軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1275話 笑っていて

わたしが魔力を無くしたと情報を出すのは、わたしの身を守る術が減るという点で危険が増える。

ガゴチは置いておくけれど、外国勢やバッカスには嬉しい知らせだろう。

けれど魔力をあてにして目をつけられていたなら、わたしに興味がなくなるかもしれない。そこは一か八かの賭けとなる。

とにかくこれからはバッカス、セイン、ガゴチ、の目的を探ることが重要になりそうだ。

この間の件でユオブリアからセインに流れていった人たちは、終焉を後押しする国内勢力一部だったのかなと思っている。全部ではないだろう。まだ国内にも燻っている、多分。

わたしは現在、ルームやダンジョンに住んでいる。

学園に通うのはまだ無理だ。周りが騒がしいし、魔力がないと開示するからね。

危険が増すかもしれないから仕方ない。とても残念だけど。

でも魔力が本当になくなることに比べたら、全然いい。

こうしてもふさまやもふもふ軍団、そしてドラゴンちゃんたちとダンジョンを攻略しながらそう思う。

大業を使わずに戦う術を習った。

身体を使って動けば疲れるはずなのに、まぁ疲れるは疲れるんだけど少し休めば回復することを知った。なにかの痛みを常に受け取っていたのは事実だったのかと実感できるほど、わたしは身体がしっかりしていくのを目の当たりにした。

今までは戦っても戦ってもレベルはそんなに上がらなかったのに、面白いように上がった。体力もついたし、足はまぁ遅いけど、前よりは早くなった。

そして身長が少しだけ伸び、肉付きも良くなった。体重も増えた。

身体が一気に目覚めたように、わたしは成長した。急な成長のようで、身体が軋んで痛いのを体験した! 痛いのは嫌だけど、成長に伴うものだと思えば納得できる。

ホルクに例の件を話して、とにかく周りに気をつけてと伝えることもできた。

そんなある日、アダムがふらっとダンジョンにやってきた。

わたしたちは大歓迎して、一緒にダンジョンを回った。

お昼ご飯を食べ、思い思いに昼寝したりおしゃべりして。

そんな時にアダムが言った。

「学園に通いたいよね?」

正直に答える。

「もちろんそれはそうだけど、魔力がなくなることに比べたら……。

だから、わたし、学園に通えてなくても満足してる。とても幸せなの」

心からそう思う。

もふもふたちと話すことができて、こうして好きなことをして暮らせている。

それはなんて恵まれていることなんだろう。

アダムはわたしを立ち上がらせた。

「ずいぶん背が伸びたね」

そう言って抱き上げようとするからストップをかける。

「アダム、重たくなったから、計らないで!」

アダムはわたしの発言を無視して軽く抱き上げた。

「本当だ。前よりは重たくなった」

「あのねー、女の子にそれは厳禁な言葉なんだけど!」

アダムはわたしをおろす。

「前ならどこに女の子がと言ったところだけど、目の前にいるのは立派なレディーだね」

とわたしの前で優雅にお辞儀をした。

「リディア・シュタイン嬢。僕はあなたに会えてよかったです」

美しい顔でそう言った。あまりにもきれいで、急に思いもしなかったことだったもんだから、一気に顔が熱くなる。

「ど、どうしたの? わ、わたしも思ってるよ。アダムに会えてよかった」

「本当に?」

「うん。ハンソン家で初めて会ったね。ふたりのいいお兄ちゃんで。まさかあれが替え玉だとは思わなかったよ」

といえばアダムは笑った。

「まさかシュタイン家のお嬢さま本人が乗り込んでくるとは思わなかった。

一番小さいのに、洞察力があって、自分の意見をはっきり言った。

ピアノの演奏も見事だし、啖呵もかっこよかった」

ああ、そうだ。あの時は売られた喧嘩をかって、ピアノを弾いたっけ。

「懐かしいね」

ふたりで頷きあって回想してた。

馬車で送ってもらうことになったけど、いちいちもっともで気に障る奴と思ったっけ。

水遊びしてたら咎められて、ご飯を奢ることになって。

ミニーも一緒に街を回ったりもした。

兄さまたちに会いたくてメソメソしてたら、方法は奇抜だったけど、王都へと連れて行ってくれた。

目のつけどころがすごくてさ。でも素直に尊敬できないというか、悔しいというかで、不思議な存在だった。

そしてアダム・ハンソンではなかったことがわかって、えーっとなったんだっけ。

次に再開したのは学園で、追い回してくる悪ガキから逃げているところで助けてもらった。でも名前を騙った相手だから素直にお礼も言わず……。

クラスが同じになってやっぱりいっぱい助言をもらっていたのに、いつも素直に受け取っていなかった。

そのうちにアンドレ殿下だとわかり、さらにアンドレ殿下の影ということがわかり。

今までどれだけアダムに助けてもらっていたかわからない。

そして二人に共通する歪みを請け負う役所だったから、惹かれるものがあったのかもしれない。

「君はもうすぐ学園に通えるようになる」

「え?」

「世論はどんどん更新されていくから。君にばかり興味を持たないよ」

え、ああ。

「アダム、何かする気じゃないよね?」

「学園のみんなによろしく言っておいて」

「アダム?」

アダムがわたしの両頬に手を添えた。

そしてほっぺを横に引っ張る。

「なんでこんなに伸びるんだ? それにもちもち」

とお腹を抱えて笑い出す。

わたしは頬を押さえてマッサージ。引っ張られると痛いんだから。

「リディア・シュタイン。いつも笑っていろ。君が笑っていると、それだけでなんだか心があたたかくなるから」

なんだろう。

何よそれ?って返しも、何言ってるの?という言葉も思い浮かんだけど。

アダムの顔を見ていたら、わたしは笑い返していた。

アダムの心があたたかくなればいいなと思って。

<19章 レベルアップと北の聖域・完>