軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1225話 ガゴチの花嫁❿アルトとメル

1階は宿屋兼居酒屋になっていた。

ふたりと告げると、空いているふたり用のテーブルを手で示された。

聞こえてくるのはフォルガード語。

ユオブリアの人はいないだろうから、わたしたちに気づかれることもない。

……はずなのに、チラッとこちらに視線が走る。

あ、アダムか。すれ違って目に留まるぐらいにかっこいいもんね。

ああ、あちらではカップルの女の子がアダムを見ていたことで喧嘩になりそうだ。

ふんわりと思ったことの答えが出て納得する。

そっか街とかでわたしってわかるのは、わたしがもふさまやドラゴンちゃんたちを連れていたからだ。王都のいつものカフェでもわたしが一人で行ったら誰の目にも留まらないんだろう。

だから何ってわけじゃないんだけど、わたしっていうブランド?はもふさまとかドラゴンちゃんたちとかわたし以外のところによるもののようで、とにかくわたし自身には何もないと身につまされ、気持ちが揺れた。

考えに蓋をして、メニューを眺める。

とりあえず食べることに集中しよう。

お腹が空いているとロクなこと思いつかないから。

肉と野菜を煮込んだ料理がおすすめらしいので、それとこの地方の特産品の野菜を焼いたもの。それからパン、チーズとアダムはお酒を頼んだ。食事の時にアダムがお酒を飲むのは珍しい。

モツ煮みたいな料理。臭みは少しもなく、柔らかく全てが煮込まれている。バナナに似た野菜は皮をお皿代わりにスプーンで中をいただく。豆のようなしっかりした味にお塩をぱらっとかけていただくと、味が一層引き立つ。大皿で頼みシェアするのが一般的みたいで2人席でも十分広い。テーブルの上はお皿がいくつもあるのにまだ余裕があった。

「ねぇ、わたしあの時、どうなったの?」

アダムはチーズをかじってから答えてくれた。

「君はフランツとお遣いさまに守られて熱風の熱は当たってないはずだけど、風が凄かったからか気を失った。

あの騒ぎを収めるのに、聖霊王と君が退場するのが一番スマートだろうから、僕が連れて逃げてきたってわけ」

あの場で気を失ったのはわたしだけってことだ。

何が魔法があるから強い、だ。でもさ、人がバズーカー砲みたいになったら、驚くと思うの。でも、皆は気を失ったりしないんだよね。

「退場した方があの場はよかったから、気に病まなくていいよ」

「……ありがと」

お肉にフォークをぶっ刺して口に運ぶ。

「どこまでがシナリオだったの?」

チーズとパンも口の中に放り込む。

「……その話は部屋で」

そうね、誰かに聞かれたりしたらよくないもんね。

「さっきア……ルトの仲間に会ったよ」

ここではアルトとメルの兄妹設定だったっけ。果てしなく似てない兄妹だ。

「だろうね。何か話した?」

「アルトが偵察に行ったって教えてくれた」

アダムは琥珀色のお酒をぐいっと飲み干した。

「やることがあるっていってたことは終わったの?」

「あ、……ああ」

アダムはテーブルの上で手を組んだ。右と左の親指を交互に上にしている。

「確かめようと思って、真偽を吐かせようと思ったんだけど……その前にわかったんだ」

「わかった?」

「ああ。真偽がどうあれ、僕の望むことはひとつだと。だから真偽はいらない。関係ない、そうわかったんだ」

? つまり……

「……吹っ切れたってこと?」

「そう……なるね」

「そっか。じゃあ良かったね」

「……うん、良かった。だから、僕がこれからすることは、僕が望んでしたいからすることなんだ」

「何するつもり!?」

「それはタダじゃ教えられない」

アダムはもったいぶった。

「いくらなら教えてくれる?」

「え? 買うの?」

「買うよ」

アダムは吹き出す。

「君はやっぱり予測不能だ」

「煙に巻いて教えない気ね?」

「いずれわかるよ」

ったく秘密主義なんだから。

食事を終え、シャワーで汗を流し、夜着に着替えた。

アダムも収納袋に入れていたようで、ラフな格好をしている。

崩したくつろいだスタイルは初めて見るかも。

秘密基地でだって、アダムの部屋着はきちんとしたものだったから。

テーブルの上に灯りを置き、部屋の灯りは消した。

わたしたちの周りに盗聴防止の魔具を置く。

「シナリオの件だけど、君に知らせていたことがほとんどなんだ。

あちらが出てくるかもわからなかったし。世界議会を巻き込めるかで話も変わってくるし。

目指すは公爵から自爆の証言を取ってしかるべき場所に引き渡すこと。

その過程で必要なら聖霊王も演じるつもりだった」

確かにそれは聞いていた通りだ。

「儀式が始まる前の時点では、世界議会は証拠不十分で起訴には持ち込めないって言ってた。それをなん度も食いついて、あちらも何度も公爵に事情を聞きに行き無視され続けて来たから頭に来ていた。

今回この儀式に乱入してくるはずといって、本当に乱入してきたら、調書をとる。もし乱入して来なかったら、この件は流れるはずだった」

え、そんな一か八かなことになってたんだ。

そこら辺は知らなかったことだ。

やはり、アネリスト、予言の女神の話を盛り込んだことで、世界議会案件にギリギリなれたそう。だけど公爵側が無視し続けていたので、話が進まなかったんだって。

儀式が始まり、ガインに誘導されるままに、公爵は当事者としか思えない発言をした。それで晴れて世界議会案件になれたというわけだ。

アダムも出番はないと思っていたけれど、公爵が何者かに憑依された。

アダムは今までの情報を組み立て、予想していたことがある。それを元に憑依主と話したら、ほぼ当たっている手応えがあった。けれど、暴走を始めた。