軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1256話 歪みゆく世界❸境遇

「会いに行ったの? 話したの? 何が好きで、何をして過ごしていて、何を夢見ているか知ったの? それでそんな結論を出したの?」

ーー見なくてもわかる

唇を噛みしめて耐える。

「リディア嬢、その本来のシナリオってのを話してくれないか?」

思わず目を逸らしてた。

「……わたしにもだけど、アダムにとっても、いいものじゃないと思うよ」

それでも聞く?と心の中で付け足す。

目を合わせる。アダムは普段と変わらない顔で頬を掻いた。

「ハハ、僕の境遇、客観的にみて酷いと思っていたけど、もっと酷いのもあるのかー。逆に興味湧いた」

勇者だな。

と、アダムを見上げる。

視界の端に映りこんだ白いキュアもアダムを見ていて、なにか言いたそうだった。

構わずわたしは話し出す。

「アダムはアンドレ殿下と双子だった」

「……双子?」

わたしはうなずく。

「アンドレ殿下の体が弱いから、二人でひとりのアンドレを演じてた」

「……ああ、そういうことか」

アダムはうなずく。

「ウチの母さまが亡くなって、その葬儀にアイリスが来るの。

わたしと話すんだけど、わたしはそれで魔力を暴走させる」

「……その死因は現在回避した原因と同じ?」

わたしは目を伏せる。

「その通り」

アダムは大きくため息を落とした。

「そこに小さなあなたが現れた。

その時は魔力が暴走しそうになり、アイリスが無意識に聖女の力を使って、さらにわたしが暴走しかけたのをアダムが止めてくれたのかと思っていたんだけど……」

言い淀むと、アダムは言いにくい良くないことなんだとわかって、少しコミカルに首を傾げ続きをと促した。傷つかないから大丈夫と言いたげに。

「これは終焉の戦いの後にわかるんだけど、わたしの魔力が暴走しそうになり、アイリスが無意識にわたしの聖なる力を取り込もうとしたみたいなの。それをアダムが止めたみたい」

ふーんと何度かゆっくりうなずく。それで?と促される。

「それはアンドレ殿下に様子を見てこいと言われたそうで。

アダムは思わず手を出してしまったけれど、終焉の時には気づいていた。

アンドレ殿下の真意は、アイリス嬢が聖なる力を無事取り込むのを見てこいってことだったみたい」

アダムは、あ、そういうことねーと鷹揚に首を振った。

それからわたしはできるだけライトに、でも起こった出来事については話していった。

白キュアも黙って聞いていた。

「そしてアイリスとアンドレ殿下の結婚式のまさにその時に、警報が鳴り響いたの」

有事に備えて王族が集まり、アンドレ殿下とアダムはチェンジしていたと伝える。

アダムもアイリスを慕っていたように見えたこと、それはいったほうがいいのかどうかわからない。憶測にしか過ぎないから、やっぱり見えた事実だけを話そうと思った。

辺境には近くの人たちが応援に行き、騎士たちもそれぞれの地の封印を守る箇所に送られた。けれどほぼそれは突破されることになったこと。

アダムが応援に行った北の辺境だけは守れたけれど、後は外国勢を呼び込む道となってしまったこと。

地の魔法陣を使った瘴気の封印はその役割を果たせなくなり、陛下が地下の瘴気のところにつめたこと。

王都まで国内勢力が入ってきて、挙げ句の果てには怒り狂った赤いドラゴンが飛来したこと。ロサたちとアイリスがドラゴンに対峙した。

やられそうになったところに助けが入り、それがアダムだった。

総攻撃をかけ、ドラゴンが片翼を地につけた時、くぐもった鐘の音が聞こえた。一定のリズムで何回も。

「……陛下が崩御されたのか……」

くぐもった鐘の音といったことでアダムにはわかったみたいだ。

陛下が崩御され、地下から黒い靄が漂った。

ドラゴンにも靄がかかり、真っ黒のドラゴンになったかのように見えた。

そんな時、アダムはアイリスにいった。

「君だけの力を使う時が来たって。けれどそれだけでは足りないから贈り物を持ってきたっていうの。アダムが合図すると……意識のないわたしを抱えた兄さまが馬車から降りてきた」

アダムが一瞬眉根を寄せた。

「イザークが兄さまを呼んだけど反応はなかった。操られている見たいだった。

みんな動揺するけれど、アダムは言うの。なぜ歴代の聖女たちが瘴気を浄化できなかったのか。それは聖女が完成された力じゃないからで、完成させるためにわたしが必要だった」

アダムの表情が曇り出す。

「意識はないけど死んでないくらいの状態のわたしじゃないと力をうまく取り込めないみたい。あ、力じゃないか。わたしの核ごと必要なんだった。

みんなその事実を受け入れづらかったけど、世界の終焉を止めるにはその方法しかなくて。綺麗事を言ってる場合かって一喝される。

けどね、兄さまをそんな風に使うのは間違っているって。みんなもそうしなければならないのはわかっているから、他のことで反対することで、自分の心を守っていたのね。そこを責める。

でも兄さまのこともアダムは温情だといった。兄さまは意識がはっきりした時に自分のしたことに苛まれるけど、操られていたと思えば、その罪はアダムに擦りつけられるから、と。わたしに何かが起こる未来は変わらないから、どうせそうなるのだから、温情なんだと。

アイリスがなぜわたしから力を奪うことが、聖女の力の完成になるのかと尋ねて……」

アダムに引き寄せられていた。

抱きしめられている。

たくましい胸に抱かれて、わたしは続ける。

瘴気を持たないわたしは聖なる力に溢れている。

世界は神々と聖なる方とに作られたから浄化には両方の力がいる。

けれど女神の力を授けられた聖女には、聖なる浄化は育めない。相反する力だから。

聖なる浄化を手にしても相反する力だとアイリスには扱えない。だからわたしの核ごと必要なんだと。

この世界は神の力と聖なる力を同時に使わなければ威力は半減してしまうとアダムは言った。

同時にやればいいと言うなら、わたしとアイリスが同時に浄化をすればいいのではともっともな意見が出たけれど。

わたしは稀な血筋のおかげで魔力が多い。けれどアイリス嬢は魔力自体が少ない。

その差が歴然で。アイリスの魔力量を増やすのに、わたしの核ごといるのだと。

突然操られている状態の兄さまがアダムを攻撃した。何者だと。

兄さまはアダムを怪しみ、家宝の剣……あちらでは「神斬りの剣」と呼ばれていたものを手にして。それで操られている間それで自分を刺して正気を保っていた。何をするのか見極めるために操られたままのフリをして。

それでアダムは自分の素性を話した。

アンドレの双子。体の弱いアンドレを補っているのが自分なんだと。