作品タイトル不明
第1289話 13番目を探せ③探索メンバー
兄さまが居間へと入ってくる。
「兄さま、ロサはなんだって?」
「アダムは意味のないことはしない。だからもう少し様子をみようと。私もそれに賛成だ。何か集中してやっているのかもしれない。だとしたら邪魔することになるからね」
兄さまはにっこりと笑う。
「何か仕事を任されてたのかな?」
「そこまでは私は知らないんだ……。
リディー、もう一度、精霊たちと会った時のことを時間の流れ通りに教えてくれる? それからリディアの気づいたことを」
押される感じでわたしはうなずき、そして思い出しながら精霊たちの空間に招待された話をした。
わたしだけじゃ心許なかったけれど、もふさまともふもふ軍団が一緒だったから、あやふやなところは誰かが覚えていて。見落とすことなく話せたんじゃないかと思う。
それからわたしの推理をいうと、兄さまは興奮して褒めちぎってくれた。
すごい観察眼だと言って、わたしの推理が当たっている気がすると後押しもしてくれた。えへへ。
「それじゃあ、ロサ殿下に頼んで人を派遣してもらう?」
わたしは何気なくを装い、静かに深呼吸した。
ここで間違えたら、除外されてしまう。
「精霊からわたしが頼まれたことだから、わたしが調べるよ」
「……リディー」
「それに瘴気のことを調べるには、わたしが一番適任だもん」
「でも、リディーは瘴気が苦手じゃないか。頭も酷く痛むみたいだし、聖水を飲んでも後にも響く。第一大陸に行った時も辛そうだったじゃないか。その瘴気の森の中に入るなんて」
「そこは何か考える」
「リディーはいま居場所を知られないようにしている。第一大陸にいたとなったら、どうやって行ったという話にもなるし」
「変装する。元々、人とは会わないようにするつもりだし」
「変装してもお遣いさまと一緒にいたら、リディーだってバレてしまうよ?」
「子犬もふさまの場合でしょ? だからもふさまには、人が乗れるぐらいの大きさになってもらうの。そしたらスノーウルフに見えるでしょう?」
兄さまはため息をつく。
「気持ちを変える気はない?」
わたしはうなずく。
本音を言えば、瘴気に近づくなんて自殺行為だと思うし、かなり嫌ではあるんだけど。瘴気の大元はどうにかしなくちゃだし、瘴気に敏感なのはやっぱりわたしだと思うのだ。
「わかったよ。でも私も一緒に行くよ? これは譲れない」
兄さまも?
「兄さまも有名人だもの顔バレするとまずいわ。もちろん変装するよね?」
「え? ああ、口元を隠すような仮面をするよ」
「兄さま、甘い!」
「え?」
「そんな怪しいことしてたら余計目につくでしょ?
わたしたちは姉妹の冒険者。ある依頼を受けて、瘴気の森の素材を取りに来たの!」
言っていて、ピッタリな気がしてきた!
「し、姉妹?」
「うん!」
兄さまをうーんときれいな冒険者にしちゃおうっと。
兄さまは額を押さえてる。
「リ、リディー、何を考えてるのかな?」
「兄さまの変装はわたしに任せて!」
「リディー、目がキラキラしてるよ」
「うん、だって兄さまきれいだもん! ただのメイド姿でもきれいだったけど、令嬢姿すっごく美しかった! わたしも兄さまを着飾らせたいと思ってたの!」
兄さまはさらに額を押さえたけど、わたしの目を見て力無く笑う。
「ま、リディーが嬉しいならそれでいいけど。
第一大陸で本当に動けるの?」
そこが、ね。
「対策は考えるから!」
兄さまはフーッと息を吐く。
「緊急性もないことだし、人員を割いてもらうのもなんだから、私たちだけで行こうか?」
「うん!」
わたしは兄さまと一緒と少しばかりはしゃいでいたので、兄さまが心の中で具合が悪くなったら自分が連れて戻るなりして、一度納得させるしかないだろうと思っていたとは、全くもって思い至っていなかった。
次の日、母さまと、エリンとハンナとわたしで兄さまを飾り立てた。
母さまはわたしが行動するのをいい顔しなかったけど、エリンが丸めこ……勢いで承諾させた。
エリンがノリノリでねー。
帰ってきた下の双子はわたしと兄さまが第一大陸に行くと知ると、自分たちも行くと言ってきかなかった。
心配する両親に、わたしが魔力ゼロであっても絶対に守りきるとねー。
微妙な間があった。エリンもノエルも実力はあるからな。
どっちかといえば、できるわけないでしょ?っていうより、やりすぎるな的な注意になってしまう。
思わず〝人〟が相手なら、誰かれかまわずやっつけないでねと言っておいたけど、だ、大丈夫かな?
もふさまやもふもふ軍団が言ってたんだけど。
人対人の戦いにエリンたちは向いていないそうだ。けれど、何も考えず殲滅していいとなったら、それをやってのけるだろうと。そう、相手が生きているように調節をする戦いが苦手ならしい。
「姉さまの敵にはいいでしょ?」と軽く笑う。
まぁ、エリンったらって母さまは冗談と思っているようだけど、そうかなー? 本気のような気がするのはわたしだけ?
父さまが、道に外れたことと判断された場合、これから姉さまと一緒にいられなくなるんだからな?と妙な諭し方をしたけれど
「もしエリンが追放になったら、どこかの国でも取ってきて献上でもするよ。
あ、姉さまの国を建ててもいいしね」とノエルが。
母さまは相変わらずコロコロ笑っているけど、冗談じゃないような……。
ま、それは置いておいて。最初はわたし双子を止めたんだよ。
エリンとノエルは双子だし目立つ。そこからわたしや兄さまも足がついたらまずいのだというと、自分たちも変装するという。
それが……猫獣人の変装で、もふもふの耳と尻尾をつけ。冒険者のような格好をして。髪色はウィッグで変えていて、ふたりとも男の子設定。あまりにも可愛かったものだから、……陥落してしまった。
わたしも冒険者風。テイマーなんだ。
タイツを履いてショートパンツ。これは動きやすい。
マントをしっかり羽織って。横結びのポニーテール。なかなか決まっているんじゃないかな。
兄さまはレイピアを使う美女戦士。
一見スカートにも見えるズボンに、細いウエストが強調される形のベストを着ている。胸には詰め物をした! 兄さまは意外に肩幅があったけれど、この服のチョイスだと線の細い女性に見える! 母さまの見立てはすごい!
元々顔が整っているから、お化粧も楽ちん。でも楽しい。こんだけ美女だとね!
兄さまは魔法を解いて地毛の黒い髪をひとつに結び。わたしも姉妹設定だから、それに合わせて黒色の髪のウィッグにしたんだ。
ひんやりしてそうな美女が爆誕した!
兄さまが胸の詰め物で動きにくいと言ったけど。
「戦闘は任せるにゃーーん」
とエリンは大はしゃぎ。ノエルはちょっと恥ずかしそう。
こうしてわたしたちは4人と、もふさまともふもふ軍団で、第一大陸入りをしたのだった。