軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1309話 アダム不在❼カッコ良すぎる

謎が増えた。

聖力が苦手なくせに、生きてるときは凶暴性を増す。だから生きてるときは聖力に近寄りたくないってこと?

でも神力にも弱い。うーーん。

ノックがあって身構える。

『フランツだ』

もふさまの声と同時に、アリとクイがドアを開けている。

『フランツだ』

『フランツだ』

ドアの向こうには、ラフな格好だけどバッチリ決まった兄さまがいた。

「お帰りなさい」

「収穫はほとんどないけれど、ナムルたちから聞いてきたことを話そうかなと思って。今、いい?」

「うん」

「じゃあ、居間に」

兄さまは父さまから言われていることを守り続ける。

わたしの部屋だって、もふさまやもふもふ軍団もいるし、全然ふたりきりじゃないから構わないのに。わたしの部屋に入らないよう気をつけている。

兄さまの後について、居間へと赴く。

甘いものが得意ではない兄さまに作ったケーキサクレを出す。

合わせるのはびわ茶にした。もちろん、ウチでとれたビワンの葉から作ったものだ。

『甘くない!』

我先にと食べ出したクイが驚いた声をあげた。

「そうよ。兄さま用のケーキだからね」

「え、私用のケーキ?」

「うん、甘くないケーキなの」

「へーー」

兄さまはフォークを持った。

「神官の日誌で何かわかったかい?」

兄さまはひとくち口に入れ、「これは好みだ」と笑った。

よかった。そうよ、兄さまが好きそうなもので作ったんだから。

「みんな湿気が気になるみたい。でも瘴気のことは一文字も出なかった」

「そうか」

「外で出くわしたとき聖水を撒いたら近寄ってこなかったって。

でも戦った時に聖水をかけたら余計凶暴になったそうよ。

剣の攻撃、火、水、風、土の属性魔法はあまり効かない感触で、神属性の魔法は効いたみたい。

生きているときは聖水が苦手みたいね。でも死してからなら見かけが普通の魔物に戻ったわ。一体どういうことなんだろう。

ナムルやトルマリンさんはなんて?」

「ナムルもトルマリンも第一大陸に行ったことはないそうだ」

そっかー。

「文献にもほぼ出てこない。

一般的に言われていることぐらいしか知らないと言っていた。

第一大陸は閉ざされた大陸であり、グレナンが滅びた場所でもある。

瘴気に長けていたグレナン民。瘴気の石や沼が多くて、人が住めない森のある危険な第一大陸でも生きていける知恵があった」

あれ、いま、なんか。

「グレナンが滅ぼされたのって……」

「伝心を恐れた他民族が根絶やしにしようとしたんだったね」

兄さまは辛そうな顔をする。

「伝心は本当は瘴木の……。兄さま、森で赤い木を見た?」

「……そういえば、見てない」

「使節団でベクリーヌに行ったとき、ドラゴンの使役術を塗り替えるために、赤い魔石を持ってきてくれたよね? あのときの元の赤い石は?」

「あれは城からもらったものだ。……そうだ。あのときもなかなか魔物に出会わなくて。出会ったやつも……こちらに気づいてないようで。それで赤い石を投げて食べさせて、それで活発になったのを倒したんだ。

今思えば、赤い石を食べる前、魔物は敵意がなかったかもしれない」

「そのときは赤い木や沼を見た?」

「いや。そういえば、一度も赤い木も沼も見ていない」

「みんなは?」

『見てない』

『気配もなかったよ』

と教えてくれる。

「魔物の屍に聖力を当てると姿が変わることから、瘴気は必ず関係していると思うの。でも瘴木の赤い石を食べたわけではないと思うのね。もし食べて活発化したのだとしたら……」

「目は赤くなるだろうし、倒した後に赤い魔石が取れるから、か」

「うん」

「すごいな、リディーは。少しの情報で導き出した」

「え。瘴気が関係しているということだけよ? 赤い木がどこにあるか、それから沼を知らないか、集落の人に聞きましょう」

「ベクリーヌに尋ねることもできるけど、そうだね、調べていることを広めない方がいいだろうしね」

「そっか。ベクリーヌは赤い石を持っていたのだから、木のある場所を知っているってことだものね。集落の人がわからなかったら、ベクリーヌに問い合わせるのもありね。赤い石が夜魔物が凶暴になることに関係しているかはわからないけど」

「そうだね。でもやることが見つかってよかったよ。瘴気の流れを突き止めるってことだね」

うんとわたしはうなずく。

びわ茶を飲む。兄さまも同時に飲んでいた。

カップをおき、尋ねられる。

「リディー、大丈夫?」

…………………………。

「……何に対して聞いてる?」

流すこともできた。大丈夫だと。なんでもないように。

でもわたしはそれを選ばなかった。

「アダムのこと、大丈夫?」

兄さまは限定する。だから聞き返す。

「……兄さまは、大丈夫?」

「あんまり大丈夫じゃないかな。

アダムはカッコ良すぎる。もし自分のためだったらさ、そんなことしなくても違う道あるだろって言ってやるのに」

兄さまはわたしをまっすぐに見る。

「こんな守り方をされたら、想われた人は心を動かされるよね」

やっぱり、兄さまはアダムの行動はわたしのためって思ってる。

やっぱり、そうなんだろうか。

国内の反乱分子を炙り出す、それなら国のため……。いや。終焉問題でわたしたちが次にすることは国内、国外の反乱分子を少しでも少なくすることだった。

アダムはそれを効果的に排除する方法を思いついた。

そう思うこともできる。

でも。……バッカスを巻き込もうとしていることからも。

アダムがわたしの周りに燻っていた困る出来事を竜巻みたいに巻き込んで、わたしから離れて行こうとしていると感じた。

学園に通えるようになるというのも。

なんか……わたしのためって気がして。

でもその答えはアダムしか持ってないこと。

「本当のところはアダムにしかわからないわ。

でも、にい……フランツはそう思って、何を考えたの?」

わたしはフランツの目を見つめ返した。