軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1276話 ある秋の日

静かだ。

耳を塞いでいるみたい。

魔力がないと、風の音は風の音にしか聞こえない。

おかしいよね、もふさまが口を動かしても、ワウワウとしか聞こえないだもん。

でももふさまの言ってることはわかるよ。

頬擦りするな、だよね?

だけどわからないふりして、顔で、もふもふしちゃう。

レオが大きなあくびをした。

ドラゴンちゃんたちは暑いとでもいうように羽を広げて羽ばたくような仕草をする。レオによるとそれは独り立ちをする時がきた合図のようなものだという。

それぞれの種族にあった戦い方だったり、狩りの仕方、暮らし方がある。

人懐っこい子たちになっちゃったけど、この子たちはドラゴンだ。

それぞれ明日から同族の元に行くことになっている。

アリやクイたちも「小さい頃ベアに戦い方を仕込んでもらいに行ったんだ」の一言が決め手になったようだ。もうなんでも食べられるようになっているしね。

学んでここに帰ってくるんでも、そのまま同族と仲良く暮らすのでも、一匹狼で自然に挑んでいくのでも、元気で楽しくやってくれていれば、わたしはそれでいい。淋しいぐらい、なんてことはない。

こんな元気に育ってくれて本当によかった。

卵にヒビが入った時は本当にビビったもの。

わたしが不在にしているとき、領地や王都には何度かドラゴンが訪れていたそうだ。ドラゴンたちはとても礼儀正しかった。無闇に何かを壊すこともなく、人里に訪れ、言葉を理解しているようで「リディア・シュタインはここにいない」というと、みんな大人しく帰っていったそうだ。

後からどんなドラゴンかを聞いて、連絡済み。主に祝福の歌を歌ってのことで、来てもらうとバレちゃうので、お互いが行けるところで落ちあい、歌を歌ったりした。その連絡係はモフモフ軍団がつとめてくれた。

そんなこんなで、明日はドラゴンちゃんたちが旅立つ。

わたしは時々こうして魔力ゼロで過ごしている。

わたしを変に必要としている者にすれば、わたしの魔力ゼロって使い物にならないってことでしょ? だから、もうそう発表してある。

発表っていうか……。

光の担い手は痛みを自分の中に取り込んでしまうことがあると、王宮から発信してもらった。まぁ、どうしてそれがわかったかって疑問になるよね。司祭以上は知っていたことだけど、今度はそんな危険なことをどうして知らせないんだって話になる。

自然の痛みまで引き受けるようなことがなければ、そこまで危険はないって思われていたから無理はないけれど。ちょうどいいから言おうっていうことになった。

ちょっと特殊な光属性のタイプで自然の痛みを引き受ける者がいた。それはリディア・シュタインで彼女はそれに力を取られていて光属性が鑑定しても現れないくらいだった。そう彼女は元々光持ちだったのだ。

よく繋げるよな。それで穢れが溜まりそれが過ぎると命の危険もあることから魔力を取り除くことになった。オフレコの話であったはずだけど、それはまことしやかに皆の知ることになった。

鑑定されても〝ほら、ないでしょ?〟とするために、魔力空っぽで過ごすときが今後でてくる。というわけで、そんな状況でも慌てないでいられるよう練習をしているのだ。

ちなみに、母さまとエリンとノエルは司祭さまに診ていただいた。

魔法士長さまの伝手で。エリンとノエルはかなりイレギュラー。だって、光持ちって言ってないから。

エリンはわたしの妹ということで、同じように鑑定で光持ちと出ていないだけかもしれないということにし、ノエルは双子だから一応というていでねじ込んでもらった。エリンとノエルは光魔法は隠蔽したままね。

結果は、母さまは普段の浄化が功をなして穢れはあるものの、浄化しながら過ごせば問題ないという診断だった。

エリンとノエルは隠蔽も効いて、全く問題なく穢れは見当たらなかった。光属性もないとの診断がおりた。

ホッとした。

ドラゴンちゃんたちがもふさまに寝そべるようにしているわたしに乗っかってきて、手を甘噛みしてくる。甘えっ子になっちゃったな。明日からこれで大丈夫かしら。幸い魔力がなくても、もふもふ軍団もドラゴンちゃんたちも変わりなく、わたしに接してくれる。

ガゴチの式典に招かれ、リディア・シュタインは奴隷を解放する先導者となり、ガゴチの花嫁となると、ガゴチの将軍が公言した。その奴隷解放も正しくは獣憑き奴隷解放なんだけど。

わたしはそこから雲隠れしたことになっている。多くの人からそれについてのコメントを求められているけど、わたしは不在。そんなところに飛び出てきた、命が危なそうなので魔力取り除いたんですよ話。どこでどうするとそうなった?と興味は湧くよね。

でも今までいろんなことがあって、取り沙汰されてきたけど、みんながうまく話をまとめてくれてるおかげで、未だわたしは深層の令嬢っぽいんだよね、噂だけを聞くなら。

最初はリディア・シュタインが何かやらかしたって一報が巡るけど、そのあと姿が見えなくなり、何かが起こった後から発表がされれば、わたしは頼まれたことをしていただけだし、ゆえに口をつぐんでいただけ。その一部が切り取られたようにスクープされたから、しでかしたみたいにされているけど、よくよくみてみれば実はわたしは被害者にしか見えないって構図をとってきた。みんながそういうふうにしてきてくれた。令嬢ゆえに口を閉ざしている、ともね。

だからか、今回のことも、ガゴチがあんなことを言い出して逃げたのは本当だろうけれど、そのうちに身体に何かあって調べてみたらとんでもない欠陥がわかり、魔力を取り除いて、今は休養中みたいに納得してくれてるみたいなんだな、これが。

コメントはとりたいみたいで、家族や親族のところにも人は行ってるみたいだけど。

アダムが世の中の人の興味はすぐに移り変わるって言ってたけど、まさしくその通りだね。周りも静かになりつつあるから、本当に学園にも通えるようになるかもしれない。バッカスやセインには気をつけるべきだけど。

知り合いや友達からも手紙がひっきりなしに届いている。魔力を取り除いたことに対するお見舞いのね。

ドラゴンちゃんたちが旅立ったら、領地の家に戻り、少しずつ外に出て、様子を見ていく。

わたしたちはその前日、ドラゴンちゃんたちと触れ合って、のんびりと過ごした。