軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1262話 歪みゆく世界❾滅べばいい

「魔力を暴走させるって? 解決した原因って?」

兄さまは思い当たっているように鋭い目をしている。

「母さまのあの件……」

兄さまはできるならば口にしたくもない思いを察してくれて、またわたしをもふさまごとぎゅっとした。もふさまはわたしの腕からすり抜けて地面に着地。後ろ足で首をかいた。

リュックがパンパン。そういえばどうしてもふもふ軍団はリュックの中に入ったんだろう?

それにドラゴンちゃんたちはイザークやルシオの肩に仲良く並んで、わたしの方に飛んでこないな。目は合うけど。

ーーたとえお前たちが 集(つど) っても、我に届くことはない

なにせ封印されているからな

キュアの顔でドヤ顔しないで。

開き直ったよ。

確かに本体は封印されているのだろうから、何かできるとは思えない。

「この剣は神が関係した何かを斬ることができるようだ」

兄さまが冷静に言った。

白キュアは身を少し後ろに引いたけど、その反動か迫力のある顔をして前のめりになって言い募る。

ーー斬るというなら願ったり叶ったり

アンドレ殿下がいらっしゃらない、アンドレさまが幸せでない世界など滅べばいい

その音が耳に入り意味が頭の中で繋がったとき、戦慄した。血の気がひいた。

創造主の現在の願いが生きているのでは?

見習い神がコンタクトをとれた誰かに願ったのはわたしの不幸せ。わたしの闇落ち。日本の文化に触れてるだけあって、命を落とすではなく、生きたまま苦しむがいいってところが妙に感化されてる。

でもそれは表向きの考えで、実は世界が終わればいいと思ってるんじゃないの?

世界はその願いを受け取っていて、世界を終わらせようとしているんじゃないの?

だとしたら……なんかとんでもなくまずいことの気がする!

「そうほざくぐらいなのだから、力は本当にないようだな」

イザークが感情を込めずに言う。けれどそれがイザークなだけにそこはかとなく怒りを帯びてきているようで、より怖く感じる。

馬鹿にされたと感じたのか、白キュアの顔が赤くなった。

ーーお前らの息の根を止める力ぐらいはある

だが、もっと苦しめるためにしないだけだ

『創造主は創造主ゆえに、創造した命を奪えないはずだ』

え?

もふさまを見ると、もふさまもわたしを見た。

念話だ。もふさまは今、わたしにだけ聞こえるように話した。

わたしはゆっくり見習い神へと視線を移す。

もちろん封印されているからってのもあるだろうけど、直接攻撃してこない理由。そうか、創造主ゆえに、彼女は創り出したものは自分の手ではどうにかできないんだ。それなら世界もそうだろう。彼女は壊せない。自分で命の粉を振りかけた世界であるゆえに。

彼女は無害だ。意識が浮上したときに誰彼かまわず、わたしへの悪意を植え付けることさえしないでくれれば。

彼女は今、アンドレ殿下がこの世界から消えたのはわたしのせいだと思っている。アンドレ殿下の最期を正しく認識してもそれは変わらない……。わたしのせいだと思い込みたくて思っているのだから、それを変えるのは難しいだろう。

だけど彼女を止めるには、その意識を変えるか、意識が浮上しないようにするか、それしか手はない。

「今まで手を尽くしたのよね? わたしへの悪意を植えつけてきた。でもうまくいっていない。この先も同じことの繰り返しだと思う。それさえやめてくれればいいんだけど。やめる気はある?」

白キュアは噛みつかんばかりの表情だ。言い方間違えたかな?

『リディアよ、何が望みか聞いてみろ』

もふさまに言われてうなずく。

「あなたの望みは何? どうしたら満足するの?」

ーーアンドレさまを亡くした元凶である、お前がこの世から消えるのが望み!

腕を組み、言ってやったとばかりの顔。

可愛らしいキュアの姿だから、なんか脳がバグる。

「どれくらいの頻度で意識は浮上するの?」

白キュアは首を傾げる。

ーーひと月に何度もということもあれば2年経っていたこともあった

まちまちで、頻繁ではないのね。

「あと80年もすれば、わたしは消えるわ」

ーーそれまで待てというのか?

我はこれからもお前がこの世から消えるよう、全力を尽くす!

「はぁぁああぁああ」

〝心底〟そんな修飾語が合いそうな息を兄さまは吐き出した。

「そんな 完(・) 全(・) な(・) 勘(・) 違(・) い(・) で、これまでリディーをいじめてきたんだと思うと、本当に腹が立つよ」

兄さまは言葉と裏腹に白キュアに向かって笑いかける。

笑っているけれど、底知れない何かを感じ取ったようだ。

ーー勘違い?

直接の原因はアンドレさまが身体を酷使したことだとしても、そう仕向けたのはそこのリディア・シュタインだ!

お前が魔力を暴走させなかったから、あそこで第一王子との縁を繋げなかったから、全てが狂った!

「いいや、僕は。リディア嬢は魔力を暴走させていないけれど、彼女が5歳のときに彼女はアイリス嬢とも会っているし、僕ともあってるよ。アンドレ殿下がリディア嬢を気にしていたから」

白キュアはちょっと驚いたようだった。

ーーそ、その時はまだシナリオから大きく外れていなかったのだろう

けれどリディア・シュタインはそれからシナリオを変えていったのだ!

兄さまは腕を組み、その上の人差し指が苛立ちげにリズムをとっている。

「それは違うな。シナリオがどういうものかなんとなく想像はつく。リディーはそのシナリオのリディアとは違う思考で違う行動をしたかもしれない。

でも恐らく、世界の流れはシナリオに沿おうとしたはずだ。

リディーはたびたび困難に合った。それはシナリオと違う思考だから起こった命運との衝突だったのではないかと思う。それは今日の今まで続いている。

しっかりとそのシナリオは生きているよ」

兄さまは確信があるようにそう言った。