作品タイトル不明
第1266話 歪みゆく世界⓭創造主を超える魔力?
「謀る力?」
ーー本体は動けないから、意識だけで漂い、そなたらの記憶から姿が近しいものに謀った
ああ、そういうことね。
わたしたちに別の姿=白キュアの姿を見せていた。
これが謀っていたというわけね。
ん? それが本来の姿?
獣だったの?
ーー見習いになる前、我は先ほどの格好の娘と同じ獣であった
え、ん?
キュアは蝙蝠になれるんだ……。
そういえば、と思い出す。
キュアがさ、料理を作るのを手伝ってくれるとき、すっごく真剣だったんだよね。
楽しい? 料理好き?って聞いたら、わたしに食事やおやつを作りたいって思ってるって頬を赤らめて、胸がジーンとしたっけ。
キュアはユオブリア語もすぐに上手になったし、頑張ってるからご褒美は何がいい?って聞いたんだ。
そしたら、「お嬢さま、お願いを聞いていただきたいです」っていうわけ。
うん、いいよって答えて、なぁに?と聞いたら
ヘリからオッケーが出たら、自分が作ったものを食べてくれるかって上目遣いに問われて。嬉しい、楽しみにしてるね!って言ったんだ。
それなら何か作ってもらおうかなと思うと、ヘリが止めるんだよね。
キュアにはまだ早いって。手つきを見てもそんな危なっかしいこともないとは思うんだけど、ヘリがいうからには、何かあるんだろう。
「お嬢さま、キュアはまだ練習中ですので、お出しするにはまだまだ時間がかかりそうです」
ヘリはわたしに目配せしてきた。
「何が良くないのかしら?」
尋ねると、ヘリは言い淀む。
「その……材料が」
材料?ってわたしは首をかしげた。
「私の大好物、お嬢さまもお嫌いですか?」
瞳をうるうるさせてた。少し嫌な予感がしたけど「ちなみに、何?」って聞いたら「カエルとか蛇とか、おいしいんですけど!」と言われて「それはちょっと」っと待ったをかけた。
心の中でヘリにお礼を言ってた。
そうか、キュアは蝙蝠だったのか。なるほどー。
キュアとはガゴチで別れたきりだ。彼女はガゴチから引き上げるぞと言ったみんなに、自分は残ると言ったそうだ。それを聞いた時は驚いたけど。
ユオブリア語よりフォルガード語の方が達者なようだし、あちらには同じ獣の姿になれる人たちもいるから居心地がいいのかもしれない。ガインも預かると言ったそうなので、キュアの思いを尊重した。
お別れの挨拶もできていないから、キュアのことを口にするにはちょっと胸が痛かった。それがこのすっとこどっこいの見習い神がキュアに似た姿になって、いやでも思い出してしまった。
白状すると、淋しかったんだと思う。キュアがガゴチにいたいと思ったことを。
キュアの好きにしていいって口では言いながら、いてくれることを当然のように思ってしまっていたのかも。だからひとまずキュアのことはあまり考えないようにしていて。
今、淋しかったんだと思うことができた。キュアとの一幕を思い出して笑いそうになって。
次にキュアと会ったとき、心から喜べるとわたしは思った。
見習い神が姿が似ていると言ったのは、キュアの本来の姿のことみたい。
さすが見習いでも神だね。わたしもアダムも本来のキュアの姿は知らなかったのに。
わたしたちの記憶の人型の姿のキュアを見て、そこまでわかったなんて!
仕組みはよくわからないけど、聖なる浄化が起こり、悪しき魔力になっていたものが浄化され魔力量が減った。
偽りの姿を象っていられなくなり、仮の姿には変わりないけどより脆弱な姿になったみたい。
「聖なる浄化はリディア嬢が?」
ルシオの声にわたしは反論。
「わたしは何もしてないよ?」
ーーリディア・シュタインの聖なる言霊が、我に沁みて浄化された
聖なる言霊!?
「どの文言が??」
わたしは驚く。だって、わたしがやったなら意識ないよ。やろうと思ってやったことじゃないよ。
兄さまが吹き出す。
「リディーの気持ちが込められていたから、それがきっと届いたんだよ」
え? どういうこと?
「リディーは創造主の辛い気持ちをなんとかしたいって思ったんだろう? アレに今まで苦しめてこられたのに」
うっ。
いや、今だって、わたしは見習い神を警戒しているよ。
ただ……キュアの姿だったから。
うーうん、心がギュッとなる辛い気持ちはわかるから。嫌だから。だからそれを見るのは辛くて、その辛さが少しでも安らげばいいとは思った。
それが、言霊に乗ったの? 聖なる浄化ができてたの?
わたしにはちょっと信じられなかった。
ーー聖なる浄化を味わうことになるとは
不思議な気持ちだ
「悪しき魔力が浄化され、無駄に悪意を振りまけなくなったということか?」
イザークが容赦なく言った。小さな蝙蝠に向かって。
蝙蝠のつぶらな瞳はわたしを見ていた。
ーー我の封印が緩んだのは、リディア・シュタインの魔力に触発されてのこと
我を封印したのは、現創造主だろう
現創造主の封印を緩めた魔力だ、リディア・シュタイン
祝印しちゃったからかな? 魔力が巡りに巡って、ここまで届いてしまったってこと?
ーー無意識にお前は何かの痛みを引き受けているようだな?
な、何を言い出すんだ?
わたしは表情を変えないように気をつけたけれど、その感情にいち早くもふさまは気づいてわたしを見上げる。
ーー知っておったのか
蝙蝠がそう口にすると、みんなの視線がわたしに移った。