軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1221話 ガゴチの花嫁❻緊急捕縛

「そ、そんな!」

セインの貴族たちは蒼白になっている。

女王でないという証拠の最たるものを見極められるシュシュ族が絶滅しているからだと言おうとしていたんだろうからね。

あの狐がシュシュ族かわからないといえば、鑑定結果を納得する形で出すだろうし。

この点ではセインが詰んだ。

さて。ガインはここから。セインが自分たちを嵌めるためのシナリオをどうやって崩していくんだろう?

いつまでも立っているのもアレで。わたしの役目は終わっただろうと、座り直す。

「で、ではガゴチは神聖国を取り込むつもりなのか!」

え?

変わり身はやっ。

と思ったのはわたしだけではないらしく、女性のほとんどは扇を広げた。陰口を言いたくなったんだろう。

「神聖国を私たちは尊重しますよ、もちろん」

「ガゴチの魂胆はわかった! そうやって女王をたて、その涙の証で成り上がるつもりだな?」

あーー、自分のしたいことダダ漏れだね。

それにしても予言の女神のいるアネリストは第四大陸。あの閉ざされた国交のない大陸と言われていたのに、予言の女神については知れ渡っているなんて変な感じ。彼女の予言知ってる人大勢いるじゃん。

「言いたいことはそれだけですか?」

ガインが公爵を見据える。

「な、なんだ生意気な小僧め」

「公爵ごときが一国の将軍に対して、どちらが無礼でしょうね?」

「ふん、一国? ガゴチが国を名乗ることじたい烏滸がましい!」

「はっ、ずいぶん年上ですので、そこは考慮するつもりでしたが、もう辞める。

お前がセインから出ずにどっぷりと守りに入っているから、なかなか手が出せなかった。のこのこ出てきてくれて助かったぜ」

な、なんか悪役みたいなセリフだよ、ガイン!

「な、なんだと?」

「お前の悪行はみんなわかってるんだ!」

「本性を現したな、ガゴチの血を引くものよ! 皆さん、ガゴチは犯罪者まがいなことをしてきた悪どい国。将軍が変わってもこの有様です」

「犯罪集団バッカスと手を組んだ輩が何をいうのか」

バッカスという単語が出た時、公爵側の動きが一瞬止まったように思えた。

「バッカスにドラゴンの卵を盗ませ、その卵をユオブリアに忍ばせた!

もっとも卑劣な行為だ」

「それこそ証拠があるのか?」

「貴様らとは違う、裏付けもなしに動くと思うか?」

ガインが手をあげた。

すると、貴賓席の下の出入り口四方向から、白いマントの騎士たちが出てきて……世界議会の騎士だ。

世界議会を巻き込めたんだね……というか世界議会案件になったんだ。

世界議会で裁いてもらうのが後腐れがないからね。ただこの議会の案件になるには条件があり、複数の国、大陸がかかわっていて埒があかないものにしか時間は割いてもらえない。

諜報員が取ってきた証拠だと証拠能力が薄いこともあり、それでガゴチも最初から訴えることは難しかったみたいだ。正攻法でいけないから、うちらに話を持ってきたわけだしね。同じ敵がいる者同士、共闘しようということで。

それでユオブリアのブレーンが巻き込まれ、証拠を打ち出した。

予言の女神の予言を引き合いに出したことで、大陸をひとつ追加できたんだろう。ちょっと詐欺のような気もするけれど。

公爵は雲隠れしている状態だったんで、彼の一派に情報を流して外に出したらしい。

のこのここんな舞台に乗り込んできてくれて、後は議会の騎士たちが捕まえるだろうから、今回は何も危険なことはなく終えることができそうだ。

証拠集めがひたすら大変だったろうからみんなは大変だったね。

儀式のどこで出てくるかもわからなかったし、どこでいちゃもんをつけられるかわからないから、〝聖霊王〟まで用意していたみたいだけど、それも使わずに済みそう。

彼らが捕まり、儀式を完了させれば、今回はコンプリートだ。

見事に埋まっている貴賓席。貴賓の方ももちろんいるが、半分はサクラだという。ガゴチの傭兵が潜んでいる。セインがもし仕掛けてきたら貴賓たちを守るために潜んでいるそうだ。だから今回は本当に公爵を誘い出すためのパフォーマンス。

本当にこんなうまくいくとは思わなかった。

会場では白い甲冑と白いマントの騎士たちが激しく応戦している。

キュアはガインに守られ、幾分端に寄っているみたいだ。

やがてセインの騎士が膝を折り、後ろ手で捕縛され、貴族たちも捕縛される。

「みんなガゴチに騙されているんだ、ガゴチとユオブリアに!」

公爵が憎々しげに言ってこちらを見る、視線はわたしに注がれている。

なんで、わたし?

「クラリカル・フォード・マグイア公爵殿、やっとご尊顔を拝見できましたな。我々はこれでも正規の手順を踏んだのですぞ。何度も足を運び理由を説明し、反論があるなら聞くと文書も残してきた。それを全て無視したのは貴方だ」

白いマントの人が声高に続ける。

「今回この儀式にあなたたちが乱入してくるはずだと言われ、話半分だった。

けれど、予想通りあなたたちは現れ、こちらが事前に聞きたいことを全て回答してくれ、事実と判断できた。

よって被害者側の訴えを受理し、ここに第3113ー93号が成立し被告を緊急捕縛する」

「何もわかっていない!」

公爵が下を向いたまま呟いた。

小さなつぶやきも、何かの魔法でわたしたちの耳に届く。

「手をこまねいている場合ではない。ガゴチが女王を得るなど言語道断。女王は我らセインのもの!」

静かに顔を起こした時、その目はいつか見た魔石のように赤かった。