作品タイトル不明
第1332話 精霊と会議⑦逆手
「リディアの魔力はおいらが漏れないように持っているでち。
魔力がついてまわらなければ、それを目印にしていた神には目眩しになるでち」
アオが胸を張って言った。
そういえばそうだね。神獣のノックスさまもフレデリカさまもわたしの魔力をいいと言って覚えてくださった。……ってことは魔力のない設定でこれからいく予定だから、疎遠になってしまうかもな。
あ、それは今考えることじゃないね。
今は会議中なんだから。
「悠さまは起きている時に疫病神が話しかけて来たんだよな? だったらまた深く眠るのは?」
「え?」
「といっても、……本体は大陸で動かせないけど、一部は出せるんだよな? それが動けばいいんじゃないか? 大陸がもぬけの空でも……集落のことをなんとかすれば大丈夫だろ? 棲み家に戻ってくるんだ。
ここには疫病神は来れないんじゃないか?」
「棲み家はそうだとして、他の精霊さまの一部は外に出るよな? それをまた捕まえられたら?」
んーーーー。
「逆手に取る」
兄さまの呟きにみんなが反応する。だけどどういうことだろうと次の言葉を待つ。
「疫病神は絶望を集め何かをするつもりだ。恐らくそれでしか叶わないから。だから横槍が入らないように騒ぎを極力小さくしているんじゃないかな? 人族の争いごとに見えるよう偽装しているし。それがわかったら自分より上の何かからもっとも願いと遠いところになるとわかっているんだ。
上からの介入を拒むゆえに、自分のしたことだと明かしたくないんだ。
神がかかわっていると思われるのは、人族などでは起こせないような規模の大きいこと。だから今までもちょっかいを出しているようなことしかできなかったんだ」
「そうか、神がかかわっているとわからせないようにしていることを逆手に取るんだな?」
イザークが声を上げると、兄さまは正解というように笑った。
具体的にそれってなにさ?
わたしは次にくる言葉を待った。
「精霊の皆さまは姿を現すなら、もっと人族たちの目に触れるようにしてください」
『よくわからない。我らが姿を現すとどうなるのだ』
「人の目というのは集まると力になります。
捕えられそうになった時は騒ぎに騒いでください。人の目の見える形で。
人から捕縛されたのなら、仲間と連絡が取れればどうにかなるのですよね?
もし神憑きに捕えられた時は、私に連絡してください。
わたしは神との繋がりを斬ることのできる剣を持っています」
人の目のあるところで何かをしたら騒ぎになり、それを大事にもできるから。
完全な保護になる話ではないけれど。人に姿を現すようにすることで、秘密裏にことを起こしている疫病神には精霊がいい駒ではなくなるってことだ。
精霊の存在がオープンになれば、疫病神は手を出しにくくなる。
悠も大陸に本体は置いておき、一部に意識を入れて棲み家に避難。
疫病神がこんなことしてますってその上の何かに訴えられたら一番いいけど……。
ひどいことが起こってしか対応できないんだろうな。
だってその元の元は元創造神が静かに引き起こしていたことなんだから。
わたし的には、あんだけわたしにいろいろ仕掛けてくれちゃってって思うけど、それは〝神〟の手が入ったとは判断されてないみたいだ。
神に届かせるにはと考えても上の方の理は知ることができないから、そういうものとして思うしかないし、助けを期待しない方がいい。
こちらとしては疫病神の嫌がることをするしかないわけで。
あちらがなんかしてきたら、 大事(おおごと) にするってことね。
どれくらいの大事なら上の何かは動いてくれるんだろう?
わたしが疫病神で、人族の誰かが邪魔なら、人族の誰かのいる周辺に疫病を流行らせるけどね。だってそれが確実じゃない?でも疫病だと規模が大きすぎるのかな? いや、疫病神のやったことだとわかってしまうから?疫病を使うのは、それこそ因果律が定められているのかもね。
とにかく疫病神と引き離す方はなんとかなるとして。
だとしたら、あとは悠さまの状態を自我のあるまま精霊の皆さまに会わせる方法だ。
第一大陸は精霊が入れない仕掛けがあるみたいだし。
神のことも何も心配ないよと悠さまに伝えたら、精霊が入れないようにしている何かを解除してくれるのだろうか?
「悠さまをこちらの棲み家に連れてくるのが一番なんじゃないか?」
イザークが腕を組みながら言った。
「大きな瘴気が動いたら、それこそ疫病神にバレるか?」
「アオは瘴気を取り上げられないよね?」
「それはできないでち。前のマスターはそんなことしなかったでちから」
そっかー。
「玉に込めるのは?」
「込められるのは〝現象〟だから」
そう言った後で、頭に何かがよぎった。
玉で何かを思い出した? 玉? 入れ物? 器? 箱?
あ。
「確かではないんですけど、実験いいですか?」
みんな、へ?という間抜けな顔をしている。
そうだよね、急に実験とか言い出して。
「行き詰まってるからいいんじゃないか? リディー、何か思いついたんだね?」
わたしは兄さまにうんっとうなずいた。