作品タイトル不明
第1220話 ガゴチの花嫁❺勘違い
ガインだ。
ガインが輿に近づき、御簾をあげる。
中から出てきたのは、小さな女の子。冠やかんざしでよく見えないけれど、あれはキュアだ。
着物みたいな衣装だね。巫女姫って感じ。
ガインにエスコートされみんなに頭を下げる。
その間に輿は持ち去られる。
いつの間にか、祭壇みたいのがあるんだけど。
え、いつ? どこから??
他の人たちと全く違う理由で前のめりになる。
キュアは祭壇の前へと歩いていき、天を向いてバンザイをした。
そして胸の前で手を組んで祈るポーズをする。
光……キュアを光が包む。
うわーどんな魔法つかっているんだろう。
みんな目が釘付けになってる。
その時入場してきた門の辺りが騒がしくなった。
扉が開いたと思ったら、ザ・貴族と言いたくなるような偉そうにしている人たちを中央に白い甲冑に身を包んだ騎士たちが一緒に中へと雪崩れ込んできた。
「国を賭けての大賭博とは恐れ入る!」
その中でも群を抜いて偉そうな人がほざく。
あ、この会場っていうか、あそこ自体に音が大きく響くように仕掛けがあるんだ。
じゃなきゃ、ここまでしっかり聞こえるわけないもんね。
「クラリカル・フォード・マグイア公爵。貴方をここに呼んだ覚えはありませんが?」
ガインは言いながら、かかったとばかりにニヤッと笑う。
マグイア公爵と言ったらあれだよね。ドラゴンを仕掛けてきた張本人。セインの11番目の王位継承権を持ってる人!
「かの嘘つき国が何か言ってるだけなら私も出てきたりはしない。
けれどこれだけの貴族を巻き込んでいると知ったからには、それを見過ごすわけにはいきませんからな。
神聖国の女王を語るとは、この不届きものが!」
キュアに向かって手を振り上げ、騎士たちも取り囲む。
その騎士の振り上げた剣を、ガインは剣で払う。
「神聖国の女王に剣を向けるとは何事だ!」
「神聖国の女王とほざくのがそもそもの間違い! 神聖なる女王をどこの骨とも、いやユオブリアの貴族の娘を当てただけではないか!」
貴賓たちが軽くざわめく。
「神獣、聖獣の加護があり、ドラゴンに懐かれる。聖霊の祝福も受けたそうだが、それがどうして女王となる?」
ん? それ、ズバリ、わたしのことだよね?
女王がわたしだと勘違いしている?
「何か、貴方は勘違いしておられるのでは?」
ガインが訝しむ。
「勘違い? それは貴様らだ! ユオブリアと組んで、大三大陸を混乱に陥れる気か?」
「混乱に陥れる、そこにユオブリアの名を出すとは、覚悟がおありか?」
ロサが立ち上がり、大声で言った。
視線が集まる。
「私はユオブリアの第二王子、ブレド・ロサ・ミューア・トセ・ユオブリア。我が国の名を出すのなら、それなりに裏付けあってのことなのだろうな?」
おーー、ロサも立派になって。
50代の威厳ある公爵に引けを取らない貫禄をすでに持っている。さすがあの陛下の息子だ。
「これは王太子殿下。クラリカル・フォード・マグイアがご挨拶申し上げます。お目に書かれて光栄です。殿下も騙されているのです! 一介の貴族令嬢と、このガゴチに」
「貴族令嬢とは誰を指す?」
「それはもちろん、ここにいる今までも散々世間を騒がしてきたリディア・シュタイン嬢のこと!」
ロサがわたしに手を差し出す。
仕方ないのでその手に手を乗せる。
「其方こそ勘違いしているのではないか? リディア・シュタイン嬢は私の隣にいるが?」
「何を? いや、そんなはず……」
思ってもみなかったことを言われた顔をして、一瞬固まる。それから笑い飛ばそうとして失敗し。こちらを見上げ、キュアを見てと交互にわたしたちを見比べている。
「お、お前は誰だ!?」
公爵はキュアを指差して大声を出した。
それにガインが対応する。
「ですから、こちらは女王です」
女王を立てると聞いて、わたしだと問答無用に思っちゃったのかな? 確めろって感じだけど。ユオブリアにはわたしはこちらに参加するためにいないし。符号があったって思っちゃったのかしら?
「儀式の邪魔をしないでください。衛兵!」
ガインが衛兵を呼んだ。
激しく動揺していたけど、復活できたみたいだ。
「シュタイン嬢ではないにしても、このものが女王という証拠はどこにもない! それを嘯ぶくとは言語道断!」
「では、女王の条件を言ってみよ」
ガインが公爵に力強く言った。
「女王の条件?」
「彼女が女王でないというなら、その根拠を。我らは神聖国跡地に居を構えた。そこには昔の文献も残っていた。女王になるにはいくつもの条件があるが、その最大なる難関は他種族であるシュシュ族の目にかなうこと。
彼女は条件を満たし、シュシュ族からも祝福を受けた」
ざわざわ、ざわざわと貴賓席が沸く。
「シュシュ族はワーウィッツに滅ぼされた!」
あーあ、自分から言っちゃった。見事にガインの策にハマっている。
その発言はシュシュ族を認めている発言だ。シュシュ族は女王を見極める力を持つことを知っていたことになる。
「ワーウィッツによるシュシュ族の乱獲があったことは確かです。けれど、それから逃げた者もいる。ガゴチが保護しました」
主体者側の出入り口がここからは見えないけどあるんだろう。
そこから走ってきたのは麦の穂先の色のようなシュッとした体型の狐。まさにシュシュ族だ。
誰かが「シュシュ族……」と口にした。