軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1257話 歪みゆく世界❹同病相憐れむ

「アンドレ殿下を 騙(かた) るものが、何かとんでもないことをしようとして、そのひとつがわたしに何かすること。そう兄さまは怪しんだけど……」

アダムはアンドレ殿下の片割れだった。自発的に何かしたいんじゃなくて、アンドレ殿下を守っていただけ。

アダムはアンドレ殿下、そしてアンドレ殿下の愛した世界を愛している。だから壊させないと決めていた。世界を終わらせやしない。アイリスを死なせるようなことはしないと。

そう伝えると、アダムはわかってるという感じにうなずいた。

「アダムは意識のないわたしに、わたしの貢献により世界は救われるって。恨むならアダムを恨めって。来世でアダムの命を奪う権利を与えるって……」

アダムのぎゅっが強くなる。

「アダムが手から光を出して、わたしはバウンドした。

アイリスに、核を吸収しろって」

アダムがわたしの髪を撫でる。慰めとなればいいというように。

「アイリスはどうやってって聞いたけど、知ってるはずだって。7歳の時にわたしの聖なる力に触れ奪おうとしていたって。わたしがあの時吹っ飛んだのはアイリスの防衛の魔法じゃなくて、わたしが核を取られそうになってわたしも無意識に逃げたんだって。

あの時アダムは見てきてと言われたのに思わず手を伸ばしてしまった。

あの時手を出さなければアイリスはわたしの核を奪い……大概的には魔力の暴走に見えてそれで終わるはずだった。

わたしは死に、アイリスはわたしの力ごと手に入れて。

それを自分が邪魔してしまったと思っていた。だからアダムはこの役を引き受けたのね」

そこにアンドレ殿下が現れ、アイリスの心に寄り添って、アイリスはわたしの核ごと得て、わたしは死んだ。あっけなくわたしは亡き者になり……。

アイリスは女神さまからもらった力と聖なる浄化を使ってまずドラゴンを浄化した。

ドラゴンは纏った瘴気を浄化され、そして心にあった復讐の心も浄化され、興味がなくなったように飛び立った。

わたしはアダムの胸に手をつき少し押して顔を見上げる。

「兄さまがアイリスを突発的に襲って、それを庇ったアンドレ殿下をアダムが庇って、アダムは命を落とした……」

アダムは少し情けないようななんとも言えない顔で笑った。

「アダムはアンドレ殿下とアイリスに感謝されて、潮時でちょうどよかったと言った」

アダムは表情を変えなかった。

その後、アイリスは瘴気を全て浄化した。

その戦いと世界の危機は〝聖戦〟と呼ばれるようになり、聖戦で亡くなった人たちと悼むために碑が建てられ、そこに名を刻むことで、全てが良い記憶に塗り替えられていった。

歴代の聖女たちが成し得なかった、瘴気の完全なる浄化は、世界を救ったと言える。二人の功績からアンドレ殿下が王となり、アイリスは王妃となった。

孤児から男爵の養女になり、聖女の力を発現。第一王子の婚約者となり、聖戦の功労者。王妃までのぼりつめたアイリスの物語は語り継がれる。

身体が弱かったアンドレ殿下もアイリスがいつも聖なる浄化をし続けたことが功をなしたのか、国政をこなし、2女3男授かり、国も安定している。みんなが二人を祝福した。

アダムが再びわたしをぎゅっとした。

わたしはその時にアダムに押し寄せる気持ちの正体がわかった気がした。

アダムとわたしは同士なんだって。

なんていうか状況に都合のいい存在。煽りを喰らう。

アダムなんかまさにそうだ。生まれたときから〝影〟ってなんだよって思う。

理不尽でも理不尽の中でしか生きてなかったら、それさえにも気づかない。

誰が決めた? 誰のために? 自分は自分。人の考えなんか気にしない。

そう生きていくことしかできないのに。そう自分で決めているのに。第三者視点で見ると、自分は可哀想だったり特別的な枠に入る。

自分で自分の人生を選んできたって胸を張りたいのに。絶対そうなのに。

それを憐れまれてしまう。

そこがアダムと同じだった。

わたしは好きでもふさまといてもふもふ軍団といるだけだけど。

守護だの祝福だの、人は型に入れたがる。

わたしは楽しく暮らしたいだけなのに、それ以外を求めていると思われがちだ。

アダムは影から抜けたいこともあったろう。けれど、それよりもっとアンドレ殿下のことが好きだったんだと思う。仕えるとか、王族だとかそんなことは取っ払って純粋に好きだったんだと思う。だからその好きな人のためになりたくて、生きてきたんだと思う。

どこか似通っていて。その気持ちはわかるような気がして。

わたしとアダムは同じような傷っていうか痛みがあるんだと思う。

ーーわ、我の前でアンドレさまと抱き合って!

怒りを抑えたような声にハッとする。

抱き合うって。わたしたちは全然そんなんじゃなくて。

同じ傷を舐め合うっていうか、そういうことなわけだけど。

確かに端から見ればそうも見えるかもしれない。

そう思うと急に恥ずかしくなる。

わたしたちはウブなカップルのようにぎこちなく離れた。

それが癪に障ったらしい。

ーーゆ、許さない!

と声が上がった。

「アダムをアンドレさまって呼ぶの、やめてくれる?」

ーーお、お前に何が……

「僕はアンドレ殿下ではない。何度も言っているが」

アダムが言うと、何も言えなくなるんだな、白キュアは。

「聞いていたわよね。あなたはそういうシナリオを作ったのね。

あなたとアンドレ殿下の恋物語。世界の危機をも救ってしまうおまけつき」

ーーああ、そうだ。

だって課題はどんな箱庭でもよかったのだ。

因果律の計算が間違っていなければいいのだから

「課題の箱庭作りとは、因果律を連鎖させる計算をみるものだったんですね?」

アダムが幾分丁寧に聞くと、白キュアは頬を染めてうなずくのだった。