軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1316話 13番目を探せ㉒仮説(中編)

兄さまと顔を見合わせる。

「……検証してみないと、どちらが正しいかはわからないな。

どちらも当たってると思えることもあるし、両方とも穴がある」

「「当たってることと穴って?」」

双子は息もぴったりに言って兄さまに詰め寄る。

「まず、エリンの仮説。

子供たちの反応から何かおかしいと感じた。そこから導いて繋げたのは凄いと思う。そしてあの影が記憶を奪っていてそれを糧にしているとはなかなかの発想だ。突飛ではあるけれど、ちゃんと糧になるから記憶を奪う、よって子供たちの記憶が一部欠けているという筋が通っている」

兄さまに褒められると、エリンの鼻がぐんと上がる。

「エリン、すごいでち」

アオが褒めたから余計にだ。

「けれど自分でも言ってたように、言葉が違うから子供たちとの意思疎通もはっきりしていないことや、エリンの思い違いかもしれない点と。消されている記憶に含まれるのかもしれないけれど、あの影の触手の話が全く出てこなかったから、そこが通らないとも思える」

兄さまはよくできましたといったていでエリンの頭を撫でた。

エリンは満面の笑顔になる。

「ノエルは周りをよく見ているね。薄暗いと思ったことから、形状と中をも見て、かなり古いものだと調べ上げている。生活に必要な粉や水の量も、集落の人たちの言ったことを鵜呑みにせずに調べたんだね。そして水を足してきた。ノエルは優しいね」

ノエルの頬がピクッとする。褒められて嬉しいんだね。嬉しいけれど、素直にそれを出せないのはノエルの性格だ。わたしには甘えてくるけどね。

「ノエルの推測はもう少し踏み込んでみないと答えは出ないだろう。他にも水瓶になる何かがあるのかもしれないし、粉も同様のことだ。

ふたりともあの影の触手と関連づけて、思った以上にいい答えをくれた」

ノエルとエリンはお互い目を合わせて、笑い合う。

兄さまがうまく仲裁してくれた。

駄々のこねあいになると、エリンが非常に厄介になるから結局ノエルが折れることになるんだけど、騒がしくなるからね。

「兄さまたちの仮説はどんなのだったの?」

わたしも知りたい。

「リディー、教えてあげて」

え。そうくる!?

『リディア、話すがよい、聞いてやる』

も、もふさま。

なにその双子だってしっかり考えていたんだから、年上のわたしはもっと考えられていた的な空気は!

そう、エリンとノエルがしっかり集落を見て回っていたことが凄い。

わたしはジョギさまや集落の人と話すことに気持ちが言ってしまって、言葉で聞くことにしか重きを置いていなかった。

わたしもちょっとは考えよう。

「わたしは最初、ジョギさまが悠だったらいいのになって思ったわ」

そう言うと、みんながクスリと笑った。

「でも違かった。その次はあの触手が悠だったらって思った」

そう言うとみんなうなずく。

得体のしれないところ。大きいところがまたそう思わせたのよね。

一番の理由は、そうだったら話が早くなるから助かるって意味合いが強かったんだけど。

そう話したあと、兄さまは悠はどうして逃げたんだろうって言ったのよね。

逃げたというのは、兄弟たちの元を去ったことを指していた。

姿が完全に変わったわけではない。兄弟にはよい方法がわからないとしても、神獣に助けを求めることもできたはずだし、それには兄弟のところにいた方が何かと良かったはず。

そして違う場所に居ることを選び、大陸に擬態して何をしているって話になった。兄さまは眠ることに逃げていると言った。助けを求めればいいのにそれもせず時が過ぎるのを待った。それが虫が良過ぎると。

あ、そっか。

「だから、そう仮定したの。あの触手が悠そのものか、悠の一部かそれこそ使い魔のようなものだと。

ところで、悠は大陸に擬態していると仮定したら、何をしていると思う?」

「大陸ってじっとしていないとよね。……眠ってる、とか」

「僕も同じかな。閉じこもっている」

「わたしもだわ。でも兄さまはそこを突いたの。

悠か悠の一部なら森の異変には気づくでしょうね。

わたしたちも2回遭遇したし、あの触手がわたしたちを通り過ぎた。

幻影みたいなものと思ったけど、あの触手はわたしたちの情報をもう持っている。

兄さまはもし悠だったら我慢ならないだろうことを言ったの。

大陸に擬態しているとしたら、それは逃げているだけだと。

何もせず待っていたって好機が勝手に訪れるわけない。もし助けて欲しいなら助けてと口にするのが道理だと。

そうしたら、あの影が釣れた……」

双子の顔が興奮して上気してきた。

「仮説が当たっている可能性が高いってことね? 怒って攻撃してきたのなら」

「タイミングだったかもしれない可能性はあるけれど、十中八九、悠と通じる何かね。悠はその発言を見逃せなかったんだと思う」

「じゃあ、どうするの? 影をふんじばる?」

「どうやって?」

「今から考えるのよ!」

顔を真っ赤にして憤慨するエリン。

「その前に集落に行って確認しましょう」

「そうだね」

兄さまがうなずくと、双子は驚いたように顔を上げる。

「「何を?」」