どこにでも一緒に赴き、誰とでも話した。

窓口を繋ぎ役ひとりとするようになったのは、自らの瘴気で一瞬にしてせっかくうまく回るようになっていた集落を絶滅させたからだった。触れ合うと思い出ができすぎて辛い。だから自分は遠くから見守ることを選んだ。

けれど、いつしか絶滅を免れて長く共にした集落は……自分が作り出した幻影だった。そう。集落の人々が口にしたことは、一番初めに創った集落の時に聞いたことと全く同じだった。改善したはずの困っていることも、好きなことも、苦手なことも。いつか聞いたことと全く同じだった。