軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1231話 ガゴチの花嫁⓰手のひらの上

教会を出ると暗くなりかけていた。

マップを確認すると赤い丸が点在してる。

アダムと相談して街を出ることにした。

「宿を取る方が危ないから、野宿になるけど?」

「アダムが虜になっちゃうウチのテントを見せてあげるよ。

路傍の石も発動するから、見つかりにくくなるしね」

「それってあの感知されにくくなるスキルってやつだね、詳しく教えてよ」

アダムの表情は明るかった。わたしの身体のことを今まで気にしてたんだと思う。

赤い点を避けて、馬を借り、街道を走った。

日が落ちたので、そこで野宿することにする。

脇の森の中へと入り、テントを設置できそうな良さげなところを見つけた。

馬用のテントもある。そこは抜かりないよ。

先に馬のテントからね。

路傍の石を発動し結界石を四隅に置いて、安全な場所を作る。

お水と牧草を用意してブラッシング。

途中からアダムに任せて、人用のトイレをセットする。これ、大事。

それから人用のテントを広げる。

しっかり2部屋ある優れもの。

布団も選び抜いたのだから!

寝床を作り、テーブルと椅子を出して、テーブルの上に食料を。

ご飯は作り置きが十分にできなくて、ハンナや母さまに作ってもらっておいたのと、既製品を買い込んで入れておいた。

早速役に立つ。

ハンナ特製のシチューと、パン。特産物展で買ったという珍しい魚の干物と、お肉のスモークと、クセの強いチーズを出す。

ブラッシングが終わったアダムが入ってきて、うわーと感嘆の声を上げる。

「灯りもこんな明るくできるんだね、それでいて外に漏れてない」

ふふふ、そりゃそうだよ。

ダンジョンでも快適に暮らせるよう、改良に改良を重ねたテントだもん。

「ご飯にしよ」

蛇口タイプの水道もつけているので、感動している。

そうこの排水の部分をどうするかでアラ兄と悩み、開発していったんだよ。

テーブルについていただきますだ。

暑い日でもあったかいものをお腹に入れるとホッとするよね。

あったかいシチューは全てをほぐす効果があると思う。

魚の干物にアダムはびっくりしている。

骨についた身をパリパリと取るのも新鮮で、そのぎゅっとしまったところを味わっている。

スモークはお肉の脂のくどさが半減する気がする、というかわたし的には食べやすい。

クセの強いチーズと合わせると、めっちゃおいしい。

グレーンのジュースが飲みたくなって、それを飲んだ。

「お酒飲みたかったらあるよ、ワインも」

と勧めてみたけれど、アダムはジュースにしておくと言った。

「はー。君の身体が深刻なことにならなくてよかったよ」

アダムは心底そう思っているようで、なんかじんとくる。

「……ありがとう、心配してくれて」

「とんでもない。でも身体に残ってるのはあるんだろ? ブレドに頼んで宮廷の光の使い手に浄化してもらったら?」

「ハハ、わたし王族じゃないもの、王宮のはいいよ。母さまもいるし、自分でもかけられるし。聖水も聖酒もある」

「そうだった。母君も君も光属性なんだもんな」

「うん」

ごちそうさまをし、ふたりで片付けて、就寝。もちろんトイレの使い方はレクチャー済みだ。

馬にこんな長いこと乗ったことはない。ケインにだってない。

体は疲れているはずなのに、眠気が降りてこない。

興奮しているのかもしれない。

………………………………。

………………………………………………。

………………………………………………………………。

魔力が消えるってどういうことだろう?

5歳の時から、魔に親しんできた。

属性の魔法だけじゃない。

魔力で操作するスキルも全部使えなくなる。

魔法が使えなくなる、それはもちろん淋しいけど。

もふさまと話せなくなっちゃうのかな?

もふもふ軍団と話せなくなっちゃうのかな?

ノックスさま、フレデリカさま。

ドラゴン、みんなと意思の疎通ができなくなっちゃうのかな?

会話のできる魔具、あれも魔力がなかったら反映されない。

わたし、みんなと話せなくなっちゃうのかな?

あ。魔力がなくなったら、わたしから魔力が漏れることもなくなってハウスさん、仮想補佐たちともつながれなくなる。

ルームも……使えなくなる?

ハウスさんの魔力が尽きたら、完全に何もかも止まる。

今まで安全だった領地の家たちが、普通の家になってしまう。

空っぽダンジョンにも行けない。

話せなくて、ダンジョンにも行けなくて。

みんなわたしの魔力が好きだと言った。その魔力がなくなったら……。

わたしって本当に何も持ってないんだな。

魔力の恩恵で。ただそれだけだった。

わたしの手の上には何もない!

ああ、でも、それでもいいよ。わたしに何かできることがなくても、今ならいい。

それでも魔力を封印しなくちゃいけないことに比べたら、どうでもいいことたち。

もふさま、胸が痛いよ。

もふさまと話せなくなっちゃう。

どうしよう。みんなと話せなくなっちゃう。

みんないなくなっちゃう?

どうしよう。どうしよう……。