作品タイトル不明
第1240話 聖域の特定❹乙女
いいながら本当に封印されていたのだと感じる。
もし封印が解けていた、もしくはずっと目覚めていたなら、もっと世界のことを知っているはずだ。
執着するにしても中途半端なので変な感じはしていた。
直接ではなく、間に誰かを介するところも。
その攻撃もまちまちだし。だから執着しているけど、揺さぶっているだけとか。他の人に揺さぶらせ、自分が最後に出てくるつもりだとか。そんなふうに思ってた。
なぜなら現在は直接対峙できる状態ではないから、というのが憶測していたことだ。
まぁ、だからここに来る気にもなったわけだけど。
直接出て来られないだけじゃなくて、情報も中途半端みたい。
聖域にはわたしは何日も前から来ているけれど、聖歌でアピールするまで気がつかなかったみたいだし。
封印が解けるといっても緩まるぐらいで、それもずっとなわけでなく、意識が浮上する時があるぐらいなのかな?と思えた。
ーーお前のせいだ
空耳ではなく、今度は感情の乗った声。
あきらかに負の感情、憎しみが溢れてる。
え? わたしのせい?
ーー我はこの地で眠り続けるはずだったのに、お前が! お前の魔力が!
吹き飛ばされる。
わたしをピンポイントで狙ったというよりあたり一帯だったのでシールドは発動せず、風を纏って防御したけれど、それで自身を守りきれるかはわからなかった。
どこかにぶつかり叩きつけられた時、風ではない何かがクッションとなった。
恐る恐る目を開けると、アダムに抱え込まれていた。
「アダム!」
ーーアンドレ殿下!
アンドレ、殿下!?
「怪我してない?」
「だ、大丈夫。アダムこそ、わたしを庇って」
「大丈夫だ」
わたしを背中に庇う。
「わたしは気がついたら、この暗いところにひとりだった」
「僕もそう。ただ気配があるから探って移動していたら、君が飛ばされてきた」
それで受け止めてくれたのか。
「姿を現したらどうです? 封印された見習い神は姿も保てないのかな?」
アダム、見習いでも神さまだから……。
アダムにも見習い神さまの声は聞こえたんだとホッとする。
ーーアンドレ殿下……
キュア!?
褐色の肌ではない普通の肌色だけど。
見た目はキュアそっくりだ。年齢もそれくらい。
「私はアンドレ殿下ではない。
その姿は私が知る少女と瓜二つだが?」
ーー記憶の中から一番近い自分の姿を模倣しました
アンドレさまの目に映れるように
ん?
「それはその少女を見たことがあるということか?」
ーー時々目覚め、意識を飛ばしていました
その中で記憶に残っていた少女です
なぜにアダムに従順?
っていうか、一番近い自分の姿を模倣って言った。
ってことは女の子だったの?
いや、性別があるのかどうか……箱庭の神さまは神さまと女神さまがいらっしゃるんだから性別ありか。あれ、いや、創造主の神さまは性別あるのかわからないけど。
ん、あれ? なんかわたし見習い神さまは男神だと無意識に思っていた節がある。
でも女神ならいろいろ腑に落ちる。
アイリス嬢の枝分かれした未来の恋物語を聞いた時、ゲームっぽいと思った。選択肢を選び取っていくことで未来が変わるマルチエンディング。
そうだよ、主人公がいて攻略していく男性は複数いてその中から選べる。そんな世界観をいいと思って箱庭を擬似し作り、命を吹き込んでしまう、それ、思いっきりその物語に傾倒したオトメが作ったに決まってるじゃん……。
真の創造主は乙女だったんだ。
そしてアダムというかアンドレ殿下に従順な様子からして、アンドレ殿下大好きだったね、これは。
「見習い神さまは女神だったんだね」
アダムがいえば、見習い神さまが模した白キュアは涙を流してる。
ーー 尊(とおと) い
ニュアンスがあれだ。もう絶対、のめり込んでる。
「何度も言うけど、私はアンドレ殿下じゃないよ?」
ーー知っています
……アダムさま
アンドレさまと瓜二つのお姿
でもアダムさまはアンドレさまではない
アンドレさまはいらっしゃらない
この世界に存在していない!
その女のせいでシナリオが狂ったのだから!
白キュアにめっちゃ睨まれている。
彼女はシナリオが狂ったのはわたしのせいって思ってるってことね。
ーー細部までこだわった
アンドレさまが生きていく世界
封印されても構わなかった
アンドレさまが自由に我が儘に生きられる世界なら!
そう言いきって、顔を両手で覆う。
ーーそれなのに、目覚めた時
アンドレさまと聖女の接点が途切れていた
我が作り込んだシナリオではなくなっていた!
両手をじわじわと外していく。表情のない白キュア。
ゆっくり顔をあげ、恐ろしい凄みのかかった目で見られた。
ーーお前のせいだ!
精神攻撃感知。
呪詛回避のレベルが上がりました。
精神体攻撃を浄化します。
え、尻尾切りじゃなくて浄化?
発動まで5、4、3、2、1……
周りが真っ白になった。