作品タイトル不明
第1318話 13番目を探せ㉔結論(前編)
日が暮れるともふもふ軍団が帰ってきた。
魔物たちは普通に沼の水を飲みにきてたという。
でもそれよりも、日が暮れかかったとき、沼から薄い桃色の光が出てきて沼全体が輝いたそうだ。
やだなー。瘴気の木をポキポキ入れられた沼が発光したって。
「ねー、もふさまも、みんなも、この集落に本当に何か感じない?」
わたしはもう一度確かめたけど、みんな特に感じることはないそうだ。
んー、そこが気になるけど……そうか同化していれば、かえってわからないものかも。
「姉さまは何かわかったの?」
エリンがわたしの腕にしがみついてきた。
「夜、魔物が凶暴になる、そっちはわからないんだけど、この集落が普通でないとは思った」
「それで、どうする?」
兄さまがわたしに向かって言った。
「魔物が凶暴になる話を受けたのは、情報は集落の人から聞けると思ったから。
彼らに応えるようにジョギさまが言ったんだから。でも彼らには記憶の欠落がある。それじゃあわかることもわからないっていって、ジョギさまと話したいと思う」
ジョギさまが本当に夜魔物が凶暴になる理由を知りたいと思っているんだったら、ね。ジョギさまが本当のことを言ってくれないと、わたしたちも本当のところはわからない。
「姉さまの〝スイッチ〟が入った!」
「え?」
「おじさま、姉さま〝スイッチ〟の入った顔したよね?」
兄さまはくすりと笑う。
「そうだね」
「な、なに、どういう顔よ?」
「キラキラしてる」
『獲物を見つけた顔』
「嬉しそう」
『やり通す顔』
『見つけた』
『わかった』
「逃がさない顔でち」
な、なんか若干クレーマーが難癖つけるところを見つけた的に聞こえるのは気のせい?
今日はジョギさまと絶対に話すよ。
アオに魔力を10000戻してもらう。ジョギさまが逃げようとしたら捕獲するつもりだ。
「リディー、顔がちょっと怖いよ」
控え目に兄さまに注意された。
頬をペチペチと叩いて整える。
ジョギさまに話がある時は前もって、ご神木のどこかに赤い布を結んでおくんだって。
今回はちゃんとご神木に赤い布を結び、ジョギさまがウロから出てくるのを待つ。
ジョギさま、ご登場だ。寝起きって感じがする。
「ジョギさま、外のものが話があるそうです」
ジョギさまは以前と同じところに止まり羽をバタバタさせた。
『原因を突き止めたのか?』
少し焦りが見える。
「ジョギさまは突き止めさせたくないんですよね? それがなぜかはふた通り考えられますけれど」
「リディア、やる気でち」
アオ、小さい声でもやめて。笑いそうになっちゃうから。
『……面白いことを言うな、人の子よ』
よし、今日は釣りあげられた。
『そのふた通りとは?』
兄さまの真似をしてわたしも仮説を立ててみた。
謎解きは嫌いじゃないけれど、ホラーとか幽霊みたいなそういう系は苦手。
だ(・) か(・) ら(・) 悠については推測できたけど、集落についてはわからないし、どちらかというと本気で知りたくないモードなのよね。
わたしの仮説では、夜に魔物が凶暴になる原因より先に、悠のことの方がわかってしまった。
本来わたしたちが頼まれたのは悠の居場所を探ること。
ゆえに達成したといえば達成していて、それを精霊に伝えればいいだけになってしまった。それにこのまま進むとどうしても不可解な話になっていきそうで本気で遠慮したいけれど、知ってしまったのにずっとそのままにしておくのもどうかと思えて……。
「ひとつは、単純に悠のことを話したくない。
もうひとつは、困っているのは事実なんでしょう。なんとかしたい。でも解決できない何かがある。だからそのままきた。今更、変えることはできない、ゆえに原因を突き止められては困る。だから中途半端な糸口を示してきた」
ジョギさまの目がスッと細まった。
羽ばたこうとしたから、わたしは風で作ったこよりでジョギさまの片足をフォールドし、その足が乗っている木とを手錠のようにかけた。
『む、娘、何をした?』
「ジョギさまには足環をつけ、その片方を止まり木にかけました。
つまり、ジョギさまはわたしに捕まえられたということです」
ジョギさまは慌てふためいている。
「あ、悠さま、使い魔を通して話されているのはあなたですよね?
あなたの出した問題は解けていませんが、悠さまについては分かりましたので、もう解けなくてもいいんです。あとは精霊の皆さんに報告するだけなので。
ただ、心の準備が必要かと思って、あなたに伝えるために、わたしはここに来たのです」
「ね、姉さま。どういうこと?」
みんなにはっきり伝えなかったのは悪かったけど、推測の域を出ていなかったから、言いにくかった。それにここで話したら 聞(・) か(・) れ(・) る(・) 可能性があった。だからみんなにも言えなかったんだけど。
でも釣れたので、読み通りだなって思った。
「言った通りよ。ジョギさまは悠さまの使い魔ってところね。悠さまとは以心伝心できるのでしょうけど、人族と話すことはできない。だから人族と話す時は悠さま自ら話していたというわけ。
精霊たちの領域では誰にでも言葉が届くようだけど、そこから離れると〝精霊の加護〟がないと精霊の声は聞こえないみたい。もふさまやもふもふ軍団が魔物の声が聞こえないのは変だわ。わたしが聞こえるのに。
だとしたら精霊じゃないかと思ったの」
「それなら、あの人はどうして話せてるの?」
ジョギさまとの橋渡しをしてくれる人を、ノエルが振り返る。
そう、わたしもそれでイマイチ踏み切れなかったんだけど……。
「……この集落は悠さまの一部、になってるんですよね?」
そう見上げれば、ジョギさまの瞳は悲しそうな色をたたえいていた。