軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第125話 ダンジョン再び③地下5階 砂漠エリア

サソリンの弱点は、と。鑑定。

サソリン:ハサミ型の手をもち、尻尾の先の毒針を使い捕食する。体は硬い殻に覆われている。天敵から身を守るため集団で行動する。目が悪い。

弱点がわからない。強いていえば目が悪い、だけど。

天敵って何よ? せめてそれがわかれば。

「短剣がいくつあっても足りませんね」

アルノルトさんがふぅと息をはいた。

「もふさま、サソリン、天敵知らない?」

『こやつは、初めて見た』

「アオは?」

「サソリンの天敵でちか?」

アオが首を傾げる。

「うん」

「鳥でち」

鳥? ! なんてことだ。ひよこちゃんがいれば……。

あれ、鳥、いるじゃん!

「アオ、飛べる?」

「飛べないでち」

「羽、バタバタさせて」

「こうでちか?」

「バッチリ!」

わたしは親指を突き出す。

わたしは掌を自分に向けるようにして、胸の前で手首と手首を交差させ親指同士を絡ませる。そして残った8本の指をパラパラと動かす。

「同じ、やって」

みんなわからないながらも、手を交差させ親指を絡めて指を動かしてくれた。

「もふさま少し大きくなって、わたし高いところ連れて行って」

もふさまにお願いして、みんなに説明する。

「高いところから、灯り、みんなの手当てる。鳥の影、サソリンに見せる。最後にアオ登場。大きな鳥、羽バタバタする!」

もふさまがライオンサイズになって、わたしを乗せてくれた。

無属性魔法・ライトは得意だ。夜おトイレにいくときに欠かせないから。

もふさまに少し高いところに行ってもらう。

父さまやアルノルトさんが、照明からサソリンにどうするのが一番鳥の影っぽく見えるかを計算しながら位置を考えてくれている。場所が決まったようで、砂山に隠れるようにして、上に手だけを出して影絵で鳥になるように手を組んでくれる。サソリンたちが登ってくる、赤い川に見える砂地をスクリーンに見たて照明を当てる。いい具合に坂だったからできること。

サソリンが鳥がきたと勘違いしてくれますように。

小さな黒い影が赤い川に投影される。

赤い川の流れが止まった。

アルノルトさんがアオを支える。アオは小さな羽をパタパタさせた。空は飛ばないようだがさすが鳥。その影が赤い川に映された途端、サソリンは蜘蛛の子を散らすように逃げていき、そこは砂だけになった。

「アオ、ありがと。みんな、ありがと」

もふさまにも首に抱きついてお礼をいう。

「ふふ」

アオが笑った。ときどき嬉しそうにしたりはするようになったけれど、笑ったのは初めて見た。

「サソリンが、おいらの影を見て、逃げて行ったでち」

「ありがとな、アオ。お前のおかげで助かった!」

「ありがとう、アオ」

ロビ兄とアラ兄がお礼をいう。

アオがちゃんと笑った。嬉しそうに。

うまくいってよかった。いくらもふさま、父さまやアルノルトさんが強いといっても数が数だったからね。

サソリンたちは目が悪く、天敵がいた。鳥というから、空から狙われるんだと思った。空から狙われる、異変に気づくのはきっと影に入るからだ。完全に思いつきで突貫工事だが、なんとかなってよかった。

アオがみんなとハイタッチしている。

父さまがわたしの頭を撫でる。そして抱きあげてくれた。

「砂漠は方向が分かりにくいですね。あと出るのはストーンゴーレム。あれは体力だけはありますから戦うのは億劫ですね」

珍しくアルノルトさんが辟易している。

『この階に試練はあるのか?』

「この階はないでち。マスターは無駄に体力を消費させるエリアって言ってたでち」

『斜め端か?』

多分、もふさまが確かめたのは階段のありかのことだろう。

「そうでち。沈まない太陽に向かっていくと階段はあるでち」

もふさまが大きくなる。

『我が運んでやろう』

お礼を言いながらみんなでもふさまに乗り込む。

もふさまが空を駆ける。

風に運ばれるだけの砂が形を変え、絵を描いている。

ところどころ、大きな動物の骨みたいのが、そのままの形で残っている。

どういうことと思うと、すぐ近くで黒っぽい魔物が砂に飲み込まれていくのが見えた。流砂?

ただ静かにこぼれ落ちていく砂に紛れ、魔物が足掻いている。

言葉なくわたしたちはそれをみつめた。

『掴まれ!』

もふさまの鋭い声が上がり、わたしたちは掴まりあった。父さまがわたしとアオの上に被さり、アルノルトさんは兄さまたちに被さる。

チラッと見えたのは大きな大きな石でできた腕。

腕?

もふさまの体勢が傾く。わたしたちは掴まりあい、父さまがわたしとアオをますます押しつける。

もふさまが何かをキックした。揺れまくったが、父さまに押さえつけられていたから無事にすんだ。

『大丈夫か?』

みんなで顔を合わせる。

「だいじょぶ」

そうっと下を覗きこむと、大きなゴーレムが仰向けに倒れていた。

倒れているのは地面だから小さく見えないとおかしいのに。

もふさまが倒したんだね。……あんな大きいのが立ち上がってちょっかいをかけてきたんだ。

少し強めの風が吹くと、ゴーレムの一部が風に持っていかれ、たちまち砂の塊になった。金色の何かが光る。

もふさまは駆け降りて、金色のものを咥えた。そして背中にそれを投げる。アルノルトさんがキャッチした。

金色の石だ。

父さまとアルノルトさんが喉を鳴らした。

もふさまは陽を追いかけ、階段をみつけた。わたしたちを下ろしてサイズダウンする。

「もふさま、ありがと」

わたしが抱きつくと、兄さまたちも真似してもふさまに抱きつく。

『腹が減ったな』

「地下6階は森フィールド。階段を降りてすぐにセーフティーエリアがあるでち」

「ではそこでお昼にしますか」

そう言ったアルノルトさんにみんなで頷いた。